上 下
14 / 274
第一章

14話目 スイーツ巡り1

しおりを挟む





「……まずはチョコレートを売ってるところね」

クイナさんに連れられてやってきたのは表通りに面した可愛らしい外観の建物だ。

外にもテーブルが置かれている。

中へ足を踏み入れるとちらほらお客さんが座っていた。

空いている席に腰を下ろすと店員さんがメニューを持ってやって来た。

「ここのオススメはドライムムスを使ったシフォンケーキよ」

「えー私はルクナッツのタルトが好きだなー」

ムムス? ルクナッツ? どんな食べ物だろう。

「何ですかそれ? どんな味なんですか?」

「そっか。 こっちの世界の果物は食べたことないんだもんね……じゃあレガージュの実を使ったケーキも注文しちゃおう!」

そう言うとクイナさんは店員さんに声をかけ注文した。 ついでに飲み物もお任せで注文してもらった。

「こっちの食べ物全部が初めてだね。 ……ふふ、なんか嬉しい」

待つこと数分で注文した物がテーブルに並べられた。

「何これー!!」

ドライムムスのシフォンケーキは、クリームを除き全体的にオレンジ色だった。

「まずはクリームを付けないで食べてみて」

クイナさんが木製のフォークを差し出してくれたので、受け取り一口食べた。

「何これー!!」

シフォンの生地は甘くムムスと思われる果実は酸っぱかった。 食感がサクッともショリともなんとも言えない食感で楽しい! りんごに似てるけどなんか違う。美味しい!

「ふふ……次はクリーム付けて食べてみて」

言われるがままクリームを乗せて食べてみた。

「……………合うぅうう!」

「でしょ!!」

クリームは重めでコッテリしている。 口の中が甘くなったと思ったら後からくるムムスの酸味ですっきりする。

「これ何個でもいけますね!!」

「でしょ!!」

首が心配になるくらい頷いてくれるクイナさん。 よっぽど好きなんだな。

「はいはいはい! 次はこっち!」

ドライムムスのシフォンケーキのお皿を押し除けルクナッツのタルトが差し出された。

表面はカラメリゼされ光沢がある。

フォークを上から突き立てるとパキッとカラメルが割れる。

ナッツの下からはクリームがとろけて出てきた。

「うまっ!!」

カラメルの仄かな苦味と濃厚なルクナッツ、あっさり目なクリームにサクサクのタルト生地。

甘い物が食べたいって時に食べたらさらに美味しく感じそう。

とか思ってる間に半分食べてしまった。

「……消えた」

「いや、食べてたから」

あははははと笑うイリスさん。

「ルクナッツってなんて言うか濃いんだよね。 油っこいの。 塩で炒って食べるのも美味しいんだよ!」

「つまみに良さそう」

今度市場で探そう。 そう心に決めた。

「じゃあ今度はレガージュの実のケーキね」

残ってたシフォンケーキを平らげたクイナさんは楽しそうにケーキのお皿を差し出してきた。

見た目は至って普通のケーキだ。 生地が黄色い……チーズケーキっぽい色だな。
白いクリームに乗っている果物は桃っぽい。

そしてフォークを突き立てた。

「?」

「うふふっ」

なんか変な感触だ、シュワっとしてる。 スフレチーズケーキに似てるけどなんかおかしい。

「!?」

「あはははっ」

私が左右に首を傾げてフォークを入れてるので、クイナさんとイリスさんは声を出して笑ってる。

「っ!! シュワシュワしてる!」

スフレチーズケーキなんんて目じゃない! 果物からスポンジケーキまで全部シュワシュワしてた。

微炭酸の酸味の強い桃にピリピリしたクリーム、シュワシュワしたスフレ生地。 何だこれ。

「どう? こっちのケーキも捨てたもんじゃないでしょ?」

「はい!!」

面白い。 こっちの世界の食べ物面白い!

「楽しんで頂けてるようですね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)
ファンタジー
平凡なおひとりさまアラフォー会社員だった鈴木マリは異世界に召喚された。あこがれの剣と魔法の世界……! だというのに、マリに与えられたスキルはなんと「資源ごみ」。 おひとりさま上等だったので、できれば一人でひっそり暮らしたいんですが、なんか、やたらサバイバルが難しいこの世界……。目立たず、ひっそり、でも死なないで生きていきたい雑草系ヒロインの将来は……?

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

処理中です...