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20話目
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(……お昼ぐらいまでかかって上がったレベルは6つか。 そろそろ上がりにくくなってきたな)
大きな群れをいくつか討伐し3階へ続く階段の傍で岩を背にしながら小休憩を取る。
アイテムボックスから菓子パンを取り出し頬張る。
(……外の世界どうなってるかな)
一旦思考放棄した考えがまた蘇ってくる。
アイテムボックスの中にはまだ食料がある。
一人で居るせいか今後の方針を決めたにも拘らず色々考えてしまう。
「はぁ……」
(そういや、まだ外にはテントあるかな? そこからちょろまかしてこようかな)
そんな考えも過ぎってしまう。
(あの場所なら魔法が切れる前に戻ってこれる……ね)
だらんだらんと横に揺れながら考える。
(そうだね。 もっと深くまで潜るなら必要だよね)
ダンジョンに入ると決断してから物品の補給、ダンジョン潜入まで考える時間がほとんどなかった。
それにアイテムボックスの限度もあった。
ならば足らない物も今後出てくる。
(ウォータータンクとかペットボトルで代用できるって持ってこなかったし、レトルト食品だって足りない。 調味料もそれなりに使うし他の味も欲しい)
まだ浅い階層ならたやすく行って戻ってこれる。
今ダンジョン内に居る人たちも一旦外に出る、残る人達もおそらくあの場から動かないだろう。
(一旦補給するには丁度いいタイミングかもしれない?)
お金がなくともゴタゴタしてるなら紛失扱いで済みそうだし。
そう結論付ける。
ピタッと動きを止めこっそりと跡を追う事に決めた。
(帰還で盛り上がっているところだと警戒も緩むよね)
うんうんと頷き菓子パンの最後のひとかけをパクリと口に放り込んだ。
3階のセーフティーゾーンまで行くと小蝙蝠の群れは散っていた。
セーフティーゾーンには恩田と呼ばれる人達の一派の形は無く、あの悪態をついていた奴らだけが残っていた。
(……なんだか疲労困憊? また揉めたのか?)
人数にそぐわない荷物も置かれており見れば戦闘の跡がある。
セーフティーゾーンの周りにも数体小蝙蝠の亡骸が落ちている。
(魔石も素材もほったらかし……なんで?)
小首を傾げながら2階に続く道を目指した。
(どこまで戻ったかな?)
不要な戦闘は避けるべく闇隠と静音を掛けて3階をひた走る。
するとセーフティーゾーンでは聞こえなかった音が聞こえるようになってきた。
(居た)
4階からあのならず者達を守りつつ戻ったように、鎧を身に纏った人たちが周りを固め恩田さんと呼ばれる人が先頭に立ち他の人たちが向かってくる小蝙蝠の群れを撃退しながら進んでいた。
ギィーギィーギィー
バタバタバタッ!!!
「臆するなよ!! 一体一体は弱い!!」
「はいっ!!」
「ひぃぃ怖い!!」
「大丈夫だ!!」
「そっち三島の方に行ったぞ!! 悲鳴上げんな!!」
「ご、ごめん!!」
「風盾!!」
「玲ありがとう!!」
「どう致しまして」
(魔法が使える人もいるのか)
やはり大人数で移動するせいか進みが遅い。
小蝙蝠も討伐出来てはいるものの数がどんどん増えて行っている。
(なんか怪我人が多い?)
見れば治癒を唱えていた人の動きが悪い。 もうすでに魔力切れを起こしているような感じだ。
(2階まで走って15分位ある。 あのスピードだともっとかかりそう)
それまであの陣形が持つのか?
どうだろうと首を捻る。
(あの人達が戻らないとどうなる?)
ほっておくべきか助けるべきかを思案する。
(魔法ってどれくらい魔力使うんだろう、あの様子だと回復魔法を使ってる人魔力無くなるよね、あ、また使用した。 倒れそうになってんじゃん)
こうして考えている間にも小蝙蝠はその数を増やしていっている。
(あ、そうだ)
通路とは反対側に走り先発隊と距離を取る。
上を見上げて天井に垂れ下がる鍾乳石を見る。
足元の石を拾い上げ
「強化」
強化し、鍾乳石めがけ大きく腕を振りかぶり叩きつけるように投げつけた。
ドン!!!!
大きな音がし辺りに止まっていた小蝙蝠が一斉に飛び立つ。
「なんだ!?」
「ダンジョンが崩落か!? 未完成なのか?! このダンジョンは!!」
「ヤバい!! 今ので小蝙蝠が増えるぞ!!」
「ひぃぃい」
「静かに!!」
続いてさらに大きな音を発生させるよう鍾乳石に向けてさらに強化した石を投げつけ破壊する。
ドン!! ゴロゴロ……ドン!!!!
音の発生源に向けて小蝙蝠が集まってくる。
サクッと防御結界で仕留めるとレベルがまた上がった。
レベルが上がり口の端が緩む。
(目的が違う。 あっちの小蝙蝠も引き寄せられたかな?)
今だ数匹小蝙蝠がバサバサと飛び交っているがほっておき、闇隠と静音を掛けなおし、先発隊が見える位置に移動した。
(あれ? いない?!)
ひょっこり顔をのぞかせるとさっきまでいた場所に先発隊が居ない。
(うそ!? どこ行った?!)
慌てて飛び出しきょろきょろと辺りを伺う。
(え?! まさか巻き込んだ?!)
距離はかなりあったはず。
鍾乳石が落ちた時遠くから声が聞こえた。
近くに居たはずはない。
(ともすれば……)
その場から駆け足で2階への通路を目指す。
そして2階に足を踏み入れた瞬間発見することが出来た。
大きな群れをいくつか討伐し3階へ続く階段の傍で岩を背にしながら小休憩を取る。
アイテムボックスから菓子パンを取り出し頬張る。
(……外の世界どうなってるかな)
一旦思考放棄した考えがまた蘇ってくる。
アイテムボックスの中にはまだ食料がある。
一人で居るせいか今後の方針を決めたにも拘らず色々考えてしまう。
「はぁ……」
(そういや、まだ外にはテントあるかな? そこからちょろまかしてこようかな)
そんな考えも過ぎってしまう。
(あの場所なら魔法が切れる前に戻ってこれる……ね)
だらんだらんと横に揺れながら考える。
(そうだね。 もっと深くまで潜るなら必要だよね)
ダンジョンに入ると決断してから物品の補給、ダンジョン潜入まで考える時間がほとんどなかった。
それにアイテムボックスの限度もあった。
ならば足らない物も今後出てくる。
(ウォータータンクとかペットボトルで代用できるって持ってこなかったし、レトルト食品だって足りない。 調味料もそれなりに使うし他の味も欲しい)
まだ浅い階層ならたやすく行って戻ってこれる。
今ダンジョン内に居る人たちも一旦外に出る、残る人達もおそらくあの場から動かないだろう。
(一旦補給するには丁度いいタイミングかもしれない?)
お金がなくともゴタゴタしてるなら紛失扱いで済みそうだし。
そう結論付ける。
ピタッと動きを止めこっそりと跡を追う事に決めた。
(帰還で盛り上がっているところだと警戒も緩むよね)
うんうんと頷き菓子パンの最後のひとかけをパクリと口に放り込んだ。
3階のセーフティーゾーンまで行くと小蝙蝠の群れは散っていた。
セーフティーゾーンには恩田と呼ばれる人達の一派の形は無く、あの悪態をついていた奴らだけが残っていた。
(……なんだか疲労困憊? また揉めたのか?)
人数にそぐわない荷物も置かれており見れば戦闘の跡がある。
セーフティーゾーンの周りにも数体小蝙蝠の亡骸が落ちている。
(魔石も素材もほったらかし……なんで?)
小首を傾げながら2階に続く道を目指した。
(どこまで戻ったかな?)
不要な戦闘は避けるべく闇隠と静音を掛けて3階をひた走る。
するとセーフティーゾーンでは聞こえなかった音が聞こえるようになってきた。
(居た)
4階からあのならず者達を守りつつ戻ったように、鎧を身に纏った人たちが周りを固め恩田さんと呼ばれる人が先頭に立ち他の人たちが向かってくる小蝙蝠の群れを撃退しながら進んでいた。
ギィーギィーギィー
バタバタバタッ!!!
「臆するなよ!! 一体一体は弱い!!」
「はいっ!!」
「ひぃぃ怖い!!」
「大丈夫だ!!」
「そっち三島の方に行ったぞ!! 悲鳴上げんな!!」
「ご、ごめん!!」
「風盾!!」
「玲ありがとう!!」
「どう致しまして」
(魔法が使える人もいるのか)
やはり大人数で移動するせいか進みが遅い。
小蝙蝠も討伐出来てはいるものの数がどんどん増えて行っている。
(なんか怪我人が多い?)
見れば治癒を唱えていた人の動きが悪い。 もうすでに魔力切れを起こしているような感じだ。
(2階まで走って15分位ある。 あのスピードだともっとかかりそう)
それまであの陣形が持つのか?
どうだろうと首を捻る。
(あの人達が戻らないとどうなる?)
ほっておくべきか助けるべきかを思案する。
(魔法ってどれくらい魔力使うんだろう、あの様子だと回復魔法を使ってる人魔力無くなるよね、あ、また使用した。 倒れそうになってんじゃん)
こうして考えている間にも小蝙蝠はその数を増やしていっている。
(あ、そうだ)
通路とは反対側に走り先発隊と距離を取る。
上を見上げて天井に垂れ下がる鍾乳石を見る。
足元の石を拾い上げ
「強化」
強化し、鍾乳石めがけ大きく腕を振りかぶり叩きつけるように投げつけた。
ドン!!!!
大きな音がし辺りに止まっていた小蝙蝠が一斉に飛び立つ。
「なんだ!?」
「ダンジョンが崩落か!? 未完成なのか?! このダンジョンは!!」
「ヤバい!! 今ので小蝙蝠が増えるぞ!!」
「ひぃぃい」
「静かに!!」
続いてさらに大きな音を発生させるよう鍾乳石に向けてさらに強化した石を投げつけ破壊する。
ドン!! ゴロゴロ……ドン!!!!
音の発生源に向けて小蝙蝠が集まってくる。
サクッと防御結界で仕留めるとレベルがまた上がった。
レベルが上がり口の端が緩む。
(目的が違う。 あっちの小蝙蝠も引き寄せられたかな?)
今だ数匹小蝙蝠がバサバサと飛び交っているがほっておき、闇隠と静音を掛けなおし、先発隊が見える位置に移動した。
(あれ? いない?!)
ひょっこり顔をのぞかせるとさっきまでいた場所に先発隊が居ない。
(うそ!? どこ行った?!)
慌てて飛び出しきょろきょろと辺りを伺う。
(え?! まさか巻き込んだ?!)
距離はかなりあったはず。
鍾乳石が落ちた時遠くから声が聞こえた。
近くに居たはずはない。
(ともすれば……)
その場から駆け足で2階への通路を目指す。
そして2階に足を踏み入れた瞬間発見することが出来た。
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