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2巻
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2章 魅惑の魚
そして翌朝、二人はダリスの裏口から出て少し離れた場所に来ていた。
目的は、目の前を流れる川にある。
「んー、いるかな?」
「そうだな……なんかいるような気配はあるんだが……」
何かはわからん、という春樹に、聖は釣竿を手渡す。丈夫そうな木の枝に、これまた丈夫そうな紐を結んだだけの超簡単なものである。
ここに来る途中、道具屋などを覗いたが、釣竿らしきものが見当たらなかったので仕方がない。とはいえ、本当に釣れるのかは疑問だったが。
そんなお手製の釣竿だが、あとは紐の先に何か餌を括り付ければ一応の完成である。
「……餌は何にする?」
「……そういや聖は、釣りってしたことあるのか?」
「いや、ないよ。父さんが釣ってるのを見たことはあるけど。春樹は……ないね」
「ああ、もちろんないな!」
胸を張ってきっぱりと否定する春樹に、聖はもう一度胸中で、だよね、と呟く。この手のことで、春樹に期待してはいけない。
聖はどうしようかと思いつつ、アイテムの在庫を確認しながら口を開く。
「うーんと、餌は……いっぱいあるからウッサーでいいよね」
「そだな。えっと、これを……?」
「貸して」
聖は細く切ったウッサーの肉を、紐でぐるりと巻くように結ぶ。針金っぽいものがあればよかったのだが、それも見当たらなかったので仕方がない。
「はい、どうぞ」
「ん、さんきゅー」
それをぽちゃっと川へと垂らすと、浮かんだ。
そこでようやく、そりゃそうだ、と聖は気づく。あれだけ脂肪が多い肉だったら浮いてもおかしくない。
これはいけないと慌てて回収し、適当な布で石を包み、それを餌の少し上に括り付けて再び川へと垂らすと、今度はうまく沈んだ。あとはひたすら待つのみ。
「……」
「……」
風が頬を撫で、時折どこからか遠吠えのようなものが聞こえる。
遥か彼方上空を何かが横切るたびに、地上に影を落とすのを、二人はただぼーっと見ていた。
「……釣れないな」
「……釣れないね」
約一時間経過したが、釣竿はピクリとも動かない。
どうしたものかと川を覗き込むと、濁っているわけではなく、むしろ透き通っている。
けれど、なぜか川底がまるで見えないことに聖は首を傾げる。
(……まあ、異世界だしね)
そんな魔法の言葉を胸中で聖が唱えていると、春樹が川に手を入れながら言った。
「んー、いっそ入ってみるか?」
「いや、深さがわからないし、なんか危なくない?」
「そうだな……聖が言うならやめるか」
あっさりと引いた春樹に、聖は頷く。
「でも、どうしようか? やっぱ魚、いないのかな?」
「……いや、いる。魚じゃないにしても、何かはいるんだ」
気配はある、とじっと川を見つめる春樹に、聖も同じようにじっと見つめてみる。
だが、聖にはやはり気配など欠片もわからず、遠くの草原へと視線を移した。
「んー、やっぱ僕にはわかんな」
「あっ?」
「……い?」
何かに驚いたような春樹の声に、聖は逸らしていた視線を再び川へと向ける。すると、川から顔を出した何かと、割と至近距離で目があった。
(……目?)
聖はきょとんと、それを見つめる。つるりとした丸い頭にぎょろりとした瞳。体の両側からヒレのようなものが見えている。
同じくそれを見つめていた春樹がぽつりと呟いた。
「……魚?」
「……え、凄い見てるけど……」
そう、ものすごく見られていた。しかも気づけばその数、五匹。
五対の瞳がひたすらこちらをじーっと凝視している様子は、正直夢に出そうな光景であった。
だが、あまりにも突然すぎてどうしていいかわからない状況に、聖と春樹もじっと見てしまう。そして、暫し見つめ合ったのち、川面から出た頭が突然膨らんだ。
「「……へ?」」
次の瞬間、ピュッと何かがこちらに飛ばされた。慌てて避けながら距離を取る二人だが、全部は避けきれず少し当たってしまう。
「うわっ……て、痛くない、けど」
「ちょ、生臭! これ生臭!?」
思わず春樹が叫ぶ。
そう、なんだかねばっとしたその液体は、とても生臭かった。
二人はすぐさま【洗浄】でそれを落とし、液体が飛んでこない距離までさらに下がる。
「うわー、まだ見てる」
「なんだあれ? とりあえず『見て』みるか……」
「……あー、そうだね」
正直、いくら魚といえども食べられる気はしなかった。町で魚料理を見なかったのもひょっとしたらこのせいかもしれないと二人は思う。
そんな残念な気持ちでいっぱいになりながらも、二人は【主夫の目】を発動させて鑑定した。
【マーボンフィッシュ】
胴体を真ん中でぶった切ったような見た目をした魔魚。
飛ばしてくる液体に害はなく、ただひたすら生臭いだけ。
とても食い意地が張っており、ウッサーの肉が好物だが、生は嫌いという我儘っぷり。
調理手順によっては食べることができる。
内容を確認して、思わず聖が叫んだ。
「食べられるの!?」
「……いや、食べられるが美味いとは限らないんじゃないか?」
いろんな意味で一気にテンションが上がった聖に対し、冷静に突っ込む春樹。いつもとは逆だが、こと食に関しては仕方がない。
「うん、調理手順が大事だもんね!」
「ああ、うん、そうだな」
輝くような聖の笑顔に、春樹はそれ以上突っ込むことなく頷いた。
そんな春樹の様子を気にすることなく、聖はいまだにこちらを凝視している魔魚たちをびしっと指さす。
「さ、あのマンボウもどき、早くどうにかしよう!」
「……あー、やっぱマンボウだよな。この説明……」
「うん」
胴体を半分ぶった切ったような魚など、聖にはマンボウにしか思えないし、名前からいっても恐らく間違っていない。
そもそもマンボウ自体、あのフォルムで普通に生きていることに常々疑問を感じていた聖だが、この世界に登場したことには、なぜか心底納得してしまっていた。
そう、異世界ならば、この見た目でもなんでもありである、と。
「えーっと、まずどうしようか。正直あんまり近づきたくないよね」
意気込んでどうにかしようと言ったはいいが、実際にどうしたものかと聖は唸る。
いくら【洗浄】があるとはいえ、あの液体を再び被るのは避けたかった。本当に生臭いのだ。
「そうだな。とりあえず飛ばしてみるか」
そう言うと春樹は剣を取り出し、ひゅっと風の刃を飛ばす。が、川の中へと潜り込んであっさりと避けられる。その結果は多少想定していたため落胆はしない。
けれど、再び水面に顔を出したマーボンフィッシュたちのその表情が、ふふん、とどこかこちらを馬鹿にしたように見えた。
「……っ、すげー腹立つ!」
「あ、うん、気持ちはわかるけど、抑えて抑えて」
「あああ、なんか挑発してるぞあいつら!」
「……あー……」
ヒレを一斉にびちびちとするその様子は、完璧にこちらを嘲笑っていた。さすがに聖も少しイラッとする。
「……ウッサーの肉が好物なんだよね……」
小さく呟いた聖はウッサー肉を取り出し、己のスキルにある【レンジ】という場所に放り込み、温めを選択。
そして、待つこと数秒、チン、という聞き慣れた音が脳内に響く。取り出すと、ほかほかに加熱されたウッサー肉が出てきた。
「お? あいつらの顔色が変わったぞ?」
春樹の言葉通り、マーボンフィッシュたちは先ほどとは打って変わり、余裕のない、獲物を狙うギラリとした瞳でこちらを凝視していた。
どうやら本当にウッサー肉が好物らしい。釣り餌に引っかからなかったのは、生だったからだとわかる。
だがそうなると、普段はいったい何を食べているのかが、聖は少々気になった。
「で、それどうすんだ?」
「ん、こうする」
手のひらよりも大きな肉の塊を、聖は長めの紐の先に括り付け、マーボンフィッシュたちの目の前、川岸ぎりぎりへと投げる。
五対の瞳がじっと、それを狙うように見つめる様子を眺めること数秒。
五匹の頭が前へと倒れるような前傾姿勢を取った瞬間、聖は思いきり紐を引っ張った。
「春樹!」
「おう!」
掛け声と共に、春樹が剣を横に薙ぎ払う。すると餌に釣られて飛び出してしまったマーボンフィッシュたちの尾びれのようなものを、風の刃が切り裂く。
そして勢いをなくし、ぼとりと地面に落ちたマーボンフィッシュに駆け寄りすぐさま止めを刺すと、春樹は実にすがすがしい表情で聖に向き直った。余程腹が立っていたようだ。
「……よっし、とりあえず五匹全部釣れたな!」
「うん、すぐに捌くね!」
さあ、お魚だ! とテンション高く魚を捌こうとして、聖は固まった。春樹も止まる。
「……え? なんで?」
「……黒い、な」
「……うん」
マーボンフィッシュは、先ほどまでのつるりとしたやや青みがかった色ではなく、なぜかどす黒く変色していた。いかにも毒があります、と主張していて、到底食べられる気はしない。
けれど、一縷の望みをかけて、二人は無言でもう一度【主夫の目】で見てみる。
【マーボンフィッシュ】
レモの実の果汁をかけることで、食べることができる。
淡白な白身は煮ても焼いても蒸しても美味い。
けれど何もせずにそのまま食べると地獄を見ることになるので要注意。
でも死にはしない。
「「……おお……」」
思わず二人は感嘆の声を上げる。
どうやら生きている時と倒した後で、鑑定内容が変わることもあるようだ。相変わらず食材に関しては無駄に高い性能に感心しつつも、口がニンマリするのを抑えられない。
聖はそれをちゃっと取り出した。
「あってよかったレモの実!」
ウキウキと、レモの実の果汁を魚にかける。
するとすぐに、うっすら光を放ってどす黒さがなくなり、普通の黒へと変わった。どうやらあのどす黒さが、地獄を見る元のようだ。
そのまま五匹全てにレモの実の果汁をかけ、一匹を残して全て収納する。
そして、ちょうどお昼になったのもあり、食べてみることにした。
「何にしようかな……とりあえず捌くけど」
「まずは定番の焼き魚が無難か?」
「そうだねー、それがいいか、も……ん?」
手頃な石があったので、それをまな板代わりにしようと魚を置いた聖は、その横に隠すように置かれている手のひらサイズの壺に気が付いた。なんだろうと思いつつ春樹に見せながら【主夫の目】を発動させる。
【秘伝の壺】
マーボンフィッシュの超レアドロップ品。
どこに隠していたのかは謎だが、甘い液体が入っている。
一説には甘党だという噂もあったりなかったり。
「マジか! 超レアだ!」
「うわー、危なかった。気づかないとこだったよ……中身は、っと」
目を輝かせる春樹をよそに、聖は中を確認する。壺の中身は、粘り気のあるとろりとした透明な液体。聖は少しだけすくって舐めてみた。
「――! これ水飴だ!」
「うわっ、本当だ!」
すかさず春樹も舐めて声を上げる。
二人にとって本当の意味でのレアドロップ品であった。
二人は瞳をギラリと光らせて川を見る。正確には、そこにいるはずの魔魚たちを。
「もっと欲しい!」
「確かに!」
こんな小さな壺に入った水飴なんて、きっとすぐになくなってしまう。
だが問題は『超』がつくレアドロップ品であるという現実。いくら運がいいとはいえ、そうそう手に入るとは思えなかった。
二人は暫しじっと川面を見つめ、そして気持ちを落ち着かせるために息を吐く。
「……よし、とりあえず昼食」
「ああ、狩るかどうかはあとだな」
「うん。じゃあせっかくだから、焼きと煮つけ作るね!」
気持ちを切り替えて、聖は言う。せっかく水飴が手に入ったのだ、煮つけを作らない理由はない。
「うん、大きいっていいね!」
大きな魚なので捌くのに多少手間取ったが、そのおかげで一匹で焼きも煮つけも十分できる。
焼きは綺麗な白身に少しだけ塩を振って網に載せ、煮つけは鍋にダンジョンのドロップ品である昆布醤油や水飴などを入れて煮込む。生姜が欲しいところだが、今はないので諦める。
そして、待つこと暫し。
「うー、美味しそう!」
「まだか? もうよくないか?」
「……うん。もういいよね! 食べよう!」
白身魚のじゅうじゅうという焼ける音と、煮つけの甘い醤油の香りに、待ちきれないとばかりに春樹が箸を持ち、許可を出した聖も皿を用意。
まずは焼き魚から。
「すっごい美味しい! 身がふわっふわ!」
「いい塩加減だなコレ!」
身はふわふわで、少しだけ振った塩が魚の味を引き立てている。今度は蒸したものも作ろう、絶対美味しい、などと話しながら二人はぱくぱくと食べる。
そして、次は煮つけ。完全に味が染みるには、まだ時間がかかるのだが、春樹も聖も待てないので食べるしかない。
「って、なにこのとろける感じ……」
「焼きと全然違うな……」
一口食べて、二人は驚きに目を見張った。
確かに味の染み込みはまだ甘いのだが、そんなことなど気にならないほどの食感。とろりととろけるような舌触りに、驚きの言葉しか出ない。
「なんかすっごく美味しいんだけど、この魚」
「ああ、食べないなんてもったいないよな」
「きっと食べ方知らないんだろうね、ホント【主夫の目】って便利!」
「……この情報もギルドに持ってったら、きっと買ってくれるだろうな」
「あー、確かに」
もはや食材とお金という、ダブルで美味しい魚のいる川にしか見えない風景を眺めながら、ひたすらもぐもぐと食べ続ける。
とはいえ、そんな中でも周囲の警戒だけは決して忘れていなかった。
聖は目の届く範囲だけだが、春樹はきちんと周囲の気配を探っている。
けれど危険な、こちらに悪意のある魔物だけを気にしていたため、見知った人物の接近には全くの無警戒であった。よって――
「って、何やっとんねん!?」
結構な至近距離で叫ばれ、二人は飛び上がった。
遡ること数時間前。
炭酸水を巡る怒涛のような一夜を過ごした翌日、ウィクトは商店街を歩いていた。時刻はもうすぐ昼になるだろうか。目についた屋台で串肉を数本購入し、歩きながら食べる。
昨日は夜遅く、というかほぼ朝方までフレーラと炭酸水の売買についての案件を詰めていたウィクトは大変寝不足であった。
今頃はきっとフレーラがサンドラス王国の王族との、売買という名の戦いをしている頃だろう。ややぼんやりした頭でそんなことを思いながら、目的地である裏門へと向かう。
正門とダンジョンの入口は確認したので、あとはこの場所だけであった。
徐々に人通りが少なくなり、裏門へ近づくと、こちらに気づいたのだろう門番が手を挙げている。それに返しつつ、ウィクトは口を開いた。
「お疲れさんです。変わりはありませんか?」
「ああ、今日も平和だな」
「それはよかったです。ところで今日、長身で目つきが鋭いのと、それより小柄で大人しそうな見た目の二人組の冒険者、通らへんかったですか?」
そう、ウィクトは聖と春樹を捜していた。
そのため割とざっくりした、けれど的を射ているだろう特徴を告げると、門番は少し考えるも、比較的あっさりと頷いた。
「ああ、いたな。まだ初心者っぽい冒険者だろ? 楽しそうに出ていったぞ」
「どこら辺に行くとか、言うてましたか?」
「特には……いや、でも確か……川がどうとか言ってたか?」
「川ですか……わかりました。おおきに」
お礼を言って、外へと出る。
基本的にギルド職員には、冒険者を抑えるためと己の身を守るために、ある一定以上の強さが求められる。
そのため、比較的魔物が強くないこの近辺の探索を、ウィクトが躊躇する理由はなかった。だからといって、油断することはないが。
「んーと、川っちゅうとレモの木があるとこか」
頭の中に周辺地図を広げ、迷うことなく足を進める。
(……ああ、そや。ちょうどええし、レモの実も採ってこか)
炭酸水とセットで売れば、酔っ払いにしか使い道のなかったレモの実の需要が高まるかもしれない。それに何より美味しい。
そんなことを考えつつ歩いていると、レモの木が見えてきた。その向こう側には目的の川がある。
「いるといいんやけど」
そもそもウィクトが聖と春樹を捜しているのは、フレーラからの言伝があるためだった。
次にギルドに来た時でいいんじゃないかとウィクトは思ったのだが、フレーラ曰く、なるべく早い方がいいとのこと。なんでも、落ち人は気づいたら町からいなくなっているのが定番だから、らしい。
よくわからないのだが、いつの間にか全然別の場所にいたという意味不明の現象が、過去にはざらにあったようだ。本当に意味がわからないのだが、落ち人やしな、とウィクトは己を納得させる。
祖先にいたという落ち人のことなどウィクトは全く知らない。しかし、初めて接した落ち人である聖と春樹は、確かに自分たちと違っていた。
ダリスに来てからまだそんなに日が経っていないというのに、爆弾的情報提供が多すぎる。これが落ち人なのかと、そのたびにウィクトは戦慄と共に感心していた。
こうしてギルドに落ち人由来の変な情報が蓄積されてきた、というわけだ。もっとも、完全に間違った情報でもないため、落ち人にとってある意味では自業自得であった。
「さて、まずはレモの実をちょい貰うかな」
歩きつつ、さあ採れと言わんばかりに下りてきた枝から、いくつか実を取る。レモの実は人が近づくと勝手に枝を下げてくるため、採取も楽なものである。
そうして採っていると、ふと、ウィクトの鼻先を何かの匂いが掠めた。
「ん? なんやこの香り?」
甘いような香ばしいような、とてもお腹がすく香り。
ウィクトはそれにつられて、生い茂るレモの木の間を歩く。そして、木の向こう側に川が見えたところで、こちらに背を向けて座る聖と春樹を見つけた。
「お、ここにいたんか」
見つかってよかったと、声をかけようとしてウィクトは思わず止まる。
香りの発生源はどうやらここらしいが、いったい何をしているのか。そう首を傾げながらもゆっくりと近寄る。
そして、背後からそれが見える位置まで来た時、ウィクトは思わず叫んでいた。
「って、何やっとんねん!?」
彼にとっておかしな光景が、そこにはあった。
そして翌朝、二人はダリスの裏口から出て少し離れた場所に来ていた。
目的は、目の前を流れる川にある。
「んー、いるかな?」
「そうだな……なんかいるような気配はあるんだが……」
何かはわからん、という春樹に、聖は釣竿を手渡す。丈夫そうな木の枝に、これまた丈夫そうな紐を結んだだけの超簡単なものである。
ここに来る途中、道具屋などを覗いたが、釣竿らしきものが見当たらなかったので仕方がない。とはいえ、本当に釣れるのかは疑問だったが。
そんなお手製の釣竿だが、あとは紐の先に何か餌を括り付ければ一応の完成である。
「……餌は何にする?」
「……そういや聖は、釣りってしたことあるのか?」
「いや、ないよ。父さんが釣ってるのを見たことはあるけど。春樹は……ないね」
「ああ、もちろんないな!」
胸を張ってきっぱりと否定する春樹に、聖はもう一度胸中で、だよね、と呟く。この手のことで、春樹に期待してはいけない。
聖はどうしようかと思いつつ、アイテムの在庫を確認しながら口を開く。
「うーんと、餌は……いっぱいあるからウッサーでいいよね」
「そだな。えっと、これを……?」
「貸して」
聖は細く切ったウッサーの肉を、紐でぐるりと巻くように結ぶ。針金っぽいものがあればよかったのだが、それも見当たらなかったので仕方がない。
「はい、どうぞ」
「ん、さんきゅー」
それをぽちゃっと川へと垂らすと、浮かんだ。
そこでようやく、そりゃそうだ、と聖は気づく。あれだけ脂肪が多い肉だったら浮いてもおかしくない。
これはいけないと慌てて回収し、適当な布で石を包み、それを餌の少し上に括り付けて再び川へと垂らすと、今度はうまく沈んだ。あとはひたすら待つのみ。
「……」
「……」
風が頬を撫で、時折どこからか遠吠えのようなものが聞こえる。
遥か彼方上空を何かが横切るたびに、地上に影を落とすのを、二人はただぼーっと見ていた。
「……釣れないな」
「……釣れないね」
約一時間経過したが、釣竿はピクリとも動かない。
どうしたものかと川を覗き込むと、濁っているわけではなく、むしろ透き通っている。
けれど、なぜか川底がまるで見えないことに聖は首を傾げる。
(……まあ、異世界だしね)
そんな魔法の言葉を胸中で聖が唱えていると、春樹が川に手を入れながら言った。
「んー、いっそ入ってみるか?」
「いや、深さがわからないし、なんか危なくない?」
「そうだな……聖が言うならやめるか」
あっさりと引いた春樹に、聖は頷く。
「でも、どうしようか? やっぱ魚、いないのかな?」
「……いや、いる。魚じゃないにしても、何かはいるんだ」
気配はある、とじっと川を見つめる春樹に、聖も同じようにじっと見つめてみる。
だが、聖にはやはり気配など欠片もわからず、遠くの草原へと視線を移した。
「んー、やっぱ僕にはわかんな」
「あっ?」
「……い?」
何かに驚いたような春樹の声に、聖は逸らしていた視線を再び川へと向ける。すると、川から顔を出した何かと、割と至近距離で目があった。
(……目?)
聖はきょとんと、それを見つめる。つるりとした丸い頭にぎょろりとした瞳。体の両側からヒレのようなものが見えている。
同じくそれを見つめていた春樹がぽつりと呟いた。
「……魚?」
「……え、凄い見てるけど……」
そう、ものすごく見られていた。しかも気づけばその数、五匹。
五対の瞳がひたすらこちらをじーっと凝視している様子は、正直夢に出そうな光景であった。
だが、あまりにも突然すぎてどうしていいかわからない状況に、聖と春樹もじっと見てしまう。そして、暫し見つめ合ったのち、川面から出た頭が突然膨らんだ。
「「……へ?」」
次の瞬間、ピュッと何かがこちらに飛ばされた。慌てて避けながら距離を取る二人だが、全部は避けきれず少し当たってしまう。
「うわっ……て、痛くない、けど」
「ちょ、生臭! これ生臭!?」
思わず春樹が叫ぶ。
そう、なんだかねばっとしたその液体は、とても生臭かった。
二人はすぐさま【洗浄】でそれを落とし、液体が飛んでこない距離までさらに下がる。
「うわー、まだ見てる」
「なんだあれ? とりあえず『見て』みるか……」
「……あー、そうだね」
正直、いくら魚といえども食べられる気はしなかった。町で魚料理を見なかったのもひょっとしたらこのせいかもしれないと二人は思う。
そんな残念な気持ちでいっぱいになりながらも、二人は【主夫の目】を発動させて鑑定した。
【マーボンフィッシュ】
胴体を真ん中でぶった切ったような見た目をした魔魚。
飛ばしてくる液体に害はなく、ただひたすら生臭いだけ。
とても食い意地が張っており、ウッサーの肉が好物だが、生は嫌いという我儘っぷり。
調理手順によっては食べることができる。
内容を確認して、思わず聖が叫んだ。
「食べられるの!?」
「……いや、食べられるが美味いとは限らないんじゃないか?」
いろんな意味で一気にテンションが上がった聖に対し、冷静に突っ込む春樹。いつもとは逆だが、こと食に関しては仕方がない。
「うん、調理手順が大事だもんね!」
「ああ、うん、そうだな」
輝くような聖の笑顔に、春樹はそれ以上突っ込むことなく頷いた。
そんな春樹の様子を気にすることなく、聖はいまだにこちらを凝視している魔魚たちをびしっと指さす。
「さ、あのマンボウもどき、早くどうにかしよう!」
「……あー、やっぱマンボウだよな。この説明……」
「うん」
胴体を半分ぶった切ったような魚など、聖にはマンボウにしか思えないし、名前からいっても恐らく間違っていない。
そもそもマンボウ自体、あのフォルムで普通に生きていることに常々疑問を感じていた聖だが、この世界に登場したことには、なぜか心底納得してしまっていた。
そう、異世界ならば、この見た目でもなんでもありである、と。
「えーっと、まずどうしようか。正直あんまり近づきたくないよね」
意気込んでどうにかしようと言ったはいいが、実際にどうしたものかと聖は唸る。
いくら【洗浄】があるとはいえ、あの液体を再び被るのは避けたかった。本当に生臭いのだ。
「そうだな。とりあえず飛ばしてみるか」
そう言うと春樹は剣を取り出し、ひゅっと風の刃を飛ばす。が、川の中へと潜り込んであっさりと避けられる。その結果は多少想定していたため落胆はしない。
けれど、再び水面に顔を出したマーボンフィッシュたちのその表情が、ふふん、とどこかこちらを馬鹿にしたように見えた。
「……っ、すげー腹立つ!」
「あ、うん、気持ちはわかるけど、抑えて抑えて」
「あああ、なんか挑発してるぞあいつら!」
「……あー……」
ヒレを一斉にびちびちとするその様子は、完璧にこちらを嘲笑っていた。さすがに聖も少しイラッとする。
「……ウッサーの肉が好物なんだよね……」
小さく呟いた聖はウッサー肉を取り出し、己のスキルにある【レンジ】という場所に放り込み、温めを選択。
そして、待つこと数秒、チン、という聞き慣れた音が脳内に響く。取り出すと、ほかほかに加熱されたウッサー肉が出てきた。
「お? あいつらの顔色が変わったぞ?」
春樹の言葉通り、マーボンフィッシュたちは先ほどとは打って変わり、余裕のない、獲物を狙うギラリとした瞳でこちらを凝視していた。
どうやら本当にウッサー肉が好物らしい。釣り餌に引っかからなかったのは、生だったからだとわかる。
だがそうなると、普段はいったい何を食べているのかが、聖は少々気になった。
「で、それどうすんだ?」
「ん、こうする」
手のひらよりも大きな肉の塊を、聖は長めの紐の先に括り付け、マーボンフィッシュたちの目の前、川岸ぎりぎりへと投げる。
五対の瞳がじっと、それを狙うように見つめる様子を眺めること数秒。
五匹の頭が前へと倒れるような前傾姿勢を取った瞬間、聖は思いきり紐を引っ張った。
「春樹!」
「おう!」
掛け声と共に、春樹が剣を横に薙ぎ払う。すると餌に釣られて飛び出してしまったマーボンフィッシュたちの尾びれのようなものを、風の刃が切り裂く。
そして勢いをなくし、ぼとりと地面に落ちたマーボンフィッシュに駆け寄りすぐさま止めを刺すと、春樹は実にすがすがしい表情で聖に向き直った。余程腹が立っていたようだ。
「……よっし、とりあえず五匹全部釣れたな!」
「うん、すぐに捌くね!」
さあ、お魚だ! とテンション高く魚を捌こうとして、聖は固まった。春樹も止まる。
「……え? なんで?」
「……黒い、な」
「……うん」
マーボンフィッシュは、先ほどまでのつるりとしたやや青みがかった色ではなく、なぜかどす黒く変色していた。いかにも毒があります、と主張していて、到底食べられる気はしない。
けれど、一縷の望みをかけて、二人は無言でもう一度【主夫の目】で見てみる。
【マーボンフィッシュ】
レモの実の果汁をかけることで、食べることができる。
淡白な白身は煮ても焼いても蒸しても美味い。
けれど何もせずにそのまま食べると地獄を見ることになるので要注意。
でも死にはしない。
「「……おお……」」
思わず二人は感嘆の声を上げる。
どうやら生きている時と倒した後で、鑑定内容が変わることもあるようだ。相変わらず食材に関しては無駄に高い性能に感心しつつも、口がニンマリするのを抑えられない。
聖はそれをちゃっと取り出した。
「あってよかったレモの実!」
ウキウキと、レモの実の果汁を魚にかける。
するとすぐに、うっすら光を放ってどす黒さがなくなり、普通の黒へと変わった。どうやらあのどす黒さが、地獄を見る元のようだ。
そのまま五匹全てにレモの実の果汁をかけ、一匹を残して全て収納する。
そして、ちょうどお昼になったのもあり、食べてみることにした。
「何にしようかな……とりあえず捌くけど」
「まずは定番の焼き魚が無難か?」
「そうだねー、それがいいか、も……ん?」
手頃な石があったので、それをまな板代わりにしようと魚を置いた聖は、その横に隠すように置かれている手のひらサイズの壺に気が付いた。なんだろうと思いつつ春樹に見せながら【主夫の目】を発動させる。
【秘伝の壺】
マーボンフィッシュの超レアドロップ品。
どこに隠していたのかは謎だが、甘い液体が入っている。
一説には甘党だという噂もあったりなかったり。
「マジか! 超レアだ!」
「うわー、危なかった。気づかないとこだったよ……中身は、っと」
目を輝かせる春樹をよそに、聖は中を確認する。壺の中身は、粘り気のあるとろりとした透明な液体。聖は少しだけすくって舐めてみた。
「――! これ水飴だ!」
「うわっ、本当だ!」
すかさず春樹も舐めて声を上げる。
二人にとって本当の意味でのレアドロップ品であった。
二人は瞳をギラリと光らせて川を見る。正確には、そこにいるはずの魔魚たちを。
「もっと欲しい!」
「確かに!」
こんな小さな壺に入った水飴なんて、きっとすぐになくなってしまう。
だが問題は『超』がつくレアドロップ品であるという現実。いくら運がいいとはいえ、そうそう手に入るとは思えなかった。
二人は暫しじっと川面を見つめ、そして気持ちを落ち着かせるために息を吐く。
「……よし、とりあえず昼食」
「ああ、狩るかどうかはあとだな」
「うん。じゃあせっかくだから、焼きと煮つけ作るね!」
気持ちを切り替えて、聖は言う。せっかく水飴が手に入ったのだ、煮つけを作らない理由はない。
「うん、大きいっていいね!」
大きな魚なので捌くのに多少手間取ったが、そのおかげで一匹で焼きも煮つけも十分できる。
焼きは綺麗な白身に少しだけ塩を振って網に載せ、煮つけは鍋にダンジョンのドロップ品である昆布醤油や水飴などを入れて煮込む。生姜が欲しいところだが、今はないので諦める。
そして、待つこと暫し。
「うー、美味しそう!」
「まだか? もうよくないか?」
「……うん。もういいよね! 食べよう!」
白身魚のじゅうじゅうという焼ける音と、煮つけの甘い醤油の香りに、待ちきれないとばかりに春樹が箸を持ち、許可を出した聖も皿を用意。
まずは焼き魚から。
「すっごい美味しい! 身がふわっふわ!」
「いい塩加減だなコレ!」
身はふわふわで、少しだけ振った塩が魚の味を引き立てている。今度は蒸したものも作ろう、絶対美味しい、などと話しながら二人はぱくぱくと食べる。
そして、次は煮つけ。完全に味が染みるには、まだ時間がかかるのだが、春樹も聖も待てないので食べるしかない。
「って、なにこのとろける感じ……」
「焼きと全然違うな……」
一口食べて、二人は驚きに目を見張った。
確かに味の染み込みはまだ甘いのだが、そんなことなど気にならないほどの食感。とろりととろけるような舌触りに、驚きの言葉しか出ない。
「なんかすっごく美味しいんだけど、この魚」
「ああ、食べないなんてもったいないよな」
「きっと食べ方知らないんだろうね、ホント【主夫の目】って便利!」
「……この情報もギルドに持ってったら、きっと買ってくれるだろうな」
「あー、確かに」
もはや食材とお金という、ダブルで美味しい魚のいる川にしか見えない風景を眺めながら、ひたすらもぐもぐと食べ続ける。
とはいえ、そんな中でも周囲の警戒だけは決して忘れていなかった。
聖は目の届く範囲だけだが、春樹はきちんと周囲の気配を探っている。
けれど危険な、こちらに悪意のある魔物だけを気にしていたため、見知った人物の接近には全くの無警戒であった。よって――
「って、何やっとんねん!?」
結構な至近距離で叫ばれ、二人は飛び上がった。
遡ること数時間前。
炭酸水を巡る怒涛のような一夜を過ごした翌日、ウィクトは商店街を歩いていた。時刻はもうすぐ昼になるだろうか。目についた屋台で串肉を数本購入し、歩きながら食べる。
昨日は夜遅く、というかほぼ朝方までフレーラと炭酸水の売買についての案件を詰めていたウィクトは大変寝不足であった。
今頃はきっとフレーラがサンドラス王国の王族との、売買という名の戦いをしている頃だろう。ややぼんやりした頭でそんなことを思いながら、目的地である裏門へと向かう。
正門とダンジョンの入口は確認したので、あとはこの場所だけであった。
徐々に人通りが少なくなり、裏門へ近づくと、こちらに気づいたのだろう門番が手を挙げている。それに返しつつ、ウィクトは口を開いた。
「お疲れさんです。変わりはありませんか?」
「ああ、今日も平和だな」
「それはよかったです。ところで今日、長身で目つきが鋭いのと、それより小柄で大人しそうな見た目の二人組の冒険者、通らへんかったですか?」
そう、ウィクトは聖と春樹を捜していた。
そのため割とざっくりした、けれど的を射ているだろう特徴を告げると、門番は少し考えるも、比較的あっさりと頷いた。
「ああ、いたな。まだ初心者っぽい冒険者だろ? 楽しそうに出ていったぞ」
「どこら辺に行くとか、言うてましたか?」
「特には……いや、でも確か……川がどうとか言ってたか?」
「川ですか……わかりました。おおきに」
お礼を言って、外へと出る。
基本的にギルド職員には、冒険者を抑えるためと己の身を守るために、ある一定以上の強さが求められる。
そのため、比較的魔物が強くないこの近辺の探索を、ウィクトが躊躇する理由はなかった。だからといって、油断することはないが。
「んーと、川っちゅうとレモの木があるとこか」
頭の中に周辺地図を広げ、迷うことなく足を進める。
(……ああ、そや。ちょうどええし、レモの実も採ってこか)
炭酸水とセットで売れば、酔っ払いにしか使い道のなかったレモの実の需要が高まるかもしれない。それに何より美味しい。
そんなことを考えつつ歩いていると、レモの木が見えてきた。その向こう側には目的の川がある。
「いるといいんやけど」
そもそもウィクトが聖と春樹を捜しているのは、フレーラからの言伝があるためだった。
次にギルドに来た時でいいんじゃないかとウィクトは思ったのだが、フレーラ曰く、なるべく早い方がいいとのこと。なんでも、落ち人は気づいたら町からいなくなっているのが定番だから、らしい。
よくわからないのだが、いつの間にか全然別の場所にいたという意味不明の現象が、過去にはざらにあったようだ。本当に意味がわからないのだが、落ち人やしな、とウィクトは己を納得させる。
祖先にいたという落ち人のことなどウィクトは全く知らない。しかし、初めて接した落ち人である聖と春樹は、確かに自分たちと違っていた。
ダリスに来てからまだそんなに日が経っていないというのに、爆弾的情報提供が多すぎる。これが落ち人なのかと、そのたびにウィクトは戦慄と共に感心していた。
こうしてギルドに落ち人由来の変な情報が蓄積されてきた、というわけだ。もっとも、完全に間違った情報でもないため、落ち人にとってある意味では自業自得であった。
「さて、まずはレモの実をちょい貰うかな」
歩きつつ、さあ採れと言わんばかりに下りてきた枝から、いくつか実を取る。レモの実は人が近づくと勝手に枝を下げてくるため、採取も楽なものである。
そうして採っていると、ふと、ウィクトの鼻先を何かの匂いが掠めた。
「ん? なんやこの香り?」
甘いような香ばしいような、とてもお腹がすく香り。
ウィクトはそれにつられて、生い茂るレモの木の間を歩く。そして、木の向こう側に川が見えたところで、こちらに背を向けて座る聖と春樹を見つけた。
「お、ここにいたんか」
見つかってよかったと、声をかけようとしてウィクトは思わず止まる。
香りの発生源はどうやらここらしいが、いったい何をしているのか。そう首を傾げながらもゆっくりと近寄る。
そして、背後からそれが見える位置まで来た時、ウィクトは思わず叫んでいた。
「って、何やっとんねん!?」
彼にとっておかしな光景が、そこにはあった。
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