番、募集中。

Q.➽

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淋しい

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 幼馴染みの彼が番を作った事を知ったその夜、俺はとある交流サイトのアプリをインストールした。

 未だ番を持たない‪α‬達が多数登録している、とされるサイトだ。
実際にはどんなものなのかはわからない。でも実際に、ここで繋がりカップルが成立した番もいるのはSNSでぼちぼち見かけた。
 中には 番がいながらも独り身と詐称して遊び相手を探している悪質なα‬もいるらしいから、見極めは大事かもしれない。
 でも中には真剣に相手を探している場合もあるからこそ、番成立という結果もあるんだろう。

 この時、俺は半ばやけっぱちだった。いや、やけっぱちな気持ちだけれど、求めていたのだ。
 こんな俺でも、良いと言ってくれる誰かがいないか。
 醜い火傷痕のある、なのに何も人より秀でる所もない、ちっぽけなゴミみたいな存在の俺。
 親にも友人達にも心配をかけて、面倒をかけて、予定されていた将来設計も無くなって、今ではもう、未来なんか想像も出来ない。
  そんな、何故生きているのかわからないような俺でも、拾ってくれるような誰か。
 長く同じ時を一緒に歩んだ幼馴染みですらも、見放す瑕疵物件。優しい彼ですら、見放した醜い俺を、どうか。
 そんな俺を、彼のように…いや、彼よりも優しく包んでくれたなら、俺は俺の持つ全てでその人を愛するのに。




 年齢とバース性を書き込めば、それなりにDMは届いた。
 全員に返事をしてみて、出来るだけ優しく返事をくれる人を選んで遣り取りを続けた。
 少し親しくなってくると、顔が知りたいと言われ、隠しもしていない自撮りを送るとそれからぱったり返事が来なくなる人もいた。
 仕方ない。そういう事も想定済みだ。
 顔画像を見ても会いたいという人も、当日になればやはり現れなかった。最初から冷やかしのつもりなのか、画像を見てやはりやめておこうと思い直したのかはわからない。
 顔画像を求めないまま、会ってみたいという人数人とそれぞれ待ち合わせしてみた。
 皆現れはしたが、俺がマスクをズラした途端、半数が急用を思い出した。半数は一緒にカフェに行ってみたが、やはり話は弾まないまま早々に解散となり、今のところ全敗記録更新中だ。

 俺もいい加減、馬鹿らしい事をしているとわかっている。やめてしまおうかとも思った。
 でも、彼と過ごした日々を思い出すと、どうしても人恋しくなるのだ。
 友人はいる。決して多くはないが、以前と変わらず接してくれる。あくまでメッセージアプリ上だから、実際に友人らが俺の事をどう思っているのかは、わからない。
 そもそもが、そんなに深い付き合いでもなかった。
 そういう、友人達では埋められない、俺のΩとしての部分。

 守られたい、頼りたい、可愛がられたい、甘えたい、愛されたい。
 そこを当たり前のように満たしてくれていた幼馴染みの存在はあまりにも大きく、抜けられてしまった部分はぽっかりと空いて塞がらない。
 なのに彼の新たな婚約で、何時かは思い直してくれるのでは、という微かな望みも絶たれた。

 物心ついた頃から歳上の幼馴染みに庇護され、ひとりに慣れていなかった俺は、今ひとりだ。今迄が恵まれ過ぎていたのだ。彼のような‪α‬を、独り占めしていたのだから。
 だから、ひとりぼっちの醜い俺は、淋しいのだ。淋しいから、誰かを求めているのだ。


 彼以上に俺を受け入れ、受け止めてくれる、誰かを。





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