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第一章

35話目 揉め事

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「これで2kgだろ!何で1kg分しかないんだよ!」

「そうよそうよ!」

夕方の冒険者ギルドは今日の依頼を終え戻ってきた冒険者でごった返していた。

依頼者用の列に並んでいるとそんな声が聞こえてきた。

「はあ?!虫食い?!何処がだよ!」

「私達が採ってきた時にはそんなの無かったわよ。今つけたんでしょ!ちゃんと2kg分支払ってよね!」

「ですから、こちらはご一緒に確認した際についておりました。除外する旨こちらにサインも頂いております」

「そんなの知らないわよ!」

職員さんも大変だなぁ。1kgと2kgなら金額結構差があるもんね。そりゃごねるわな。

「お待たせしました。本日はどのようなご用件でしょう?」

「依頼内容の確認に来ました」

「かしこまりました。冒険者カードをお預かりします」

「お願いします」

冒険者カードを渡してしばらく待った。

先程揉めてた冒険者はまだ揉めているようだ。他の人の迷惑だろうに。

「お待たせ致しました。本日はFランクのサマーベリーが3kg、ブロウの実が1kg、Eランクのレガージュの実が1kgが用意出来ました。依頼は継続なさいますか?」

「はい!お願いします!」

予想以上に採れてた!カゴに入った果物を渡される。サマーベリーは青い実だ。形や大きさはラズベリーとかに似ている。

ブロウの実は色もプルーンに似ているが大きさは桃位ある。1つ渡された。これで1kgみたい。

レガージュの実………初めてみた!!飲み物とかケーキとかには入ってたけど!これが一番嬉しい!

形はスモモに似ている?一つ手に取るとシュ…っとなんかよく分かんない感触が伝わった。これが炭酸の素か!?

「ありがとうございました」

預けてあるお金から支払う旨サインをしカウンターを後にした。

果実酒作るにはもっと欲しいな。作る前に味見もしたいし。あーどんな味なんだろう!ウキウキしながらアイテムボックスに果物をしまっていく。

「おい!」

…………うわ。

「さっき果物貰ってたな!これも買取れ!」

さっき受付で揉めてた冒険者だ……。

どうやら二人組みたい。年は若そうで男女のペアだ。

至る所に土の汚れがつき所々擦り傷や切り傷が出来ている。

男性が手に持っていたのは見たことない果物だ。私が依頼したやつ?それとも別のやつ?

でもそれさっき虫食いで揉めてたやつだよね…。

「いやです」

「なんだと?!」

私の回答が気に食わなかったらしく声を荒げる。

「私も虫食いいらないです。依頼したものにも虫食い不可としてます」

「人が………っどんだけ苦労して採ってきてやったと思ってるんだ!!いいからお金寄越せ!!」

「アレクその鞄よ!それに果物仕舞ってるの見たわ」

手に持っていた果物を投げつけ殴りかかって来た。

アレクと呼ばれた男が私の鞄を掴もうとする。

「うわっ!!」

アレクと呼ばれた男が鞄に触れた瞬間ブレスレットの魔道具が発動した。

何処からか縄が出てきたと思ったら二人目掛け飛んでいきぐるぐる巻にしてしまった。

「何だこれはっ!?くそっ離せ!!」

「きゃぁ!!何これ苦しい!!」

その場は別の意味で騒然とした。

「あー桜ー!ってこの騒ぎ桜だったー!」

ギルド職員さんを呼ぶべきか?それともこの騒ぎだ。来るのを待つか?と迷っていたら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「イリスさん!それにクイナさん、ハンスさん、ユリウスさんも!」

「おう!桜、土産持ってきたぞ」

「えっ?あっありがとうございます?」

ハンスさんに渡されたのは果物だった。見たことないやつ!

「なんで?」

いや欲しいのは欲しいよ?依頼してたし。でも何で?教えてないよね?

「そこの職員さんに教えてもらった。不穏な空気だから行ってあげてくださいって」

あぁ、依頼受けてくれてたんだ。依頼達成でカウンターに出したら依頼者がそこで難癖付けられ揉めてると、ハンスさん達の顔見知りだから仲裁してくれってとこらしい。

それでここに来る前に魔道具発動でぐるぐる巻き…と。

「…要らなかったか?」

「いえ、ありがたいです」



その後すぐに駆けつけてくれた警備の人に二人は事務所に連れて行かれた。

「せっかくだからこれから飯行くか」

「はい!」

ハンスさん達に誘われてご飯を食べに行くことにした。




「エール4つ!桜はどうする?」

「私もエール下さい」

「エール5つに変更で!後はレッドボアの炒め物とポテト、パプーのチーズ焼き…後は何いる?」

「ソーセージ!スティックサラダ、マヨネーズソースで」

「レッドボアの燻製も欲しいな」

「私は……イリス焼うどん一緒に食べない?」

「ん?食べるよー!」

「なら焼うどんもお願い」

「私はレッドボアの肉味噌炒め欲しいです」

最後は私だ。

ハンスさんが定員さんに注文し、まずエールが届いたので乾杯した。

「ーーーっかぁあ」

口の周りに泡をつけ一気飲みするハンスさん。

料理が運ばれてきてそれぞれ取り分ける。

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