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第一章

29話目 魔道具屋

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「ここですか?」

「そうです」

道中無言で揺られること10分程で目的地についた。

「足元気をつけてね」

「はい」

馬車を降りて建物の中に入る、そこには魔道具がずらりと並んでいた。

見慣れた家電っぽい物からどうやって使うか分からないものまで沢山ある。

「いらっしゃいませ」

「相良さんは今いる?」

「店長ですね今お呼び致します」

相良さん?名字っぽい響きだなぁ。

春子さんと店員さんが話している間にウロウロと店内を見て回る。

あ…灯里の部屋にあった氷を出す魔道具……………金貨3枚……!?

私銭貨1枚で出せちゃう………。

物価クラッシャーだなぁ。

まあいいや。他には何があるかな?

食器洗浄の魔道具に衣類洗浄の魔道具、空調…腕に付けるタイプもある。へぇー。

どれも高いなぁどれも単位が金貨からだ。

あれ?生活費一ヶ月4ー5枚じゃなかったっけ?これって普通の価格なの?

「春子さんいらっしゃい。今日はどうしましたか?」

「忙しいところ申し訳ないわね。この子の魔道具を見繕ってもらいにきたのよ」

「おや、新しい同郷ですか」

「久しぶりの取り寄せ系」

「分かりました。防犯ですね」

丸い眼鏡をかけた線の細い黒髪の男性が奥から出てきた。

春子さんと会話をすると奥に引き込み何やら綺麗な小箱を持ってきた。

「橋沼さん。こちらに来てくれる?」

呼ばれていくとアンティーク調のテーブル席に案内された。

向かいの席に先ほどの男性、テーブルの傍に春子さんが立っており、テーブルの上には先ほどの小箱が置かれている。

「価格は一つ星金貨1枚。数は5個でいいかな?」

男性の問いに春子さんは頷く。

私は一つ星金貨1枚という超高額を提示され超狼狽えた。

…………百万が五個!?

暴利を貪った側から没収された。

「左から順に盗聴防止の魔道具、防毒の魔道具、物理防御の魔道具、魔法防御の魔道具、捕縛の魔道具、おまけで緊急信号の魔道具をつけておきますね」

箱の中には台座が付いたブレスレットと指輪があった。

ブレスレットの前には色付きの石が置かれていた。

「値段は張りますが良い仕事してくれますよ。盗聴防止と捕縛と緊急信号は手動での発動になります。石に3階連続で触れれば発動します。防毒、物理防御、魔法防御は自動発動です。攻撃され次第発動します」

一つ一つ色と名前を教えてくれつつ台座にはめられていく。

「腕を出して下さい」

腕を差し出すとブレスレットと指輪が嵌められた。

ブレスレットと指輪は緩いかなと思ったら自動で大きさが調節された。

「……まずはこれで一安心ね」

春子さんはほうっと息を吐いた。

「……そんなに危険だったんですか?」

そう私が言うと春子さんはじっとこちらを見つめ意味深に微笑んだ。

「他に欲しい魔道具はある?それなりに詳しいわよ。そこの相良が」

「お任せ下さい」



そして商売上手な相良さんにあれよあれよと乗せられ買わせられ、この店だけで今日の販売分を全て持ってかれてしまった。

相良さん怖い。





◆◇◆◇◆◇

同日午後


「どうした?」

「どうした?では無いわ!!」

商業ギルドの一室で冒険者ギルドのギルマスに商業ギルドのギルマスが怒鳴る。

「今日こっちに顔を出したんだろ?登録も済ませたみたいだし。何か問題でもあったのか?」

「……………………せめて」

「せめて?」

「保護した時点で魔法くらい確認せんかーーーーーーー!!」

冒険者ギルドのギルマスは耳を塞いだ。

「取り寄せなんて金のなる木…しかも世間知らず!!人通りの多い路面店の店主にホイホイ物やるわ一般買取でホイホイ品物出すわ魔道具店でカモられるわ危なっかしくて見てられんわ!!もうちょっと注意くらいせんか!!」

「……そんなに怒ると寿命縮むぞ?」

「誰のっ!!


…………ふぅ………同郷のものに何かあれば春子が悲しむ。ちゃんと見てやれ」

「……相変わらず春ちゃんに甘いな」

冒険者ギルドのギルマスはそう言って苦笑した。
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