上 下
19 / 26

19話目

しおりを挟む

どうやら進退どっちか分からないが準備をしているようだ。

(随分とのんびりしてるな)

昨日と違って大声を出しているわけでもない。
何やら会話をしているのは分かるが声が聞こえない。

集音コレクトサウンドを飛ばし音声を聞くことにした。

「こちらは準備完了だ、江田そっちはどうだ?」

「こっちも完了」

「な……なぁ……またあれ突っ切るのかよ」

「そうだが」

「い、嫌だ!!」

「俺らは行かないぞ!!」

「はぁ?!」

「なら勝手にしろ!!」

「なぁ、恩田さんよ……食料置いてってくれないか? どうせ戻るだけだそんな荷物要らないだろ?それで俺たち残るから小蝙蝠スモールバッド避けのアイテム持ってきてくれないか? 頼むよ」

小蝙蝠スモールバッド避けのアイテム?)

「ぁあ゛?! てめぇなに勝手ほざいてんだ!!」

「誰のせいで残ったと思ってんのよ!!」

「もとはと言えばてめぇらが俺たちを囮にして勝手に奥に行ったのが悪いんだろ!!」

(……あいつらそんなことしてたのか)

「そ、それは悪かったよ」

「誰か死んでてもおかしくなかったのよ?! ふざけんな!!!! アキだって陣形崩れて死にかけたんだから!!!!」

(……確かに小蝙蝠スモールバッドの群れって突然ピラニアの居る川に落とされたようなもんだよね。 階段近くでは出なかったし。 私だって魔法が無かったらいたるところ噛まれて死んでるよ、その場合骨とか残ったのかな?)

つくづく魔法が使えて良かったなと実感する。

(今では勝手に突っ込んで来て私に経験値をくれる可愛いやつらなんだけどね)

そんな事を考えながら話を聞いた。

「なぁ恩田さん頼む!! この通りだ!!」

「恩田さん、こいつらの話なんて聞く必要ない。 むしろこのままここに置いて行って餓死してもらったほうがいいんじゃないか」

「ああ?! なんつった?!」

「ここで死ねっつったんだよ!!」

「ふざけんなよ!!」

「きゃあああ!!」

そんな悲鳴が聞こえたのでひょこっと岩陰から顔を出し何が起こったか確認することにした。

どうやら死ねと言われた奴らの堪忍袋の緒が切れたようだ。
武器を取り出して喧嘩を始めた。

女性にも当たったようでそれで悲鳴が出たみたいだ。

バサバサバサ……。

その悲鳴に誘われるように天井から小蝙蝠スモールバッドが降りてきた。


ギィギィギィとセーフティーゾーンを囲うようにして群がっている。

(ぉおおおお!!!! あんなに小蝙蝠スモールバッドが!!!!)

目の前に群がる大量の小蝙蝠スモールバッドに興奮してしまう。

「ほらあいつらが来ちまったじゃねーか!!!!」

「は? 俺は知らねーよ!! 叫ぶ方が悪い!!」

「あ?! ならてめーらを餌にしてやるよ!!!!」

「逆にてめーらを餌にしてやんよ!!!!」

「やれるもんならやってみな!!!!」

「もう止めて!!」

「あぁぁぁあ……小蝙蝠スモールバッド小蝙蝠スモールバッド小蝙蝠スモールバッド


(酷い有様……)

小蝙蝠スモールバッドが増える、探索者達が騒ぐ、さらに小蝙蝠スモールバッドが増えるという悪循環に陥っている。

「おま……これじゃ出れねーだろうが!! ふざけんなっ!!」

(……どんどん増えてってる)

私が探索者達を視認出来ないくらいの量になりつつある。

「出れない……こんなの無理よ!!」

「どうすんだよ!!!!」

(パニックになってんじゃん。 どうすんの恩田さんとやら)

「皆落ち着け。 たとえあれだけ量が居てもセーフティーゾーンに入ることは叶わない。 ここに居れば安心だ、だから落ち着くんだ」

「そうだ、あいつらは音に寄って来るの分かってるだろ? 静かにすれば居なくなる」

「はは、恩田さんでもビビってんのか」

「君は黙っててくれないか」

「そうだ、次下手な真似をしたら囮として活躍してもらう。 それが嫌なら黙ってろ」

「うぐっ……」

(悪態ついてた奴が黙った。 一喝したのは昨日4階で見た鎧を纏ってた人たちなのかな? 確かに悪態ついてた人達より強そうだったけど)

「皆も良いな、極力静かに過ごしてくれ。 あの群れが居なくなったら出発する。 分かったな」

「分かりました」

悪態ついていた人達ではなく周りの人達がそれに了解を告げた。

(なんだか出発時間が伸びに伸びてる。 さっさと帰ってくれればいいのに)

時刻は9時5分。

(この群れもしばらくはここに留まりそうだし私は4階でレベル上げをして来よう)

思うように行かないなと軽く息を吐き4階へ戻るべく身を翻した。


4階にたどり着くと静音サイレントサウンド闇隠インビジブルを解き代わりに防御結界ディフェンスバリアを張った。

足元の石を拾いつつその辺をウロウロし小蝙蝠スモールバッド狩りに勤しんだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。

マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。 空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。 しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。 すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。 緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。 小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

処理中です...