勇者様の攻略対象は勇者様

Q.➽

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よもやよもやだ

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 アスランが川に頭迄浸かって泡を流して復活した。
 目が血走ってて怖い。流石にやり過ぎたか。


「…すまん」

「いやマジでこれは無いぞ。痛てぇからな、かなりな。お前でなきゃ反射で首飛ばしてるからな」

「反射で」

 何だお前。怖。サイコパス?
もうそんな事やってんの?未だそんな闘いにも出てないのに?
あ、モンスターとかをって話か?ゴブリンとか。もしかしてお前が魔王ってオチはないよな?

 アスランは最早何の遠慮も無く俺の裸体を視姦するようになってしまったが、もう俺も諦めた。
 風呂だ風呂だ風呂だ。これは洗浄作業だ。

 しかし心頭を滅却してもアスランの血走った視線が一向に涼しくならないので、俺は意識を逸らす事を試みる事にした。

「…アスランってさあ、リアルでは何の仕事してるんだ?」

「仕事?」

 アスランは顎に手をやり、ン?と首を傾げた。

「仕事ってか…美容系の専門学校生だけど…」

「…専門学校生…?」

「うん、都内の」

「都内」

「実家は千葉」

「千葉」


 歳下。日本在住。千葉。

「…何時頃日本に?」

「生まれた時から。親父がイギリス出身で、日本留学中に母さんと学生結婚したんだって」

「…学生結婚…」

「それで親父、実家が厳しい家だったみたいで勘当されたらしくて、俺 いっぺんもイギリスとか行った事ない」

「……1度も…?」

「1度も」

「外国語、話せる?」

「…ううん?だから俺、ずっと日本語で話してるだろ?」

異世界ならでは翻訳変換アプリじゃなかった。
 いや、この世界の他の人物達はしらんが、少なくともアスランとは普通に日本語会話だった。

 俺はざばっと川から立ち上がり、素足で草を踏んでバスタオルを掛けてある木まで歩き、無言で体を拭いた。その後をアスランが追って来て、心配そうに声を掛けて来る。

「どうした?」

「…いや、ちょっと…自己嫌悪で…。
アスランは幾つだ?」

「?もうすぐ20歳」

「………そうか」

…歳下から搾取してしまった…。

 まさか、まさかこんな奴が歳下だなんて思わなかった…。同年代か少し上かと思ってたから結構辛辣に対応してしまったぞ。

…だってさ…、黒髪エキゾチックJAPANとか言うから(言ってない)、てっきり日本のアニメとかゲーム好きのオタク外国人かと…。(偏見)

 訳が分からない、というようにキョトンとする表情が、今は幼く見えてきた。
 俺は…20歳…いや未だ19の子にあんな冷たい態度を…。もしかしてあの数々のセクハラかと思っていた行為は、じゃれていただけなのかもしれない。
 マジに取って大人気なかったな…。
 うわ、若い子傷つけてたらどうしよう。ごめんな、シャンプーとかの金は返すからな。

 俺は猛省し、城迄の帰りは、アスランに出会ってこれ迄の遣り取りを思い出し、歳上として歳下の冗談やスキンシップを真に受けて恥ずかしい、穴があったら入りたい…と、尊敬するかのアニメのキャラクターのような事を考えていた。
 いきなり大人しくなった俺に、違和感を感じたのか、馬に乗っている間、アスランも静かなものだった。
 気を使わせてしまったな、と俺はまた反省した。

 しかしその晩、ニコニコしながら

「ホームシックなのか少し寂しいから一緒に寝てくれ」

と、アスランは部屋に来た。



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