よくある話で恐縮ですが

Q.➽

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34 このたび番になりまして。(※R18描写あり)

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蓮巳の愛撫はとても優しい。
俺の体をまるで砂糖菓子か何かのように思ってるのか、繊細な舌使いで丁寧に舐め回す。
顔だけじゃなく、首筋や鎖骨、脇や脇腹、乳首、臍…それこそ手や足の指に至る迄。

自分の方が全身芸術品みたいな癖して、俺なんかを綺麗だ綺麗だと言いながらそれをするから、蓮巳って人間はよっぽどの変人だ。
でもそんだけ趣味が悪くて変だから俺を見つけてくれたんだと思えば、その悪趣味な性癖に感謝しなきゃな、と思うけれど。


太腿の付け根のへこみ…鼠径部を舌でなぞられると堪らない気分になる。
堪え性のない俺のペニスからは、触れられていなくてもダラダラと先走りだか精液だかが流れ出して下生えをぐっしょり濡らしている。何ならその下の会陰を伝ってそろそろ後孔にも届いていそう。
蓮巳といると、淡白だと思っていた自分自身がとんだ淫乱だった事に気付かされる。

不意に熱い手のひらに尻の肉を押し開かれて、俺の秘部は露わにされた。
吐息がかかる程の距離でそこを曝されているのに、恥ずかしいより舐めて欲しいと思う日が来るとは。


「ん、ンんッ…ふ…」

くちゅくちゅと卑猥な音は、蓮巳の綺麗な形良い唇から出ている音だ。蓮巳は毎回、俺のアナルを周到に拡げて準備する。
万が一にも、ほんの僅かにでも苦痛を与えたくないという、何ともジェントルマンな心遣いだ。
気持ちは良い、でも今はその優しい心遣いがもどかしい。

早く中に欲しいのに。
少しくらい雑でも良いから、その大きな肉棒を突っ込んで掻き回して欲しいのに。

舌は柔らかすぎて、指は足りな過ぎる。

「ゆび、は…さっき、慣らしたじゃん…。」

俺は耐えられなくなって抗議した。

「だから、はやくいれたら、いいじゃん…。」

こんな風に蓮巳のペニスを強請っている俺は、どんな顔してるんだろう。


「…馬鹿だね。挿入れちゃったら、そっからが長いのが発情期、なのに…。」

蓮巳はそう言いながら、身を乗り出してきて俺の頬をするりと撫でた。
そして俺をうつ伏せにさせて、背骨や肩甲骨に唇を押し当ててくる。
蓮巳の屹立し切ったペニスが尻肉を叩く。


「…ああああああ!!」

肉を割って押し入ってくる、待ち焦がれていた熱、質量。
じわじわと侵食される、俺の内側。
αの生殖器は長く、太く、重量感が半端ない。
いつ見ても、どうあってもΩを孕ませてやるぞ、という意気込みに溢れている。
いや冗談じゃなくてマジな話。
しかも1回挿入したら、中で射精した種を一滴たりとも漏らすのを許さないぞ、とでも言うように隙間を許さない仕様。
ヒート時中出しは的中率100%だと教わった時は気が遠くなった。実際にそれだとΩの体が保たないと思ったからだ。
只でさえ体が弱く短命だと言われるΩが妊娠し続ける事は、更に命を縮める事になる。だから番のΩをこよなく愛するα達は、昔からΩ達の命を少しでも延ばす努力をしてきた。
その結果が、現在のα専用避妊具であり、専用避妊薬である。
それらは日進月歩で進化していて、多くの番カップルや、場合によっては犯罪被害者となったΩ達がその恩恵に与っているのだ。
ありがとう製造メーカー。
ありがとう製薬会社。


勿論、俺と蓮巳もその恩恵を存分に受けるつもりだ。


俺の奥に届く程、推し進めた蓮巳は、暫く馴染むのを待った後、ゆっくりと抜き差しを始めた。
結合部からは濡れた音。
俺の中から分泌された潤滑の為の液体が蓮巳のペニスに絡み付き、逃がしたくないと駄々を捏ねている音だ。

「あぁ…どんなに拡げても狭くて…気持ち良い、ね…。」

蓮巳は息を詰めて色っぽく呟くが、ごめん。違うと思う。
俺の尻孔が特別狭いんじゃない。蓮巳のが特別デカいんだよ…。
しかしそれを言ってしまうと蓮巳が気を使ってしまうので、俺は口を噤むのだが。


だけど、今日の蓮巳は何時ものセックスの時よりも一段と気持ち良さそうだ。
ヒートで体が蕩けるのはΩだけじゃないんだな。よかった。
俺のナカは存外に心地良いらしくて。




パンッ、と肉のぶつかる音が薄暗い部屋中に響いている。
カーテンが閉まっているから間接照明は点けてるけど、あれから何時間経ったんだろう。
挿入れっぱなしでどれくらい?
さっきうなじを噛まれて絶頂してから気を失って、気がついたら歯を立てられた箇所の血は止まっていて、咬痕も刻まれて、既に番は成立していた。
それで治まるのかなと思っていたら、欲情は余計に強くなった。

足りない。全然足りない。
もっと欲しい、もっとぐちょぐちょに溶け合いたい、混ざり合いたい。

そんな欲が。

密着する肌と肌、粘膜の擦れ合う快感、絡め合った指の愛しさ、交わす視線の熱さ、蓮巳の種を受け続ける腹の奥の切なさ。


「…樹生…僕には、君だけ。永遠に、君だけ…。」


譫言のようにそう言いながら腰を打ち付けてくる蓮巳の姿は、凄艶な迄に美しかった。






獣のように、と言って良いのか。
狂ったように3日間もセックスを続けたのは初めてで、俺の腰は全く立たなくなった。
数日余計に休みを取っていたものの、休み明け迄に体の調子が戻るものか不安になってくる。
前回疑似ヒートを起こした時どころではない。痛いと言うより感覚が無い。

俺をこんな要介護状態にした蓮巳は逆にツヤツヤ元気いっぱいなのが不思議だ。
体の負担は俺の方にかかってるとは言え、運動量は圧倒的に蓮巳の方が多かった筈なのにな?
基礎体力の差以前に、体の作りが違うのか。
αってやつは本当に…。

甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる蓮巳を眺めながら、少し恨めしい気分になった。

「あと2日は絶対安静だからね。」

そう言いながら、ベッドの上に寝ている俺の口に、ペットボトルのスポーツドリンクに挿したストローを咥えさせる蓮巳はとてもイキイキとしていた。

まさかこれから毎回こうなるんじゃないだろうな…という不安は、この先現実のものになるのだった。



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