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1巻

1-2

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「さて、そっちの兄ちゃんは何か聞きたいことがありそうだな?」
「なんで俺たちがその『落ち人』だってわかった?」

 多少は挙動不審だっただろうが、それほどおかしな行動はとっていないはずであり、春樹としては純粋に疑問だった。
 だからこその問いだったのだが、それに返ってきたのは、なんとも言えない苦笑だった。

「それか……下でスライムは弱い魔物だって言ったんだろ?」
「まあ、そうだな」
「なぜか九割くらいの確率で、スライムは弱いって思ってるんだよなぁ、落ち人お前たち。ひょっとしたらお前たちの世界では弱いのかもしれんが、この世界では強い魔物だと認識されているんだ」
「いや、俺たちの世界にはいなかったんだが……強い? スライムって、こういうやつだよな?」

 そう言って、手で微妙な曲線を描く春樹。
 それは、絵を見せられたことのある聖も想像できるものであり、バルドも無言で頷く。

「……やっぱりスライムだよな……」

 微妙な表情で呟く春樹。

「……なんか、強力な攻撃手段を持ってるとか?」
「いや、攻撃手段は確認されてないな。というか、倒せない」
「は?」
「え?」

 バルドの答えに、春樹と聖は間の抜けた声を上げる。

「剣でろうが細切れにしようがその分だけ分裂するし、じゃあ毒薬でもと投げてみれば吸収する始末。それなら魔法でと思うだろ? 水魔法は気持ちよさげにしてるし、氷魔法は美味おいしそうに食べる。さらに火魔法で盛大に燃やした時なんざキレッキレのファイヤーダンスされたわ!」
「「…………」」

 どうやら過去に何かがあったようだ。吐き捨てるように叫ぶバルドに、聖と春樹は言葉がない。
 凄いなスライム、という感想だけである。
 さらに詳しく聞いてみたところ、今までありとあらゆる方法が試されたが、それは全て失敗に終わったらしい。
 一応、過去に数度だけ、奇跡的に討伐に成功したという記録はあるのだが、方法は不明。その時に採れた【スライムの皮】という素材は超高額で取引されたそうだ。

「……まあ、そんなわけでスライムは基本放置が常識だ。それこそ小さな子供でも知ってる、な」


 スライムは凄い、これ常識。
 スライムは凄くない、これ非常識。


 なるほど、と二人は頷いた。

「「よくわかりました」」

 そんな非常識なことを話していれば、この世界の人間じゃないと思われるのも当然である。

「よし、じゃあ本題に入る。ここに来たってことは、冒険者登録をするってことでいいんだよな? いろいろ聞きたいことはあるだろうが、まずは職業判定をするからこれに触ってくれ」

 そう言ってバルドが二人の目の前に置いたのは、金色の座布団ざぶとんった、顔の大きさくらいある透明とうめい水晶玉すいしょうだま。占い師が持っていそうなアレである。
 バルドの説明によると、これは一般的に宝玉ほうぎょくと呼ばれるものの一種で、名前・職業・レベル・称号を調べることができるそうだ。
 職業とか称号ってなんだろうと首をかしげてしまった聖は、期待に満ちあふれたキラキラした瞳で宝玉を見ている春樹に気が付いて、思わず苦笑する。

「春樹からやってみなよ」
「いいのか? じゃあ、遠慮えんりょなく!」

 ウキウキとした雰囲気を隠さず宝玉に手を置く春樹。
 すると次の瞬間、何もない空間に文字が映し出された。


 名 前:ハルキ・サトウ
 職 業:守護者しゅごしゃ
 レベル:1
 称 号:なし


 そんな不思議現象に二人が思わず見入っていると、バルドが感心したような声を上げた。

「ほう、守護者か。これは凄いな、滅多にない職業だ」
「強いのか?」

 興味津々に春樹が尋ねると、バルドは頷く。

「ああ。戦いのエキスパートになれる可能性のある職業だ。ひょっとして、元いた世界では剣や魔法の手ほどきを受けていたのか?」
「いや、それはないが……」

 剣や魔法なんてあるわけがない。
 どうやらあちらの世界のことはそれほど伝わっていないらしいと、二人は判断した。

「剣道という、剣術のようなものは習っていたけど……何か関係あるのか?」
「ああ、なるほどな。この世界では、十歳になると神殿で職業判定を行う。親の職業やそれまでの生活から確定されるんだが、落ち人の場合、どうやら元いた世界での生活が反映されるらしいんだよ」
「へぇ」
「そうなんですか」

 この世界では職業というのはとても重要なもので、それによって人生が決められると言っても過言ではない。なぜならば、スキルという技能の覚えやすさが職業によって段違いだからである。
 たとえば、剣士が剣術を覚えるのに必要な日数が一日だとすると、音楽家が剣術を覚えるには一年かかる。かなり突飛な例ではあるが、それぐらい差が出てしまうらしい。
 ちなみに職業を変えるのは不可能とのこと。なんともシビアな世界であった。

「ハルキの『守護者』は冒険者としてはうってつけだろう」
「よっしゃ!」
「じゃあ次はお前だな、手を」
「あ、はい」

 喜ぶ春樹を横目に、聖も言われた通り宝玉に手を乗せる。すると、先ほどと同じように空間に文字が映し出された。


 名 前:ヒジリ・ニッタ
 職 業:主夫しゅふ
 レベル:1
 称 号:なし


「……これは、また」

 思わず言葉に詰まり、困ったような表情でうなるバルド。だが、なんとなく予想はしていた聖と、事情を知っている春樹にとっては、納得の結果であった。

「まあ……」
「だよな……」

 聖の人生は、十歳を境にものすごく変化した。
 もちろん両親を同時に亡くしたというのも要因ではあるのだが、それだけではない。
 原因は、姉が災害級の家事音痴かじおんちだったことにある。
 料理をするとなれば、食べられる食材しか使っていないはずなのに、食べちゃいけない感満載まんさいなものが出来上がり、食材を切ろうとすれば手を切りまな板を切る。冷凍食品を温めるだけでもなぜかレンジが爆発する始末。
 掃除をするとなれば、スイッチを入れただけで掃除機を破壊するという意味のわからない現象が起こり、窓をけばバケツの水をぶちまける。洗い物をすれば皿を割りまくり、洗濯せんたくをしようものなら部屋中が泡まみれになる。さらにゴミ捨てをしようとすれば、もはやお約束のようにすっころんでゴミまみれ。
 そんな姉が唯一できたのは、お風呂ふろかすためにスイッチを押すことだけであった。
 家事万能な旦那だんなさんを見つけてくれて本当によかったと、聖は涙し、春樹は拍手した。
 そんな事情から、自分がやらないと生きていけないと十歳にしてさとってしまった聖は、全ての家事を死に物狂いで習得し、今では主夫としてプロ級の腕前である。
 なので、その職業を見た感想としては「やっぱり」の一言に尽きた。

「主夫、か。……まあ、料理や生活魔法、場合によっては礼儀作法なんかも覚えられるし、働き口には困らない、レアと言えばレアな職業ではあるんだが……」

 やや言いづらそうにまゆを寄せるバルドに、聖は頷き、口を開く。

「冒険者向きの職業じゃないってことですよね?」

 つまり、戦うための職業ではないということである。
 主夫はある意味で日々戦いであると聖は思っているが、この世界での冒険者という意味で考えると、流石に違うだろうことは理解できた。
 特に春樹の守護者の説明を聞いた後なので、その差は歴然としている。
 しかしバルドが難しい顔をしているのは、それが理由ではなかった。

「ああ、戦闘職じゃない……よって、冒険者にはなれん」
「「え!?」」

 予想だにしない言葉に、思わず声を上げる聖と春樹。
 その様子を見ながらバルドは、どこか遠くを見るような目をして言った。

「一昔前に、冒険者ギルドの暗黒期とも呼べる時代があってな……」

 ――それは今からおよそ百年ほど前、未盗掘みとうくつのダンジョンが町の近くで多数発見されたことから始まった。
 それまでは森や山の中など、魔物に対抗できる手段がなければ行けない場所に存在したものが、ちょっと散歩してくると気軽に行けてしまえる距離で発見されたのは、はたして幸か不幸か。
 ダンジョンの一、二階層には、基本的に低レベルの魔物しか出ず、それは戦闘職ではない職業でも、数人集まれば倒せる程度のものであった。
 魔物を倒して得られるドロップ品はちょっとしたお小遣い稼ぎになり、運よくレアなものが出れば一財産になることもある。
 そういう意味では、確かに幸運だったのだろう。
 賃金の低いところで働くより、ダンジョンで稼げ――
 誰もがそんな風に思うようになったのは、当然の結果だった。
 老いも若きも男も女も、誰もがダンジョンへともぐる、一攫千金いっかくせんきんブームの到来である。
 低層で稼ぐだけならば、それもよかったのだろう。だが、人の欲には際限がない。
 ここでこれだけのものが出るのなら、先に進んだらもっといいものがあるのではないか。少しだけ進むなら問題ないんじゃないか。
 そうして、魔物への恐怖より欲が勝ってしまった結果、ダンジョン内での死亡、負傷者が増加した。
 そのため各地の有力者たちが話し合い、制限をかけることにしたのだと、バルドは説明した。

「出入り自由だったダンジョンを冒険者ギルド預かりとし、冒険者しか入れないように規制した。そして、その冒険者になれるものは戦闘職だけとした……だからヒジリは冒険者にはなれん」
「じゃあしか――」

 じゃあ仕方ないかと聖が言いかけたところで、春樹が声を上げた。

「そんな! なんか方法ないのかよ!?」
「いや、春樹。僕、別に冒険者にならなくてもい――」
「何言ってんだよ聖! 異世界と言えば冒険者、冒険者と言えばダンジョンだろ!?」

 当事者であり、仕方がないと思っている聖よりも、なぜか心底必死な春樹。
 それはオタクのオタクたる所以ゆえんのオタク脳からくるものなのだが、生憎あいにくオタクではない聖にはわからない。
 たぶんわからなくてもいいことだろうと、必死につのっている春樹を見つつ思う聖。

「ごめん、言ってる意味がちょっと」
「っ! なんてことだ……」

 目を逸らす聖、苦悩する春樹。
 そして、それを見ながら笑いをこらえようとして失敗するバルドという、カオスな空間が出来上がった。

「っひ、一つ質問なんだが、い、いいか?」

 なんとか笑いを押し殺そうとしているが、いまいち成功していないバルドに、聖と春樹は頷く。

「とりあえず、ヒジリとハルキは今後、一緒に行動するってことでいいか?」
「はい」
「ああ」

 問われ、二人は迷うことなく頷く。
 こんなよくわからない世界で一人で行動する勇気は、聖にも、そしてオタク脳の春樹にももちろんなかった。よって即答である。
 なるほど、とどこか安心したように息をついたバルドは、にっと笑った。

「じゃあ問題ないな」
「何がですか?」

 不思議そうに聖が問いかける。

「冒険者は戦闘職の集まりだからってのもあるが、基本的にそれ以外のことには無頓着むとんちゃくでな、特に男は。だからそれを補うためにお付きってのがいる。簡単に言うと、料理をしたり荷物を持ったりする非戦闘職のことだな。もちろんダンジョンにも入れる」
「……でも、それだったら規制の意味ないですよね? 冒険者がいればダンジョンに入れるって、昔のようになったりしません?」
「と、思うだろ? だが、お付きは冒険者と同じ扱いだが、正式には冒険者じゃない。冒険者にはランクってのがあるんだが、ダンジョンもそのランクで規制されている。もちろんお付きにもランクがあって、どれだけランクの高い冒険者が一緒でも、目的のダンジョンより一つ以上低いランクのお付きは入れないようになっている。ま、お付きってのは、非戦闘職でも戦闘スキルがある程度使える奴がなるものだな」
「なるほ……え?」

 頷きかけて、聖は何かがひっかかった。
 脳内で再度バルドの言葉を思い返し、そして気づく。

「……あの、主夫に戦闘系のスキルってあるんでしょうか?」
「そうだな」

 力強く頷いたバルドは次の瞬間、視線を明後日の方角へと逸らした。

「…………まあ、たぶんな。落ち人だから……たぶん?」
(たぶんて言った! しかも疑問形!?)

 聖は思わず胸中で叫び、さらに耐えきれなくなって不安が口をついて出る。

「それでお付きになるの!? 不安しかないんだけど!?」
「大丈夫だ聖! 異世界なんだから!」

 すぐさま春樹が断言した。
 そして向けられたなんとも言えない良い笑顔に、聖は一瞬冷静になる。

「……根拠は?」
「外れ職業を与えられた主人公、でもそれはチートの始まりだった! ビバ、異世界ファンタジー!!」

 どうやら何かのスイッチが一斉に入ってしまったらしい。
 ヒャッホーイと叫んで、心がどこかへ行ってしまった親友を見て、聖は完全に落ち着いた。
 聖を冷静にさせよう――
 そう考えてねらってやったなら恐るべきことだが、それはないだろう。
 聖はぽかんとした様子でこちらを見ているバルドへと向き直る。

「とりあえずお付きでいいです。それって身分証はもらえますか?」
「あ、ああ。もらえるが……」

 バルドはどうやら春樹の様子が気になっているようだが、聖はバッサリと切り捨てる。

「春樹のことは気にしないでください、気にしたら負けです。勝手に落ち着きますから」
「そ、そうか」
「はい。冒険者って戦う以外の仕事もあるみたいですし、何より春樹が納得するならそれでいいです」

 少しに落ちない様子のバルドだったが、聖の言葉に頷く。

「わかった。じゃあちょっと待ってろ」
「はい」

 そう言って立ち上がると、棚から何かを取り出す。戻ってきたバルドの手には白い二枚のカードがあった。
 いつの間にか落ち着きを取り戻した春樹も興味津々な様子で見守る中、バルドはカードで宝玉をでる。
 すると、吸い込まれるようにして、何かがカードへと流れ込むのがわかった。

「よし、あとはこの上にちょっと血を垂らしてくれ」

 不思議現象に、目をぱちぱちさせる二人の前に、差し出されるカードとナイフ。
 なんでもないことのように言われたが、現代日本の男子高校生にはなかなかハードルの高い要求であった。
 暫し逡巡しゅんじゅんしたのち、二人は意を決してナイフを持つ。

「……まあ、包丁で切ったと思えば……」
「……異世界テンプレがんばれ俺」

 やや震える手で、それでもなんとか少しだけ指先を切って、出てきた血を先ほどのカードへと付ける。
 すると不思議なことに、血が吸い込まれるように消えた。

「これで冒険者登録は完了だ。なくしたら再発行に金貨一枚かかるから気を付けろよ……さて、あとはそれを持ってそこの壁を触ってくれ」
「そこ?」
「壁?」

 示された場所はどこをどう見ても、なんの変哲もない白い壁だった。部屋の中でやけに目を引いた、あの壁である。

「触れば大体の疑問は解消するはずだ。まあ、だまされたと思ってやってみろ」

 バルドの言葉の意味はわからないが、異世界的に何かがあるのかもしれない。ここまでの彼の様子から、危険はないのだろうと思った聖と春樹は、顔を見合わせて頷く。
 そして、壁に触れたその瞬間、二人の視界は光に覆われた。


「……行った、か」

 まばたき一つの間に二人が忽然こつぜんと姿を消したその場所を見つつ、バルドは呟く。

「先人の話を聞くのが一番、てね。しかし、これで二度目だが不思議なもんだな……」
「失礼します……あら? もう行かれたのですか?」

 入ってきたのは、先ほど聖たちを案内してきた受付嬢の一人だった。
 彼女に向き直り、バルドは苦笑する。

「ちょうど今、行ったところだ」
「では、間違いなく落ち人だったのですね」

 どこか嬉しそうな受付嬢。
 落ち人を装うやからまれにいて、このギルドにも来たことがあった。そのため彼らが本物だと知って安心したようだ。
 バルドとしても、壁の向こうへと行くのを見るまでは、一パーセントに満たないが疑念はあった。まあ、あれが演技だったら大俳優として世に名を残せるだろうとは思っていたが。

「ところで下の方はどうした?」
「少々うるさかったので黙らせました」

 ニコリと微笑ほほえむ金髪美人の受付嬢。
 気になるのは『黙らせた』という言葉だが、バルドはスルーした。
 なぜならばここは冒険者ギルド。ただ美人なだけの受付嬢がいるはずはない。
 バルドは何も気づいていないかのように、ねぎらいの言葉を口にする。

「そうか、ご苦労。ああ、それとを発注する必要があるんだが、誰かいるか?」
「そうですね……ではルーカスはどうでしょうか。ランクはBですし、そろそろ戻ると言っていました。人柄的にも適任では?」

 バルドは少しだけ思案するようにあごを撫でる。

「そうだな。……よし、では話を通しておいてくれ」
「わかりました。それではこれで」
「ああ」

 一人になった部屋で、肩を回す。
 落ち人たちが戻るまで、およそ一時間。
 それまでに残りの書類でも片付けるかと、バルドは仕事に戻るのだった。


 聖と春樹が目を開けると、そこは先ほどいた場所ではなかった。
 殺風景さっぷうけいな空間に、ぽつんと置かれた三人掛けのソファと、その正面の壁にかけられた大きながくのようなもの。
 ただそれだけが置かれた場所を見回して、二人は困惑した。

「なんだ、ここ?」
「さあ?」

 特に危険な感じもしないため、首を傾げつつなんとなくソファに腰掛ける。するとそれが合図だったのか、大きな額のようなものの内側に、何かが見え始めた。
 最初はぼんやりとしていたそれは、徐々に鮮明せんめいになり、しだいにはっきりとした形が映し出される。
 驚いて額を凝視する二人の前で、額の中に映し出されたのは、精悍せいかんな顔つきをした、黒目黒髪の三十代後半と思われる男の姿。
 一目で仕立てがよいとわかる服を身にまとった彼は、ばさりとマントを払い、こちらと対になるように置かれたソファへ、ゆったりと腰掛ける。

『だぁーっ、もうやってらんね。なんでこれ今日なんだよ、明日でいいだろー』

 しかし、その言葉が口から出てきた瞬間、今まであった威厳は見事に崩れ去った。台無しである。

『何言ってるのよ、そう言ってもう三日も先延ばししてるじゃない』

 答えたのはどこかあきれたような女の声。残念ながら姿は見えないが、男は不満を隠そうともせずそちらに向かってか、ぷらぷらと手を振る。

『それはそうなんだけどよ……昨日も寝てねぇんだよ、あのバカどものせいで』
『そのバカは後でなんとかしてあげるから、しゃんとしなさい』
『マジでか! よっしゃ、今日は寝てやる!』
『そうね、それともうってるわよ』
『……マジでか』

 暫し頭を抱えた男は、わざとらしく咳払せきばらいをしたかと思うと足を組み両手を広げ、言い放った。

『ようこそ異世界へ。俺の名はナナキ・アベ・サンドラス。サンドラス王国の初代国王、そして日本人だ』
『なに今更つくろってるのよ』

 そんな女性の声に、ナナキは眉を上げる。

『だぁーっ、もう台無しじゃねぇか!』
『最初からじゃない。いいから早く話しなさい』
『わかったよ、ったく。あー、これを見てる奴がどういう理由で異世界に来ちまったのかは知らないが、まずは簡潔かんけつに俺の事情を話す。俺はクソみたいな国にクソみたいな理由で召喚され、クソみたいな扱いをされた。そんで、なんやかんやあった結果、そのクソみたいな国は滅びて新しい国ができた。以上』

 簡潔すぎだった。
 聖と春樹は、思わずほおを引きつらせる。
 するとそこに、呆れたような女性の声が響く。


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