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94 それに関しては自重できない
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さて、お料理のお時間です。
まず、炊くのはもちろんイースティンで買った『生きのいいお米』。実はあれからなんやかんやで時間がなく、一度も食べていなかったのでちょうどいい。
付け合せはピンク色のほうれん草。色さえ気にしなければとても合う野菜である。
そしてメインは『火属性リトルワイバーン』のステーキである。つけダレはダイコンサーのおろしと昆布ポン酢であっさりと。
以上が本日の献立である。
「はい、どうぞ」
「「「いただきまーす!」」」
場所は冒険者ギルドで以前借りていた部屋。
あの後、いろいろとグレイスに聞かれ追及され、気が付けば夜だったのでご飯を食べることにした。
もちろん作るのは聖1人である。
若干おかしい気もしたが、作ることはまあ、嫌いではないので人数分作ることになった。
というか、外に食べに行くという発想が誰からも上がらなかったことが不思議でならない。
「お米! このお米美味しいっ!」
「もっちもちで甘いな!」
あの店員さんが絶賛していただけあって、本当に味が違う。天と地ほど違う、と聞いたときは大げさな、と思ったが何も大げさではなかった。
確かにこれを食べたらもう、今まで食べていたお米では満足できないかもしれない。
「これ、ダイコンサーか? この食べ方美味いなぁ……」
「さっぱりしてて美味しい! さすがリトルワイバーンのお肉っ、ああ幸せ……」
うっとりしつつも減るスピードが落ちないウィクトとグレイスに、苦笑するも、美味しいので仕方がない。
大根おろしを一口食べる。この辛みが食欲を刺激する。
「あー、ほんとロティスのおかげ」
「だよなぁ」
実は欲しくても見つからなかった調理器具の中におろし金があった。特にダイコンサーを買ってからは、大根おろしが食べたくて食べたくて仕方がなかったのだ。
そんなときにおろし金を発見したのがロティスである。
あの隠されたダンジョンで、水中探索をしていたロティスが底から持って帰ってきたのが、これだった。
【おろし金】
この世界に来たことによって劣化することがなくなった。ふわふわ・ふわシャキ・シャキふわ・シャキシャキ・ジャキジャキ、食感は自由自在。願うだけでお好みの食感が実現。これでもう困らない、魅惑のおろしライフ!
なんでよりによってこのダンジョンのこの泉の底にあったのかは謎だが、この世界に持ち込んでくれただろう過去の落ち人に、心底感謝したのは言うまでもない。
「しっかしよくこれ拾ってきたよな、ロティス」
「ふふん、それは俺様だからな!」
「うん、本当に感謝だよね」
本当に拾ってきてくれてよかった。
ロティスが水中探索に行ってくれなければ、永遠におろし金に出会えなかったかもしれない。
なので食べつつもにこにことロティスを眺める。
ちなみにそのロティスは現在きらめきタイム中であり、銀色に輝いていたりする。
「なんか目に優しいよね……」
「ほんとにな……」
それをのほほんと眺めつつ、気が付けばご飯を食べ終えていた。
ちなみに途中でウィクトは2枚、グレイスも1枚追加でステーキを食べており、現在お腹を抱えて転がっている。
「……うう、もう無理」
「……まだ食べれる、ような気がしないでもない気も……」
「はいはい、食べすぎですよ。……一応聞きますけど、これ飲みます?」
「「飲む」」
まあ、聞くまでもないよね、と思いながら用意したのは炭酸水。もちろんアロエーグルトの果汁入りである。
レモの実でもよかったのだが、どうせなら飲んだことのないものがいいだろうとこっちにしてみた。
そして渡すと躊躇なく口をつける。
「聖」
「はい、春樹もどうぞ」
春樹には同じものを渡すが、己の分はレモの実を入れたものである。なんというかさっぱりしたものが欲しい。
そうしてふと気が付くと、ウィクトとグレイスがこっちを見ていた。
「? なんですか?」
「いや、なんですかやないわ。なんやこれ?」
「ちょ、ちょっとこれ、あれじゃないの、あれ!」
「……いや、グレイスのいいたことはわかるんだけど……」
苦笑しつつ、アロエーグルトの葉っぱの一部を取り出す。
「これ、知ってますか?」
その問いに、グレイスはきょとんとし、ウィクトは首を傾げるもすぐに思い至ったのか頷く。
「……ああ、あれやろ? アルデリート魔王国とイースティン聖王国の間の海に浮かんどる巨大な葉っぱ型の魔物。ちょっと名前は忘れたが……」
さすがウィクトである。
こんな一部分だけでわかったことに、思わず感心してしまう。
「で、結局何なの?」
「アロエーグルトって名前なんだよ、グレイス」
「アロエヨーグルト!? やっぱり!」
「? なんや?」
やはり味に間違いはなかったと、しきりに頷くグレイスを見て思う。
だが、わからないのがウィクトである。
「……ようわからんが、これはアロエーグルトが入ってるんか?」
「はい」
「……」
それに、ウィクトは頭を抱えた。
グレイスが首を傾げる。
「どうかしたんですか? すっごく美味しいじゃないですか、これ」
「……ああ、美味いな、ほんとになぁ……」
若干恨みがましい目を向けられ、聖と春樹は揃って視線をそらす。
この反応からすると、どうやらこれは広まっていないらしい。いや、なんとなくそんな気はしていたのだが。
「……あんな、グレイス」
「はい」
「アロエーグルトってな、食べものやと認識されとらんねん」
「はい?」
グレイスが笑顔で固まった。
そのままぎぎぎっと音がしそうなぎこちなさで、こちらを見る。
「……やらかした?」
「……やらかした、みたい」
「……やらかした、よなやっぱ」
あはは、と乾いた笑いがもれる。
「ええと、どうしましょうウィクトさん」
「どうっていうか、これも情報提供やしな」
「ですよねー」
「というか、よく食べてみよう思うたなこれを。まあ、なんで食べよう思うたかは聞かんが……」
「「……ははは」」
何でも何も包丁が食材だと表記したからだが、さすがにそれは言えない。
ので、必殺笑ってごまかせ。……ごまかせてない気もするが、そこは気付かなかったことにしておく。
もちろん、何処か呆れたようなグレイスの視線もスルーである。
「とりあえず、これはちょっと各所で話し合わんとならんから時間貰うな。で、忘れないうちにこっち渡しとくわ」
「こっち?」
「うちのギルマスが渡したいものある言うてたやろ?」
言われて思い出す。
そういえば確かにそう言われていたが、なんやかんやあったおかげで忘れていた。というか結局ダリスに寄っていない。
「それでフレーラさんから何を?」
「ん、これや」
「「これ?」」
小さめの袋と、それより大きな袋。
その2つをウィクトは取り出し、置いた瞬間、じゃら、と音がした。
「「……?」」
それに首を傾げるも、促されて中を覗く。
「お金?」
「こっちもだ」
「小さいほうがダリスの領主、大きな方がオーディナルの国王からや」
「「は?」」
言っている意味が分からなかった。
思わずウィクトを凝視する。
「マーボンフィッシュの褒賞金や」
「は? あれはもう貰ったはずだが……」
「あれはギルドからの情報料であって、領主や国からの褒賞金やない」
「え、いや、でも褒賞金てなんで……」
ぽかんとしてしまう。
なぜ褒賞金になるのかがわからない。
思わずグレイスに視線を向けるも、苦笑するばかりでわからない。
「あのね、デウニッツはちょっと違うけど、基本的にその功績に応じて褒賞金があるのは当たり前なのよ?」
「いや、でも功績って、これが?」
いや、確かに国に献上とか言う話もしてはいたが、まさかこんなことになるとは思いもしていなかった。
だって、マーボンフィッシュが美味しいという情報だけである。
「あんな、今まで食べられん思うてたもんが、実は食べれてしかもものっそい美味いもんやったっちゅうのは、それほどすごいことなんやで?」
「「……」」
確かにそう言われればすごいことのような気もするが、あまり実感はわかない。
だが、まあ、くれるというのだからありがたく貰っておこうと頷き、改めて袋の中身を見る。
そして、聖は固まった。
「うわ、大金貨入ってるな。……ってどうした聖?」
「……見たことないお金が入ってる」
「は?」
促され袋を覗き込んだ春樹だが、同じく固まる。
そして、揃ってウィクトを見る。
「ああ、王からの褒賞金やな。白金貨が入っとるな」
見たこともないほど綺麗な紋様の入ったお金が、白金貨。
ぽかんとして、ただただウィクトを凝視する。
「だから言うてるやろ、それほどすごいことなんやて」
苦笑を浮かべるウィクトに、はっとしたように春樹が声を上げる。
「ちょっとまて、じゃあアロエーグルトは……」
「あ」
「そやな。これもすごいことになるな。まあ、場所が場所やから、マーボンフィッシュほどにはならんとは思うけど、……いや、どやろうな……正直本当に話し合わんとわからんな」
なんとも難しい表情を浮かべるウィクトを見て、聖と春樹は頬を引きつらせる。
マーボンフィッシュにしてもアロエーグルトにしても、偶然食べれると分かったものであり、意図したものではない。
だが、手元には包丁という食べ物感知器的なものがあり、この先の面倒を回避するために利用するのを止めるかと言われると、もちろんそんな気はない。
ではどうするのか。
「「………」」
聖はちらりと視線を寄越してきた春樹に、同じく視線で返す。
そう、美味しいものを見つけるのは自重する気はない。
だが、冒険者ギルドに言うと大変な事態に発展する。まあ、お金がもらえるのでいいと言えばいいのだが、ちょっと大げさになってしまう。
ならば、結論は1つ。
美味しいものを見つけてもバレなければそれでい――。
「――まあ、何を考えてるかはわかるんやけどな」
ウィクトは綺麗な笑みを浮かべる。
「隠さんと、ちゃんと報告してな?」
「そうよ、報告は必須よ?」
きっぱりと言い切ったウィクトとグレイス。
その、美味しいものを独り占めするなんて許さない、と言わんばかりの様子に、聖と春樹は思わず遠い目をした。
もちろん、自重する気はないが。
まず、炊くのはもちろんイースティンで買った『生きのいいお米』。実はあれからなんやかんやで時間がなく、一度も食べていなかったのでちょうどいい。
付け合せはピンク色のほうれん草。色さえ気にしなければとても合う野菜である。
そしてメインは『火属性リトルワイバーン』のステーキである。つけダレはダイコンサーのおろしと昆布ポン酢であっさりと。
以上が本日の献立である。
「はい、どうぞ」
「「「いただきまーす!」」」
場所は冒険者ギルドで以前借りていた部屋。
あの後、いろいろとグレイスに聞かれ追及され、気が付けば夜だったのでご飯を食べることにした。
もちろん作るのは聖1人である。
若干おかしい気もしたが、作ることはまあ、嫌いではないので人数分作ることになった。
というか、外に食べに行くという発想が誰からも上がらなかったことが不思議でならない。
「お米! このお米美味しいっ!」
「もっちもちで甘いな!」
あの店員さんが絶賛していただけあって、本当に味が違う。天と地ほど違う、と聞いたときは大げさな、と思ったが何も大げさではなかった。
確かにこれを食べたらもう、今まで食べていたお米では満足できないかもしれない。
「これ、ダイコンサーか? この食べ方美味いなぁ……」
「さっぱりしてて美味しい! さすがリトルワイバーンのお肉っ、ああ幸せ……」
うっとりしつつも減るスピードが落ちないウィクトとグレイスに、苦笑するも、美味しいので仕方がない。
大根おろしを一口食べる。この辛みが食欲を刺激する。
「あー、ほんとロティスのおかげ」
「だよなぁ」
実は欲しくても見つからなかった調理器具の中におろし金があった。特にダイコンサーを買ってからは、大根おろしが食べたくて食べたくて仕方がなかったのだ。
そんなときにおろし金を発見したのがロティスである。
あの隠されたダンジョンで、水中探索をしていたロティスが底から持って帰ってきたのが、これだった。
【おろし金】
この世界に来たことによって劣化することがなくなった。ふわふわ・ふわシャキ・シャキふわ・シャキシャキ・ジャキジャキ、食感は自由自在。願うだけでお好みの食感が実現。これでもう困らない、魅惑のおろしライフ!
なんでよりによってこのダンジョンのこの泉の底にあったのかは謎だが、この世界に持ち込んでくれただろう過去の落ち人に、心底感謝したのは言うまでもない。
「しっかしよくこれ拾ってきたよな、ロティス」
「ふふん、それは俺様だからな!」
「うん、本当に感謝だよね」
本当に拾ってきてくれてよかった。
ロティスが水中探索に行ってくれなければ、永遠におろし金に出会えなかったかもしれない。
なので食べつつもにこにことロティスを眺める。
ちなみにそのロティスは現在きらめきタイム中であり、銀色に輝いていたりする。
「なんか目に優しいよね……」
「ほんとにな……」
それをのほほんと眺めつつ、気が付けばご飯を食べ終えていた。
ちなみに途中でウィクトは2枚、グレイスも1枚追加でステーキを食べており、現在お腹を抱えて転がっている。
「……うう、もう無理」
「……まだ食べれる、ような気がしないでもない気も……」
「はいはい、食べすぎですよ。……一応聞きますけど、これ飲みます?」
「「飲む」」
まあ、聞くまでもないよね、と思いながら用意したのは炭酸水。もちろんアロエーグルトの果汁入りである。
レモの実でもよかったのだが、どうせなら飲んだことのないものがいいだろうとこっちにしてみた。
そして渡すと躊躇なく口をつける。
「聖」
「はい、春樹もどうぞ」
春樹には同じものを渡すが、己の分はレモの実を入れたものである。なんというかさっぱりしたものが欲しい。
そうしてふと気が付くと、ウィクトとグレイスがこっちを見ていた。
「? なんですか?」
「いや、なんですかやないわ。なんやこれ?」
「ちょ、ちょっとこれ、あれじゃないの、あれ!」
「……いや、グレイスのいいたことはわかるんだけど……」
苦笑しつつ、アロエーグルトの葉っぱの一部を取り出す。
「これ、知ってますか?」
その問いに、グレイスはきょとんとし、ウィクトは首を傾げるもすぐに思い至ったのか頷く。
「……ああ、あれやろ? アルデリート魔王国とイースティン聖王国の間の海に浮かんどる巨大な葉っぱ型の魔物。ちょっと名前は忘れたが……」
さすがウィクトである。
こんな一部分だけでわかったことに、思わず感心してしまう。
「で、結局何なの?」
「アロエーグルトって名前なんだよ、グレイス」
「アロエヨーグルト!? やっぱり!」
「? なんや?」
やはり味に間違いはなかったと、しきりに頷くグレイスを見て思う。
だが、わからないのがウィクトである。
「……ようわからんが、これはアロエーグルトが入ってるんか?」
「はい」
「……」
それに、ウィクトは頭を抱えた。
グレイスが首を傾げる。
「どうかしたんですか? すっごく美味しいじゃないですか、これ」
「……ああ、美味いな、ほんとになぁ……」
若干恨みがましい目を向けられ、聖と春樹は揃って視線をそらす。
この反応からすると、どうやらこれは広まっていないらしい。いや、なんとなくそんな気はしていたのだが。
「……あんな、グレイス」
「はい」
「アロエーグルトってな、食べものやと認識されとらんねん」
「はい?」
グレイスが笑顔で固まった。
そのままぎぎぎっと音がしそうなぎこちなさで、こちらを見る。
「……やらかした?」
「……やらかした、みたい」
「……やらかした、よなやっぱ」
あはは、と乾いた笑いがもれる。
「ええと、どうしましょうウィクトさん」
「どうっていうか、これも情報提供やしな」
「ですよねー」
「というか、よく食べてみよう思うたなこれを。まあ、なんで食べよう思うたかは聞かんが……」
「「……ははは」」
何でも何も包丁が食材だと表記したからだが、さすがにそれは言えない。
ので、必殺笑ってごまかせ。……ごまかせてない気もするが、そこは気付かなかったことにしておく。
もちろん、何処か呆れたようなグレイスの視線もスルーである。
「とりあえず、これはちょっと各所で話し合わんとならんから時間貰うな。で、忘れないうちにこっち渡しとくわ」
「こっち?」
「うちのギルマスが渡したいものある言うてたやろ?」
言われて思い出す。
そういえば確かにそう言われていたが、なんやかんやあったおかげで忘れていた。というか結局ダリスに寄っていない。
「それでフレーラさんから何を?」
「ん、これや」
「「これ?」」
小さめの袋と、それより大きな袋。
その2つをウィクトは取り出し、置いた瞬間、じゃら、と音がした。
「「……?」」
それに首を傾げるも、促されて中を覗く。
「お金?」
「こっちもだ」
「小さいほうがダリスの領主、大きな方がオーディナルの国王からや」
「「は?」」
言っている意味が分からなかった。
思わずウィクトを凝視する。
「マーボンフィッシュの褒賞金や」
「は? あれはもう貰ったはずだが……」
「あれはギルドからの情報料であって、領主や国からの褒賞金やない」
「え、いや、でも褒賞金てなんで……」
ぽかんとしてしまう。
なぜ褒賞金になるのかがわからない。
思わずグレイスに視線を向けるも、苦笑するばかりでわからない。
「あのね、デウニッツはちょっと違うけど、基本的にその功績に応じて褒賞金があるのは当たり前なのよ?」
「いや、でも功績って、これが?」
いや、確かに国に献上とか言う話もしてはいたが、まさかこんなことになるとは思いもしていなかった。
だって、マーボンフィッシュが美味しいという情報だけである。
「あんな、今まで食べられん思うてたもんが、実は食べれてしかもものっそい美味いもんやったっちゅうのは、それほどすごいことなんやで?」
「「……」」
確かにそう言われればすごいことのような気もするが、あまり実感はわかない。
だが、まあ、くれるというのだからありがたく貰っておこうと頷き、改めて袋の中身を見る。
そして、聖は固まった。
「うわ、大金貨入ってるな。……ってどうした聖?」
「……見たことないお金が入ってる」
「は?」
促され袋を覗き込んだ春樹だが、同じく固まる。
そして、揃ってウィクトを見る。
「ああ、王からの褒賞金やな。白金貨が入っとるな」
見たこともないほど綺麗な紋様の入ったお金が、白金貨。
ぽかんとして、ただただウィクトを凝視する。
「だから言うてるやろ、それほどすごいことなんやて」
苦笑を浮かべるウィクトに、はっとしたように春樹が声を上げる。
「ちょっとまて、じゃあアロエーグルトは……」
「あ」
「そやな。これもすごいことになるな。まあ、場所が場所やから、マーボンフィッシュほどにはならんとは思うけど、……いや、どやろうな……正直本当に話し合わんとわからんな」
なんとも難しい表情を浮かべるウィクトを見て、聖と春樹は頬を引きつらせる。
マーボンフィッシュにしてもアロエーグルトにしても、偶然食べれると分かったものであり、意図したものではない。
だが、手元には包丁という食べ物感知器的なものがあり、この先の面倒を回避するために利用するのを止めるかと言われると、もちろんそんな気はない。
ではどうするのか。
「「………」」
聖はちらりと視線を寄越してきた春樹に、同じく視線で返す。
そう、美味しいものを見つけるのは自重する気はない。
だが、冒険者ギルドに言うと大変な事態に発展する。まあ、お金がもらえるのでいいと言えばいいのだが、ちょっと大げさになってしまう。
ならば、結論は1つ。
美味しいものを見つけてもバレなければそれでい――。
「――まあ、何を考えてるかはわかるんやけどな」
ウィクトは綺麗な笑みを浮かべる。
「隠さんと、ちゃんと報告してな?」
「そうよ、報告は必須よ?」
きっぱりと言い切ったウィクトとグレイス。
その、美味しいものを独り占めするなんて許さない、と言わんばかりの様子に、聖と春樹は思わず遠い目をした。
もちろん、自重する気はないが。
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