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15 擬似ヒート (※R18描写あり)
しおりを挟むきもちいい、なあ…
キスが気持ち良いのは知ってる。
でも、こんなに、キスだけで達してしまいそうな程、張り詰めた事なんて無い。
今俺のペニスは窮屈な下着と服の中で解放を求めて、文字通り泣いている筈だ。
先端の窪みから滲み出た液体で、薄い布地を濡らして。
「…おっきくなってるね。
樹生、僕のキスで欲情してくれてる。」
蓮巳の片手がゆっくりと俺の下肢の膨らみを撫でて、あ、と声が漏れる。
未だキスしかされてないのに触れられた所がじんじんするって、何だよ…。
まるで俺に堪え性が無いみたいじゃないか。
そんな事を考えている間に、ベルトを抜かれて黒のデニムパンツの前が開けられてしまった。薄い下着越しに蓮巳の指に屹立したモノをなぞられる。触れるか触れないかのもどかしさに身悶えする俺。
もっと蓮巳の指が欲しい。
もっと蓮巳の体温が欲しい。
もっと蓮巳から快感が欲しい。
体が更なる刺激を求めている。だから浅ましくよがりながら男を誘う媚態を作ろうとする。
俺の中のΩがむくむくと頭をもたげて、とうとうその言葉を口にした。
「…抱いて…。」
蓮巳は一瞬で目を光らせて、蕩けた俺を抱え上げた。
それからずんずん歩いて別の部屋の扉を開ける。
そこは薄暗い間接照明だけが灯る、大きなベッドのある寝室だった。
俺はそのベッドに掛かる柔らかな羽根布団の上にそっと寝かされ、それに体が沈み込む感覚にすら感じた。
俺は完全に発情していた。
抑制剤は今朝も服用した。
ヒートはもう少し先の筈。
だからこれは恐らく擬似ヒート。
相性の良い相手とは起こる事があるらしい。
本能や遺伝子が求める結果なのかもしれないが、その割りには通常ヒートと違って妊娠率は激低い。
番になってもおかしくないような相手をキープする為に起こる現象。
多分、これの最たるものが、"運命の番"というものなんじゃないだろうか。
それで言うと、俺と蓮巳は"運命"に近いのかもしれないな。
あんな優しい、穏やかなキスひとつで擬似ヒートを起こせるんだから。
雨宮の時は、こうではなかった。
初っ端からあらゆる刺激を与えられて、昂るべくして昂らされた。何時も、何時も。
その時は雨宮を好きだったから、それが普通なんだと思っていた。
強引に求められるのも、身勝手に思えるような抱き方をされるのも、それに応えるのも愛なんだと自分を納得させていた。
こんな風に 労るような、慈しむような、壊れ物を扱うような繊細な愛撫で愛された事は、無かった。
キスをしながらゆっくりと俺の服を1枚ずつ剥ぎ取った蓮巳は、徐々に唇をずらして俺の顎や薄く硬いネックガードに覆われた喉仏や首筋をなぞった。
鎖骨に柔らかく歯を立てられた時、蓮巳の髪が俺の唇に触れて擽った。
(…良い匂い…。)
シャンプーなのかトリートメントなのか、香料が微かに香る。それと同時に蓮巳からは、ある独特の甘い匂いが醸し出されていて、それが彼のαとしての匂いなんだとわかった。
さっき迄の、鼻先を擽る微かなものではなく、もっと遠慮の無い強い匂い。
αの匂いはΩの匂いに呼応するものだから、つまり俺は今、物凄い匂いを発してるという事だ。
蓮巳によって引き摺り出されてしまった、俺の淫らなΩが、早く蓮巳を欲しいと泣いている。
その後、蓮巳の柔らかな愛撫は俺の全身を洪水にした。
体中のあらゆる場所をこれだけ舐めしゃぶられた事なんて初めてだ。
もう蓮巳の匂いがしない所を見つけられない。
最初の射精は蓮巳の温かな口の中。俺は引き攣ったように鳴きながら達した。
俺の無為な子種は蓮巳の舌の上で白く躍り、ゆっくりと飲み下されて蓮巳の養分になった。
脱力してそれを見ていた俺が羞恥を感じる前に、蓮巳は再び股間に顔を埋めたかと思ったら、既にぐっしょり濡れた後孔に舌を這わせていた。
優しい癖にそれだけではない快楽の波は、絶え間無く押し寄せて来て、それは俺が音を上げて蓮巳に縋り付く迄続けられた。
「…ほしい…おねがい…いじわる、しないで…。」
後孔を舌で犯されながら、俺は懇願した。
「はすみが、ほしい…。」
「樹生、もっと欲しがって、僕の事。」
十分に濡れそぼったソコに、大きな熱い塊がやっと侵入してきて、期待に喉がヒクつく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
蓮巳も呼吸を荒くして、その額から流れた汗が顎に伝い、俺の体に滴り落ちた。
全て挿入しきったのか、蓮巳はふぅ、と息を吐いて、俺を見つめたまま動かなくなった。
馴染ませているのかと思っていた俺は、徐々にその勘違いに気づいて、悶えた。
「なんで…まだ、おっきく…」
挿入前の蓮巳のペニスはMAXの状態ではなく、蓮巳はそれが熟するのを待っていたらしかった。
「ごめんね、僕の、ちょっと大きめだけど…十分慣らしたから大丈夫だよね。」
自分の唇を舐めながら妖艶に微笑んだ蓮巳は、それでやっと律動を始めて、俺はそれから朝まで散々善がり鳴かされた。
「いたた…。」
「ご、ごめんね。初めてで無理させちゃって。」
昼頃に起きてから体中がギシギシしている事に気づいた。
ヒートは収まっていたから、やはりあれは擬似ヒートで間違いなかったんだろう。
それにしても久々だってのにいきなり無理をし過ぎた…。
反省しながらベッドにうつ伏せになっていると、蓮巳が申し訳なさそうに湿布を持って来て腰に貼ってくれた。
「気をつけてたつもりだったんだけど、ちょっと張り切り過ぎたよね。反省してる。」
蓮巳はしょんぼりと俺に謝罪をして来るが、俺は正直満足している。
確かにお互い歯止めが利かなかったからこの状態になってるけど、もしこの先番の通常ヒートで三日三晩ヤりまくるとなれば、きっともっと……と考えて、俺は赤面した。
今から蓮巳と番になった後の子作りセックスを想像するとか、気が早い。
とはいえ、今日は本当に危なかった。セックスの最中、頭の蕩けた俺は 何度も自分のネックガードを外そうかと思っていた。
蓮巳に噛まれたくて、仕方なかった。
初めて体を合わせただけでそんな軽い、と 欲望と理性がずっと葛藤していた。
それくらい、俺と蓮巳は相性が良かった。本当はもっと抱き合っていたいと思っている。
「樹生。」
湿布を貼られた俺の腰を労るように撫でていた蓮巳が俺を呼んだ。
「ん?」
俺は肩越しに蓮巳に振り返った。
「気にしなくて良いよ。
俺、Ωにしては頑丈だから直ぐ治るって。」
体力に自信があるのは本当だ。体だって筋力だって、βの友人達とそう変わらないくらいだし。
「それも心配と言えば心配だけど、それじゃなくてね。」
蓮巳は真剣な表情と声で言った。
「僕、もう樹生を誰にも取られたくない。
番になる事、真剣に考えてくれないかな。」
そう言われて、俺は少し頬が緩むのがわかった。
やっぱり蓮巳は、俺の考えてる事がわかるのかもしれない。
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