一般人な僕は、冒険者な親友について行く

ひまり

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1巻

1-3

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『何言ってるのよ、滅びた、っていうか滅ぼしたんじゃない。嬉々ききとして』
『いや、そこはオブラートに包んだんだよ。日本人にはびっくりな内容だから、俺的な優しさなんだよ。いいからいちいち突っ込むな』
『はいはい』

 ナナキは女性の返事に満足げに頷くと、言葉を続けた。

『よし。で、俺としてもいろいろあったことを語りたい気もするんだが、三日三晩かかりそうな内容だから勘弁かんべんな。まあ、俺が死ぬまでに本にでもして、どっかにお宝と一緒に隠しとくから暇だったら探してみてくれ』

 もう世に出てる可能性もあるけどな、と笑うナナキに二人は思う。
 お宝かどうかはともかく、探したいような探したくないような、そんな内容の本であることは確かだろうと。

『それでこの世界は、もう知ってるというか想像はつくだろうが、剣があって魔法があって、所謂いわゆるゲームみたいな世界って表現するのが一番わかりやすいと思う――ただ、間違えるなよ』

 瞬時に今までとは変わったナナキの表情に、聖たちの背筋がぞくりと震える。
 さっきまでおちゃらけていたナナキの目がすっと細まり、声が真剣みを帯びる。

『どんなにゲームみたいな世界だと思っても、これは現実だ。死んでも生き返れるなんて思うな。魔法が万能だなんて思うな。どんなチートな強さや力を手に入れようと、ちっぽけなミスで死ぬ奴は大勢いる。これはまぎれもない、現実だ――』

 ――それを忘れるな。

「「……」」

 その言葉の持つ重さに、ごくりとつばを飲み込む二人。
 だが二人には、全てを現実として認めるのは、正直まだ難しい。
 特に春樹はオタク脳が全開なため、言っていることを理解はできるが、現実味がないのが実際のところである。
 けれど、この言葉は絶対に忘れないようにしようと、二人は心に刻んだ。

『ま、堅苦しい話はこれで終わりな』

 ナナキはにっと笑い、ひらひらと手を振る。
 その動作だけで空気が軽くなり、聖たちは知らず息を吐いた。
 そしてナナキは言葉を続ける。

『この世界は面白いぜ』

 彼の黒い瞳が、子供のようにキラキラと輝く。

『確かにあっちの現代文明からすると、多少不便なこともあるけどな、それを差し引いても面白いと俺は思う。もちろん不愉快なこともたくさんあったし、国を滅ぼすなんてこともやっちまったけど、やらない後悔よりやった後悔って言うだろ。ま、あのクソ国を滅ぼしたのは全くこれっぽっちも後悔してないけどな!』

 はははっと、実に清々しい表情で笑う。


 よっぽど恨み辛みがあったのだろう、というかその国はいったい何をやったのだろうか、と聖は若干遠い目をした。その一方で春樹は、『なるほど、そういうパターンもあるか。それもまたテンプレ』と、何やら頷いていたりする。
 幼馴染にして親友のはずだが、意思の疎通そつうは場合によってはとても難しい。

『あと言っとくことあったかな……ああ、魔法とかスキルのコツな。異世界事情に詳しい奴なら大抵思いつくだろうけど、イメージな、イメージ。現代日本人なら得意だろ? この世界はイメージと思い込みで大抵なんとかなる!』
『それ、あなただけじゃないですか……』
『いや、聖女も似たようなこと言ってたぞ?』
『……彼女もですか』

 どこか疲れを感じる女性の声に、ナナキは楽しそうに答える。

『ああ、聞いたことなかったっけ? 「私ができるって言ったらできるのよ!」が口癖くちぐせだぞ?』
『あ、もういいです。それよりそろそろ時間では?』
『投げられた!? いや、いいんだけど……まあタイムリミットか。じゃあ最後に、俺は今ものすごく楽しいし、これからも全力で楽しむ。もちろんやりたいことを我慢がまんする気もない』

 小さく『あなたの辞書に我慢って言葉ないものね』と聞こえ、ないのかと二人はあっさり納得した。
 そんな自制心を持たない男は、聞こえていただろう言葉を気にする気配もなく続ける。

『だからいつか気が向いたらでいい、俺の国に来てくれ。絶対に面白い。まあ、聖女以外にも「内政チート!」とか「目指せダンジョンマスター!」とか言ってる奴がいろいろいるから、そうだな……これを見てるのが百年以上後だったら、ものすごく面白い世界になってるだろうな』

 それを聞いた聖たちは、今はいったい何年後の世界なのだろうかと考えずにはいられなかった。
 もし、本人がまだ生きている時代だったとしても、そうじゃない時代だったとしても、面白いを通り越して大変な気がしなくもないのは気のせいだろうか。
 気のせいだといいなと聖は思い、気になるワードが多すぎて息が詰まりそうだと春樹は思った。
 もはや両者の温度差は広がりすぎて、合流のきざしは見えない。

『そんなわけで俺たちの時代でいろいろやらかしてるから、お前らは気にせずやりたいことをやってくれ。事情説明もなくこの世界に飛ばされたんだ、誰に遠慮する必要もないし、やりたいことをやって何が悪い。楽しんで幸せになったもん勝ちだろう?』

 まるで悪戯いたずらが成功した子供のように、にやりと笑って、そしてその拳がこちらへと向けられた。

『じゃあな、健闘を祈る!』

 その言葉を最後に映像はふつりと切れる。
 そして、静まり返った空間に、ふっと金色の文字が浮かび上がった。


プレゼントだ。たぶんわかるだろうがマジックバッグ。中身も容量も同じ、十分以内に選んでくれ。ただし、一人一つ、それ以上欲張るとプレゼントはなしになる。詳しい説明書は中に入ってるからな。ではスタート!


 次の瞬間、どこからともなくたくさんのカバンが現れた。

「えっと、マジックバッグって何?」
「ありがとうテンプレ!」

 戸惑う聖と、意に介さず自分の世界に入り込んでしまっている春樹。

「春樹、頼むから戻って」
「あ、悪い。えーっと、見た目以上にたくさん物が入る魔法のカバンだな。中身は同じらしいから好みで選べばいいんじゃないか?」
「なるほど」

 春樹の説明に頷いた聖は、所狭しと置かれているカバンたちを見渡す。
 リュックや肩掛け、ハンドバッグのような形、多種多様なものがある中、聖は目についたものを手に取った。

「ポーチ、かな?」

 飾り気のない薄茶色の小さな入れ物。春樹の言う通り好みで選んでいいのなら、腰につけることができるこれは、とても便利そうだと聖は思った。

「うん、これにしよう」

 春樹は何を選んだのかなと振り返った聖は、彼が掴んでいるものを目にし、思わず叫んだ。

「ちょっ、春樹ストーップ!!」
「あ、もう選んだのか? おお、腰につけるやつか、いいなそれ」
「うん、邪魔にならないから便利かなって……じゃない、何選んでるかな!?」
「ん?」

 手元を指さすと、春樹がきょとんとした。
 彼が持っていたのは、やや大きめの長方形のカバン。タイヤがついており、旅行や出張に最適なそれを、人はスーツケースと呼ぶ。
 何か問題でも? と言いたげな春樹を、聖は慌てて制止する。

「いくら異世界知識のない僕でもわかるよ、それはない! あっちゃダメなやつだよ!」
「いや、これは絶対フラグなんだ! 俺は今、試されてるんだ!」
「何に!? ないよ! これは絶対冗談で置かれたものだよ! さっき見たあの人の感じから面白さだけで作ったものだよ!」

 嬉しくもないことだが、聖の予想は当たっていた。旅行カバンって言ったらこれは外せないよな、と大笑いしながら作られた品である。
 だが、実際に選ぼうとする者が現れるとは思っておらず、本当に冗談のつもりであった。
 ナナキの予想を超えた春樹は、誰にも称賛されないがある意味凄かった。

「せめてリュックとか、僕と同じポーチもまだあるし!」
「いや、俺はこれで行く、行かせてくれ!」
「ないから、ほんとにそれだけはないから!」

 なんとしてもそれを持っていきたい春樹と、それだけはないという聖の必死の攻防だが、無情にも終わりの時間がやってきた。

『十分経過しました。元の場所に転送します』

 なんの感情もない、ただただ無機質なその声に、焦る聖とガッツポーズの春樹。

「え、ちょっ」
「よし、これで」

 そして、問答無用で再び視界が白い光に覆われ、眩しさに思わず目を閉じる。

『――また、いつかどこかで』

 そんな言葉がかすかに、聞こえた気がした。


「あー……つかれた」
「体が……重い……」

 時刻は夜の七時を回る頃。
 暗闇くらやみに包まれた窓の外から時折聞こえる酔っ払いの陽気な声を聞きながら、聖と春樹はだらりとその体をベッドの上へと投げ出していた。
 二人はあの不思議空間から元いたバルドの部屋へと戻された後、少しばかりの補足説明を受けた。
 内容は、あの不思議空間が存在する理由である。
 落ち人というのは、物語に登場するほどはるか昔からいた存在であり、不思議なほど常識が欠落しているにもかかわらず、誰も知らないような知識を持っている人々のこと。
 決して多くはないが、いつの時代にも必ず一人は存在していたと記録されている。
 そんな落ち人だが、大勢確認された時代がある。
 それがナナキ・アベ・サンドラス――英雄王がいた時代である。
 その当時存在した落ち人たちの多くが、なぜかおのれを神に選ばれた特別な存在だと思い込んだ。
 確かに彼らは特別な力を持っていて、それはあながち間違いではなかった。
 けれど、それはこの世界の住人よりほんの少し特別な力を持っているだけであるということに、気づかなかった……気づけなかったのだ。
 そんな彼らは、この世界の人々の言葉を聞くことも、忠告に耳を貸すこともなかった。結果として、この世界をまるでゲームのように攻略しようとして命を落としていった。
 残ったのは、ナナキのように気づけた者たちのみ。
 そんな背景から「後から来るかもしれない人たちが勘違いしないように」と、ナナキを中心として落ち人救済運動が始まった。落ち人に関しての様々な知識を広め、見つけたら冒険者ギルドへ報告することを人々の意識へと浸透しんとうさせたのだ。
 冒険者ギルドが選ばれたのは、各地にあることと、国から独立した機関であるということ、そして当時のギルド運営に落ち人が携わっていたことも理由として挙げられる。
 だが、一番の理由としては、基本的に落ち人は冒険者ギルドに集まるからである。
 なぜとは聞くまでもないだろう。多かれ少なかれ、を持っているからだ。もっともこの世界の住人たちは知らないことだが。
 ちなみに不思議空間で何が行われているかについては、基本的に落ち人以外誰も知らない。詮索せんさくしてはいけないことだと、なぜか人々の意識に浸透している。
 そんな理由から――

 バルド「(この世界の常識とか)わかっただろ?」
 聖「ええ、(過去に落ち人がいろいろやらかしてるのは)わかりました」
 春樹「そうだな、(テンプレワードは)いろいろ聞けたな」

 という状態になっていた。
 三者三様それぞれが納得しているので問題にはなっていないが、ある意味カオスであった。
 そうしてその説明が終わった後、案内されたのがこの部屋。
 ここはバルドの厚意で使っていいと案内された、ギルドにある部屋の一つであり、一文無しで疲労困憊ひろうこんぱいの身には大変ありがたいことであった。
 即座にベッドへ倒れ込むと、どっと疲労が押し寄せ体のあちこちが悲鳴を上げる。もはや口を開く気力も起き上がる気力も二人にはなかったが、扉をたたく音になんとか根性で顔だけ上げた。

「食事を持ってきたのだけど、食べられるかしら?」

 入ってきたのは、先ほどこの部屋まで案内してくれた受付嬢だった。首を傾げながら微笑むと、後ろで束ねられた金色の髪がさらりと揺れる。

「えっと、ありがとうございます、えーと……」
「ああ、私はシーニアというの。よろしくね」
「はい、ありがとうございますシーニアさん」

 気力を振り絞って体を起こし、聖はなんとか受け答えする。テーブルに並べられていく、ほかほかの料理を見ていると、盛大にぐーっという音が鳴った。
 音の先に視線をやれば、起き上がっていた春樹が、どこかばつが悪そうにお腹を押さえている。つられて聖のお腹も音を立てる。

「……そういえば、朝しか食べてないや……」
「……そりゃあ腹も鳴るよな……」

 空腹を感じる暇もなかった怒涛どとうのような一日を思い返す二人だが、視線は料理に釘付くぎづけである。
 シーニアは、その様子を眺めながら微笑ましいものを見るみたいに目を細め、しかし少しだけ考えるように頬に手を当てる。

「足りるかしら? 一応、多めには持ってきたのだけど……」

 二人の外見から食べ盛りだろうと思い、有り合わせではあるが通常より多い量を持ってきた。けれどそれはシーニアの基準であり、ひょっとしたら落ち人には足りないかもしれないと今更ながらに心配になったのだ。
 だが、聖と春樹から見てもそれは十分な量である。むしろ通常なら多いと言ってしまうレベルであり、無用な心配であった。

「こんなに用意してもらって嬉しいです。ありがとうございます」
「そう? 大丈夫かしら?」
「はい、十分です」
「ならいいのだけど……」

 もし足りないようだったら遠慮なく言ってね、と念を押しながら去って行くシーニアの姿が扉の向こうへ消えていくのを見送る二人。
 いったいどれだけ食べると思われているのだろうかと、聖は少しだけ気になった。

「よし、食べようぜ!」
「そうだね、いただきます」

 春樹の待ちきれないと言わんばかりの声に、聖も同意する。何はともあれ、まずは食事である。
 目の前にあるのは、パンとシチューと串肉くしにくという簡単な料理。
 パンは少し硬いが、シチューにつけると柔らかくなるし、そのシチューもコクがあって美味しい。串肉は大きいが決して硬くなく、むと肉汁が口いっぱいに広がる。多少冷めていたが、それでも問題ないほど美味しい。なんの肉かはわからなかったが気にしないことにする。
 そうして夢中で食べ進め、多いんじゃないかと懸念けねんしていた料理は綺麗きれいになくなった。

「あー、生き返った」
「うん、美味しかったね」

 ご飯を食べたことにより先ほどより気力が回復すると、多少気持ちに余裕が出てくる。そうなると話したいことが次から次へと出てくるから不思議である。

「そういえば、レベルってゲームみたいに魔物を倒して上げるやつ?」
「たぶんな。当面の目標はレベル上げだな。目指せ高レベル!」
「うん、死なない程度にほどほどにしようね」

 レベルを上げる目的は、安全とお金の確保であって、多少の危険はまだしも、命の危機があるものは論外である。そう告げる聖に、わかってると春樹は頷く。

「寿命以外で死ぬ気はないからな!」
「うん、まあ、安全第一ならいいよ」
「おう! しっかし、自分のステータスくらいいつでも見られればいいのになぁ」
「確かに、いちいちあの宝玉で見ないといけないのは不便だよね。『ステータス』って言ったら見え……あれ?」

 聖は何気なく呟いて、何もないはずの空間を見つめ固まった。
 そんな、ぱちぱちと目をまたたかせ何かを確認する様子に、春樹が首を傾げる。 

「どうかしたのか?」
「えっと、なんかステータスが見えた……っていうか見えてる」
「マジか! じゃあ俺も『ステータス』! うわっ、ホントに見えた!」

 ぐんっと春樹のテンションが上がった。
 なぜ見えるようになったのかは二人にとって疑問だが、便利になったので問題はなかった。
 実は一度宝玉で調べたことによって見えるようになったのだが、バルドは特に何も言っていなかったことから落ち人特典かもしれないと聖は考えていた。

「ん? なんかさっき見たのより項目多いな」
「多いね……」

 呟き、二人は同時に筆記用具に手を伸ばした。そして己が見たステータスを書き写す。
 その詳細しょうさいはこのようなものだった。


 名 前:ヒジリ・ニッタ
 種 族:落ち人
 職 業:主夫
 レベル:1
 スキル:親友Lv1
 称 号:なし


 名 前:ハルキ・サトウ
 種 族:落ち人
 職 業:守護者
 レベル:1
 スキル:剣術Lv1
 称 号:なし


 お互いのステータスを見比べながら、聖が口を開く。

「……ねぇ春樹」
「……なんだ」
「僕のスキルって、何?」
「いや、さすがに俺の知識にもちょっと……」

 ハイテンションの春樹をも落ち着かせる謎スキル、その名は【親友Lv1】。
 春樹の【剣術Lv1】というスキルに対し、ちょっとこれはないだろうと聖は思わず頭を抱える。

(そもそも親友のレベルって何? 高いとか低いとかあるの? 誰が測定してるの?)

 そんな回答のない思考に聖がおちいっていると、何かを思いついたように春樹が声を上げた。

「そうだ、それってなんか詳細出ないか?」
「……詳細? どうやって?」
「なんかこう、クリックする感じ?」
「クリック? クリック……えーと、あ、できた」

 詳細だと思われるものを確認した聖は微妙な顔になったが、春樹から催促さいそくされたので教える。


【親友Lv1】
 あなたの経験値、私の経験値、仲良く半分に分けましょう。だって親友だもの。
 対象:春樹のみ


「……」
「……」
「よし、使ってみよう!」
「使うの!?」
「使うだろ。だってこれで、攻撃手段が謎な聖もレベル上げができるってことだろ?」

 あたり前のように言ってのける春樹に、聖は言葉に詰まる。
 確かに現状、聖には明確な攻撃手段がないし、それどころか職業だって非戦闘職である。しかも、春樹のように剣道を習っていたわけでもないのだ。
 どう考えてもこの先、春樹頼みになるだろうことは明白である。

「や、でも、そうするとだいぶ春樹に負担かけることになっちゃうし、えーと」
「それは問題ない」

 申し訳なさそうにする聖に、春樹は笑う。春樹が本気で負担に感じることがないというのは、聖も理解している。
 けれど、理解はしているが、納得はできないということなのだろうと、春樹は聖の内心を見抜いていた。
 だから春樹は安心させるように、自信を持って告げる。

「それに大丈夫だ」
「えっと、何が?」
「たぶん、聖の攻撃手段はすぐに見つかる……ちょっと普通じゃないかもしれないけどな!」
「それ大丈夫じゃないよね!? 普通じゃないって何!?」

 どう考えても聖は不安しか感じなかった。だがしかし、春樹はさらに自信満々に言い切る。

「異世界テンプレ的に、聖は間違いなく主人公属性だ。絶対無双できる!」
「……いや、僕別に無双とかいらないし、できれば平穏へいおんな人生を送りたい気が……」
「無理だな」

 春樹は断言した。そこには微塵みじん躊躇ためらいはない。

「……無理なんだ」
「そうだ。だからとりあえずスキルを使ってみよう!」

 さあ! と促された聖は、もうどうにでもなれ精神でスキルを発動させる。
 すると脳内に謎のアナウンスが流れた。

《スキル【親友Lv1】が適用されました》

 なんだこれ、と思いつつも、何かを心待ちにしている様子の春樹を見る聖。

「ええと、使ってみたけど……」
「んー? 特になんの変化もないな。やっぱ経験値だから魔物倒してみないとダメか。よっし、明日に期待だな!」
「そうだね、明日……なんかすっごく眠くなってきた」
「……寝るか、今日は疲れたしな」

 いつもよりだいぶ早い就寝時間だったが、自覚した途端とたん襲ってきた眠気には逆らえない。
 二人はそのままぱたりとベッドへと倒れ込む。

「おやすみー」
「おう、おやすみー」

 そうして、目を閉じると、数分と持たずにすぐさま夢の世界へと旅立つのだった。


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