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黒髪勇者、モテが始まってしまう。(暗雲)
しおりを挟む残念ながら、再び目覚めても俺は同じ世界にいた。
更に残念を上塗りしたのは、寝ていた俺の横に潜り込んで、ワイシャツ越しに乳首を吸っている男がいた事である。ガッデム。
よくも24年間守り通してきた処女乳首を。
起き上がって吸い付き犯の首根っこを掴んで顔を確認すると、淡いピンクの髪に見覚えのある顔。
先刻第1王子にひっついて腕絡ませてた神子じゃねーのかお前。
「いきなりのご移動、お疲れかと思って…」
「そう思われたなら余計に体力の消耗を誘うような行為は慎んでいただきたい」
「だって…心細いかと…」
「乳首吸われてそれが解消する訳ではないので。
寧ろ不安が倍増するので」
「あん!」
俺がそう言いながら神子を部屋のドアから蹴り出すと、変な声を出されてますます萎えた。
蹴り出した先に、驚いた顔の第1王子と第2王子、第3王子、そして知らん人。服装からしておつきの召使いだろうか。
「僕の魅了が無効化されるなんて…っ!
勇者の力はどれだけ強いの?!」
「…」
「魔王討伐の切り札であるアユの力が効かない…だと?!」
切り札なんか、ソレ。
「アユの力は狙った獲物は百発百中で落とす恐ろしいものなのに…!」
「流石は勇者様。
並大抵の小細工は通用しないのか…」
「……」
この世界の男共は乳首吸われたら落ちるんかい。
つーか、今小細工つったの誰?
やっぱスキルってより小細工だって思ってる奴もいるんじゃん。
俺は内心の辟易を隠さない表情で言った。
「あの…俺、今ちょっと疲れてるんで、頭も整理したいし。
申し訳ないですが静かに過ごしたいので今夜はこのまま休ませていただいてよろしいですか?」
マジでドッとつかれている。
それに神子の唾液で張り付いたシャツの布が不快だ。着替えたいから着るものだけでも頼むか、と思って目を上げると、何故かその場の全員が俺の乳首に釘付けになっていた。怖…。
「…流石は…勇者様…、生唾ものの宝玉をお持ちでいらっしゃる…」
「……」
「神子でなくともしゃぶりつきたくなる意外性のピンク色ですね」
「勇者殿はやはり処女…」
誰だ今処女とか言ったのは。第3か。第3王子か。
「えへ、勇者様の処女乳首ゲットぉ!」
神子に対する殺意がクール系ヲタクの名を欲しいままにしてきた俺の心を熱くする。お前は魔王討伐の最中に事故を装ってコロスからな。絶対にだ。
「あの、申し訳ないんですが、何か着替えを貸していただけませんかね」
布張り付きの透け感が悪戯にエロ心をくすぐる事を知る賢い俺は、潔くワイシャツを脱いで召使いに渡した。
「これくらいのサイズで。多少大きいぶんには構いませんから、部屋着とかゆったりしたのがありがたいです」
「は、はいっ!」
何故か顔を赤くしてシャツに顔を埋める召使い。
やめろ、一応未だ着るつもりなんだからな、それ。
そして再び気づく、更に熱を帯びた視線。
「あんなに赤く腫れ上がって…何といたいけな小さき乳首…」
「素晴らしい体だ…発達した胸筋腹筋に対する腰の締まり…」
「守ってあげたい…」
「……」
乳首に対するこだわりが面倒臭過ぎる。
女性という概念無きこの世界で最もありふれている筈の男の体に、何故そこ迄興奮出来るのか。
「稀有なる美貌にその類稀なる体躯。素晴らしい。
全てが成就した暁には是非、我が妃に…」
「兄上はズルい!兄上には神子どのがおられるではないか!」
「そうだそうだ!婚約してる癖に!」
「いえ、ロイ様とは婚約解消で良いので、勇者様、是非僕の旦那様に…!」
「私のご主人様に…!」
なんでだ。
思ってたんと違う。
勇者はそういうポジにはならんのとちゃうかったんかい。
服を脱いだら脱いだで詰め寄られるのは何故だ。そんな類稀なるイケメンに生まれた覚えはねえよ。
俺よりアンタらの方が世間的にはイケメンだろうが。
俺は心底疲れ果て、眉間を押さえた。
頼むから、まずは着替えからくれ。
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