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106 もう少し考えるべきだった
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ぞわりと、一瞬だけ肌が泡立つような感覚あった。けれど恐れていたような具合の悪さはなく、木々の匂いを感じて目を開ける。
「……はい?」
「……マジか」
そして、予想よりも遥かにすごい光景に言葉を失った。
見下ろすそこにあったのは、とにかく大きな木々。というか、たぶん葉っぱ。何せ人が寝転んでも余裕があるほど大きく、その葉につながる枝や幹はもう何かよくわからないぐらい、とにかく太い。
「本当に巨大樹、なんだな……」
「うん、とりあえず下に降りてみる?」
「そうだな……」
いつまでも空の上にいてもどうしようもないので、地上に降りてみる。
そして、再度沈黙。
「これ、普通の雑草っていうか、草だよね?」
「そうだな、俺たちの背より高いけどな……」
そう、目の前にそびえ立つ草。そして花。
確かに小人の気分が味わえると聞いていたし、面白そうだなと思ったことは認めよう。
だがしかし。
「……ねえ、どうしよっか」
「……どうしたらいいんだろうな……」
あまりの事態に途方に暮れた。
何かを探すにしても、どうやって探したらいいのか見当もつかない。
「あ、そういえばロティス。なんか変な匂いがどうのって言ってたけど今もするの? ……て、ロティス?」
話しかけるが返答がない。
ちょっと首を傾げてポケットからロティスを出すと、何故か目から下が布で覆われていた。どうやって布を付けているのかなんて聞かない。ロティスだから。
「えっと、どうしたの?」
「俺様、この匂いはダメだ。頭がくらくらするっ」
「……スライムだけがわかる匂いなのか? 特にしないけどな」
「うん、僕も」
「……なんて羨ましいっ、俺様無理!」
そう言い捨て、そのまま聖のポケットへと戻った。
思わず顔を見合わせるが、よくわからない。だが、特にここから出たいとは言わないので、単純に匂いが受け付けないだけなのだろう。
ポケットの上からロティスを軽くポンポンと叩いて、本当に無理そうなら言うようにと声をかけ、そして進むことにする。
とりあえず、適当に。
「あー、やっぱダメだな」
「何が?」
「いや、鑑定。どれみても『不明』だ」
「ほんとだ」
春樹の言葉に一応確認してみると、確かにその通りだった。まあ、正確に言うと、『たぶん草だけど不明』とか『~とかの花だったらいいなと思うけど不明』とかではあるが、わからないことにはかわりない。
そして、歩いて分かったのだが、進んでいる気が全くしない。
というか、地面にも岩じゃないかというようなたぶん石や、これ山じゃないかと言わんばかりの傾斜があったりするのだ。
ものすごく大変だった。
それでも何とか進んでいると、なにやら地響きのようなものが聞こえてきた。
「なんだ?」
「なんか音がする?」
立ち止まり、辺りをきょろきょろと見渡す。
しかもその地響きはどんどんこちらに近づいてきているような気がして、思わず身構える。
だが、その正体が見えた、と思った次の瞬間には目の前を通過して行った。
「「…………」」
見てしまった。
見えてしまった。
完全に固まったまま、首だけ動かしてお互いを見る。
その表情からは血の気が引いていた。
「……いまのって、さ」
「……ああ」
「………だんご」
「………むし、だったな」
どうやら間違っていなかったらしい。
見間違いであってほしかったのだが、見間違いではなかった。
「おかしくない!? 大きさ!」
「いや、確かにそれは想定すべきことだったかもしれないけどな!」
「したくないよね!?」
「ていうかここにきて虫とかないだろ!!」
目の前を通って行った、どう見てもだんごなむし。その大きさは2人の身長よりも遥かに高かった。というか大きかった。
ここにきて2人はようやく、この森の真の恐ろしさに気付いた。
「は、春樹! いったん上に行こう!」
「そうだな! それから考えよう!」
心は1つ。巨大な虫とか無理。
別に普段なら虫の一匹や二匹、どうということもない。
だが、あのサイズで来られると生理的に無理だということが判明した。
なぜって、見えてしまうから、いろいろと詳細に。
そのまま猛スピードで空の上へと上がり、無駄に乱れた息をなんとか整える。
「ゆ、油断したな」
「そ、そうだね」
土偶がそっと差し出してくれた飲み物をありがたくいただき、一息つく。
ちなみにこの土偶。普段は聖のアイテムボックスの中にいつの間にか作られた【小間使いの部屋】というところにおり、聖が望んだ時などに勝手に出てくるようになっていたりする。
そんな土偶は、聖と春樹が飲み物を受け取ったのを確認すると、一礼して姿を消した。
なんというか、とにかくすごい土偶である。
「……本当に気が利くよな、この土偶」
「うん、すごく便利」
「1体以上って、作れないのか?」
「んー、枠は1つって書いてるけど……あ、作れそうかな?」
どうやら作ることは出来るらしいので、何となく作ってみる。というか枠は1つなのに何故作れるのだろうか。
若干の疑問はあるが、問題なく2体目の土偶が出てきた。
「やっぱ土偶なんだな」
「なんでだろうね。……て、あれ?」
何故だか先ほど戻ったはずの1体が再び姿を現した。そして、なにやら土偶同士で身振り手振りで何かを相談? しているように見える。もちろん内容はわからない。
そうしているうちに、どうやら何かの話はついたらしい。
2体目の土偶がこちらに向き直り、深々と頭を下げたかと思うと、背を向けて何処かへと去って行った。
「「………」」
なぜだろう、ものすごい罪悪感を感じてならない。
それに追い打ちをかけるかのごとく、ロティスがポケットから顔だけ出して、呆れたように呟く。
「酷いことをしたもんだ。可哀相に」
「「………」」
何かがぐさりと刺さった。
枠が増えるまでは絶対に作らないようにしようと、心底思った。
罪悪感が半端ない。
「……ていうかロティス。お前、あいつらの言葉がわかるのか?」
「まあ、俺様だからな! 何となくわかるのさ!」
ロティスはすごかった。
今度からは何かあったらロティスに通訳を頼もう。
「……さて」
聖は頭を振って、意識を切り替える。
今の問題はこれからどうするか、である。
「正直、あんまり下には降りたくない」
「それは同意だな。あれ以外の何かが出てきたら嫌だしな」
「うん。トラウマになる自信あるよね!」
そんな自信など持ちたくないが、こればかりは恐らく確定事項であり、春樹も全力で頷く。
「とりあえず、このまま進んでみる?」
「そう、だな。しばらくこのまま飛んでみて、それから考えるか」
「了解」
別名、先送りとも言うが、どこからも突っ込みは入らないので問題はない。
畳を小さくし、辺りを見渡しながら進むことにする。
そうして気付いたのだが、すべてが樹木に覆われているわけではないらしく、ところどころに小山のようなものが見える。
「ん? なんか白い山みたいのがあるな」
「え? あ、ほんとだ。行ってみる?」
「ああ」
木々の間に見えた白い山。その周りに樹木はあるが、その上には何も見えない。
なんだろうと思いつつも、なにか巨大な恐怖の塊がいないとも限らないので、辺りを警戒しながらその上へと降りる。
「……大丈夫そう?」
「……ああ、特に何かがいそうな気配はないな」
そっと踏みしめたそこは、なにやら柔らかく、そして白く細い何かがそよそよと風に吹かれていた。
なんだこれ、と首を傾げる。
「……ねえ、なんで足の下が柔らかいのかな……」
「……つか、なんか生暖かいというかなんというか……」
その地面を両手で触り、さらに首を傾げる。
「なんか、これ知ってるような……?」
「ああ、なんか覚えがあるような……?」
何かを思い出しそうなのだが、あと少しのところでそれは出てこない。
だが、暫し地面を両手でわしゃわしゃしながら記憶をたどってると、突然それが頭に響いた。
『……モフるのか?』
「「……え?」」
「……はい?」
「……マジか」
そして、予想よりも遥かにすごい光景に言葉を失った。
見下ろすそこにあったのは、とにかく大きな木々。というか、たぶん葉っぱ。何せ人が寝転んでも余裕があるほど大きく、その葉につながる枝や幹はもう何かよくわからないぐらい、とにかく太い。
「本当に巨大樹、なんだな……」
「うん、とりあえず下に降りてみる?」
「そうだな……」
いつまでも空の上にいてもどうしようもないので、地上に降りてみる。
そして、再度沈黙。
「これ、普通の雑草っていうか、草だよね?」
「そうだな、俺たちの背より高いけどな……」
そう、目の前にそびえ立つ草。そして花。
確かに小人の気分が味わえると聞いていたし、面白そうだなと思ったことは認めよう。
だがしかし。
「……ねえ、どうしよっか」
「……どうしたらいいんだろうな……」
あまりの事態に途方に暮れた。
何かを探すにしても、どうやって探したらいいのか見当もつかない。
「あ、そういえばロティス。なんか変な匂いがどうのって言ってたけど今もするの? ……て、ロティス?」
話しかけるが返答がない。
ちょっと首を傾げてポケットからロティスを出すと、何故か目から下が布で覆われていた。どうやって布を付けているのかなんて聞かない。ロティスだから。
「えっと、どうしたの?」
「俺様、この匂いはダメだ。頭がくらくらするっ」
「……スライムだけがわかる匂いなのか? 特にしないけどな」
「うん、僕も」
「……なんて羨ましいっ、俺様無理!」
そう言い捨て、そのまま聖のポケットへと戻った。
思わず顔を見合わせるが、よくわからない。だが、特にここから出たいとは言わないので、単純に匂いが受け付けないだけなのだろう。
ポケットの上からロティスを軽くポンポンと叩いて、本当に無理そうなら言うようにと声をかけ、そして進むことにする。
とりあえず、適当に。
「あー、やっぱダメだな」
「何が?」
「いや、鑑定。どれみても『不明』だ」
「ほんとだ」
春樹の言葉に一応確認してみると、確かにその通りだった。まあ、正確に言うと、『たぶん草だけど不明』とか『~とかの花だったらいいなと思うけど不明』とかではあるが、わからないことにはかわりない。
そして、歩いて分かったのだが、進んでいる気が全くしない。
というか、地面にも岩じゃないかというようなたぶん石や、これ山じゃないかと言わんばかりの傾斜があったりするのだ。
ものすごく大変だった。
それでも何とか進んでいると、なにやら地響きのようなものが聞こえてきた。
「なんだ?」
「なんか音がする?」
立ち止まり、辺りをきょろきょろと見渡す。
しかもその地響きはどんどんこちらに近づいてきているような気がして、思わず身構える。
だが、その正体が見えた、と思った次の瞬間には目の前を通過して行った。
「「…………」」
見てしまった。
見えてしまった。
完全に固まったまま、首だけ動かしてお互いを見る。
その表情からは血の気が引いていた。
「……いまのって、さ」
「……ああ」
「………だんご」
「………むし、だったな」
どうやら間違っていなかったらしい。
見間違いであってほしかったのだが、見間違いではなかった。
「おかしくない!? 大きさ!」
「いや、確かにそれは想定すべきことだったかもしれないけどな!」
「したくないよね!?」
「ていうかここにきて虫とかないだろ!!」
目の前を通って行った、どう見てもだんごなむし。その大きさは2人の身長よりも遥かに高かった。というか大きかった。
ここにきて2人はようやく、この森の真の恐ろしさに気付いた。
「は、春樹! いったん上に行こう!」
「そうだな! それから考えよう!」
心は1つ。巨大な虫とか無理。
別に普段なら虫の一匹や二匹、どうということもない。
だが、あのサイズで来られると生理的に無理だということが判明した。
なぜって、見えてしまうから、いろいろと詳細に。
そのまま猛スピードで空の上へと上がり、無駄に乱れた息をなんとか整える。
「ゆ、油断したな」
「そ、そうだね」
土偶がそっと差し出してくれた飲み物をありがたくいただき、一息つく。
ちなみにこの土偶。普段は聖のアイテムボックスの中にいつの間にか作られた【小間使いの部屋】というところにおり、聖が望んだ時などに勝手に出てくるようになっていたりする。
そんな土偶は、聖と春樹が飲み物を受け取ったのを確認すると、一礼して姿を消した。
なんというか、とにかくすごい土偶である。
「……本当に気が利くよな、この土偶」
「うん、すごく便利」
「1体以上って、作れないのか?」
「んー、枠は1つって書いてるけど……あ、作れそうかな?」
どうやら作ることは出来るらしいので、何となく作ってみる。というか枠は1つなのに何故作れるのだろうか。
若干の疑問はあるが、問題なく2体目の土偶が出てきた。
「やっぱ土偶なんだな」
「なんでだろうね。……て、あれ?」
何故だか先ほど戻ったはずの1体が再び姿を現した。そして、なにやら土偶同士で身振り手振りで何かを相談? しているように見える。もちろん内容はわからない。
そうしているうちに、どうやら何かの話はついたらしい。
2体目の土偶がこちらに向き直り、深々と頭を下げたかと思うと、背を向けて何処かへと去って行った。
「「………」」
なぜだろう、ものすごい罪悪感を感じてならない。
それに追い打ちをかけるかのごとく、ロティスがポケットから顔だけ出して、呆れたように呟く。
「酷いことをしたもんだ。可哀相に」
「「………」」
何かがぐさりと刺さった。
枠が増えるまでは絶対に作らないようにしようと、心底思った。
罪悪感が半端ない。
「……ていうかロティス。お前、あいつらの言葉がわかるのか?」
「まあ、俺様だからな! 何となくわかるのさ!」
ロティスはすごかった。
今度からは何かあったらロティスに通訳を頼もう。
「……さて」
聖は頭を振って、意識を切り替える。
今の問題はこれからどうするか、である。
「正直、あんまり下には降りたくない」
「それは同意だな。あれ以外の何かが出てきたら嫌だしな」
「うん。トラウマになる自信あるよね!」
そんな自信など持ちたくないが、こればかりは恐らく確定事項であり、春樹も全力で頷く。
「とりあえず、このまま進んでみる?」
「そう、だな。しばらくこのまま飛んでみて、それから考えるか」
「了解」
別名、先送りとも言うが、どこからも突っ込みは入らないので問題はない。
畳を小さくし、辺りを見渡しながら進むことにする。
そうして気付いたのだが、すべてが樹木に覆われているわけではないらしく、ところどころに小山のようなものが見える。
「ん? なんか白い山みたいのがあるな」
「え? あ、ほんとだ。行ってみる?」
「ああ」
木々の間に見えた白い山。その周りに樹木はあるが、その上には何も見えない。
なんだろうと思いつつも、なにか巨大な恐怖の塊がいないとも限らないので、辺りを警戒しながらその上へと降りる。
「……大丈夫そう?」
「……ああ、特に何かがいそうな気配はないな」
そっと踏みしめたそこは、なにやら柔らかく、そして白く細い何かがそよそよと風に吹かれていた。
なんだこれ、と首を傾げる。
「……ねえ、なんで足の下が柔らかいのかな……」
「……つか、なんか生暖かいというかなんというか……」
その地面を両手で触り、さらに首を傾げる。
「なんか、これ知ってるような……?」
「ああ、なんか覚えがあるような……?」
何かを思い出しそうなのだが、あと少しのところでそれは出てこない。
だが、暫し地面を両手でわしゃわしゃしながら記憶をたどってると、突然それが頭に響いた。
『……モフるのか?』
「「……え?」」
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