異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ

文字の大きさ
上 下
35 / 274
第一章

35話目 揉め事

しおりを挟む






「これで2kgだろ!何で1kg分しかないんだよ!」

「そうよそうよ!」

夕方の冒険者ギルドは今日の依頼を終え戻ってきた冒険者でごった返していた。

依頼者用の列に並んでいるとそんな声が聞こえてきた。

「はあ?!虫食い?!何処がだよ!」

「私達が採ってきた時にはそんなの無かったわよ。今つけたんでしょ!ちゃんと2kg分支払ってよね!」

「ですから、こちらはご一緒に確認した際についておりました。除外する旨こちらにサインも頂いております」

「そんなの知らないわよ!」

職員さんも大変だなぁ。1kgと2kgなら金額結構差があるもんね。そりゃごねるわな。

「お待たせしました。本日はどのようなご用件でしょう?」

「依頼内容の確認に来ました」

「かしこまりました。冒険者カードをお預かりします」

「お願いします」

冒険者カードを渡してしばらく待った。

先程揉めてた冒険者はまだ揉めているようだ。他の人の迷惑だろうに。

「お待たせ致しました。本日はFランクのサマーベリーが3kg、ブロウの実が1kg、Eランクのレガージュの実が1kgが用意出来ました。依頼は継続なさいますか?」

「はい!お願いします!」

予想以上に採れてた!カゴに入った果物を渡される。サマーベリーは青い実だ。形や大きさはラズベリーとかに似ている。

ブロウの実は色もプルーンに似ているが大きさは桃位ある。1つ渡された。これで1kgみたい。

レガージュの実………初めてみた!!飲み物とかケーキとかには入ってたけど!これが一番嬉しい!

形はスモモに似ている?一つ手に取るとシュ…っとなんかよく分かんない感触が伝わった。これが炭酸の素か!?

「ありがとうございました」

預けてあるお金から支払う旨サインをしカウンターを後にした。

果実酒作るにはもっと欲しいな。作る前に味見もしたいし。あーどんな味なんだろう!ウキウキしながらアイテムボックスに果物をしまっていく。

「おい!」

…………うわ。

「さっき果物貰ってたな!これも買取れ!」

さっき受付で揉めてた冒険者だ……。

どうやら二人組みたい。年は若そうで男女のペアだ。

至る所に土の汚れがつき所々擦り傷や切り傷が出来ている。

男性が手に持っていたのは見たことない果物だ。私が依頼したやつ?それとも別のやつ?

でもそれさっき虫食いで揉めてたやつだよね…。

「いやです」

「なんだと?!」

私の回答が気に食わなかったらしく声を荒げる。

「私も虫食いいらないです。依頼したものにも虫食い不可としてます」

「人が………っどんだけ苦労して採ってきてやったと思ってるんだ!!いいからお金寄越せ!!」

「アレクその鞄よ!それに果物仕舞ってるの見たわ」

手に持っていた果物を投げつけ殴りかかって来た。

アレクと呼ばれた男が私の鞄を掴もうとする。

「うわっ!!」

アレクと呼ばれた男が鞄に触れた瞬間ブレスレットの魔道具が発動した。

何処からか縄が出てきたと思ったら二人目掛け飛んでいきぐるぐる巻にしてしまった。

「何だこれはっ!?くそっ離せ!!」

「きゃぁ!!何これ苦しい!!」

その場は別の意味で騒然とした。

「あー桜ー!ってこの騒ぎ桜だったー!」

ギルド職員さんを呼ぶべきか?それともこの騒ぎだ。来るのを待つか?と迷っていたら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「イリスさん!それにクイナさん、ハンスさん、ユリウスさんも!」

「おう!桜、土産持ってきたぞ」

「えっ?あっありがとうございます?」

ハンスさんに渡されたのは果物だった。見たことないやつ!

「なんで?」

いや欲しいのは欲しいよ?依頼してたし。でも何で?教えてないよね?

「そこの職員さんに教えてもらった。不穏な空気だから行ってあげてくださいって」

あぁ、依頼受けてくれてたんだ。依頼達成でカウンターに出したら依頼者がそこで難癖付けられ揉めてると、ハンスさん達の顔見知りだから仲裁してくれってとこらしい。

それでここに来る前に魔道具発動でぐるぐる巻き…と。

「…要らなかったか?」

「いえ、ありがたいです」



その後すぐに駆けつけてくれた警備の人に二人は事務所に連れて行かれた。

「せっかくだからこれから飯行くか」

「はい!」

ハンスさん達に誘われてご飯を食べに行くことにした。




「エール4つ!桜はどうする?」

「私もエール下さい」

「エール5つに変更で!後はレッドボアの炒め物とポテト、パプーのチーズ焼き…後は何いる?」

「ソーセージ!スティックサラダ、マヨネーズソースで」

「レッドボアの燻製も欲しいな」

「私は……イリス焼うどん一緒に食べない?」

「ん?食べるよー!」

「なら焼うどんもお願い」

「私はレッドボアの肉味噌炒め欲しいです」

最後は私だ。

ハンスさんが定員さんに注文し、まずエールが届いたので乾杯した。

「ーーーっかぁあ」

口の周りに泡をつけ一気飲みするハンスさん。

料理が運ばれてきてそれぞれ取り分ける。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...