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禁忌 (※兄弟でのR18描写あり)
しおりを挟む冬弥が達した。
何度目かは、もうわからない。
熱く纏わりつく濡れた粘膜は純生のペニスを離すまいと蠕動しながら締め付けて、もっと子種を寄越せと貪欲に強請る。
後ろから兄を穿いている。
美しい肩甲骨の動きと筋肉のしなり。
汗に濡れた背中の皮膚の艶めきに劣情を誘われ、啜り泣くような喘ぎ声に耳を侵され、純生のペニスはまた冬弥の中で弾けた。
放出され、兄の中に流れ込んでいく自分の遺伝子達。
もうだいぶ長い事、こうしている。
時折、僅かに残されていた理性が囁いた。
不味いのではないか、と。
正常位で兄を突き上げていると、唇もまさぐられ、濃厚な舌
の絡み合いで酸欠を起こしそうになる。
唇同士でもこれは既にセックスだ。こんなにも隙間無く密に求められては、純生に逃げ場は無い。
挿入しているのは自分の方なのに、まるで犯されているようだと 純生は嬌声を上げ続ける冬弥を抱き締めた。
「…ごめんな…。」
数時間後、少し落ち着いたのか ベッドに横たわった冬弥がぽつんと呟いた。
「純生、お前…初めてだったんだろ?」
「えっ…」
図星を指され、ドキッとする。
やはり経験値の高い兄にはわかってしまうのか。
「ごめんな…初めてが、俺で…。
最低な初体験になっちゃったな…。
はーぁ…盛って身内を誘うとか…。自己嫌悪だわ。」
「…っ、そんな事無い!!」
これは落ち込む兄に気を使っての言葉ではなく、本心だ。
世の中にΩは探せばそれなりにいるだろうが、兄のような人はバース性を問わず、見つけられる筈がない。
唯一無二の存在なのだ。
憧れ続けた兄との交合は、純生にとっては最高だった。
血を分けた兄弟だからと諦めていた純生にとっては降って沸いた幸運。
それが例え、この一度きりではあっても。
禁忌を易々と越えさせて後悔すらさせない魅力が この兄にはある。
だが、この先他の人間と交わる事があっても、おそらく自分はその全ての人間を兄と比較してしまう。
その点は、不幸かもしれない。
「兄さん。」
冬弥の横に起き上がって純生は横たわってシーツだけを纏った兄を見下ろして言った。
「俺、こうなった事を後悔してないよ。」
「…純生?」
「俺は嬉しかった。今でも嬉しい。
俺はずっと兄さんに憧れてたし、好きだった。
気づいてたでしょ?」
クスッと苦笑しながら純生が言う。
冬弥はそんな笑い方をする純生の姿に意外さを感じながら半身を起こし腕を伸ばして純生の頬に触れた。
「…ごめんな。こんな兄貴で。」
知っていた。
幼い頃から純生が自分を見つめる瞳は、何時もきらきらと輝いていた。
純粋な憧れと、尊敬だけだった筈の眼差しに、熱っぽい何が含まれ出したのは何時の頃からだっただろうか。
首に、腕に、腰に、足に ねっとりと絡みつくような、何か。
気づかない振りをしてやるつもりだった。一生。
普通の、良い兄弟でいなければと思った。
純生は他のαとは違う。弟だ。
流石の冬弥も、肉親を遊び相手にするようなタブーは犯すつもりは無く、それ以前に性欲を抱ける訳が無かった。
自分がΩとしての発情に負ける訳が無いとの過信があった。
だって、自分はΩとしては不能だと思っていたからだ。
それ迄殆ど兆候が無かったのに、まさかこんなに本格的な発情が起きるなんて。
原因を考えれば、やはり浮かぶのは遊佐の顔。
最低だ、と思った。
認めなくてはならない。
冬弥は遊佐に向けて発情したのだ。
そして、行き場の無いその熱を、よりによって純生で…。
これがつまり、αを求めるΩの習性か、と頭痛がする思いだった。
Ωでありながら、何処か他のΩを見下す気持ちがあった。
発情期なんかに踊らされてみっともないと。
それは、Ωに惑わされるα達の事も、同じように。
その罰があたったのだと思う。
「良いんだ。兄さんの気持ちが他の人に向いてるのはわかってる。
俺、代わりにくらいはなれたのかな。」
「……悪かった。」
純生は、敏い。
冬弥はもう謝る事しか出来なかった。
(俺くらい最低なΩなんて他にはいない…。)
純生を母屋に帰した後、冬弥は自己嫌悪に次ぐ自己嫌悪に目を閉じた。
明日一番に病院に行かねばならないと、冬弥は陰鬱とした気持ちになった。
万が一にも、弟の子を孕む訳にはいかない。
家族の崩壊なんか、自分は望んでいない。
自分の愚かさに吐き気をもよおしながら、今凄く遊佐に会いたい、と思った。
今更合わせる顔なんか無いのに。
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