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71 行くぜ!修学旅行回
しおりを挟む11月に入って、2週目。僕達2年生は修学旅行に出かけた。
3泊4日、古都・彩京とその周辺県への旅…。
ぶっちゃけ、すっごく楽しみにしてた。僕んち、あんまり家族で旅行にも行かないし。しかも、みずき君と一緒だなんて!いや、そりゃ2人きりじゃないし周りにはみんな居るけどさ。でも、自由行動の時間もあるし!知らない街をみずき君とデートできるんだよ?そんなの、楽しみでしかないし!
僕は10月末から指折り数えてカウントダウンしていたんだ。
そして、修学旅行当日。
いつもより30分早く迎えに来てくれたみずき君と一緒に、今朝は着替えなんかの荷物を詰めたボストンバッグを持って登校。学校に着いたらクラス毎にバスに乗って新幹線の駅まで移動。
新幹線も、乗るの2回目だったからちょっと興奮した。小さい頃に乗ったらしいけど、覚えてないもん。
席は自由席で、別に出席番号順とかグループ毎になんて決まりは無かったから、みずき君の隣にナチュラルイン。
街に出る時にたまに乗る特急より早く変わっていく景色を見ながら食べるリンゴチップスは最高だった。
彩京に到着したらまた貸切バスに乗って、まずは観光名所を回った。大きな神社や、お寺。やっぱり全国的な有名観光地だから、紅葉が綺麗な季節だって事もあって観光客が多い。
見慣れないような、なのにとても懐かしいような景色。
お昼を食べるのもそのお寺の近くの大きな和食のお店で、見た目は綺麗だけどちまっとした食事が出て来た。まあまあ美味しかったけど絶対的に少なくて、バスに戻ってからお母さんが念の為、って3個だけ持たせてくれてたおにぎりを食べた。お母さん、やたら『あら~、ご飯足りるかしらぁ…』って心配してたけど…見事的中しましたよ。
考えてみたら、外のご飯って少ないもんね…。(しょんぼり)
午後になって、グループ単位で行動して良い自由行動の時間になった。僕のBグループは、僕とみずき君含む湯川君、稲取君、佐久間君、といういつメンで構成されていて、リーダーは勿論湯川君。パンフレットを見ながら地図アプリを使って、電車の路線を確認しつつ、目的地を回った。沿道にはお土産物なんかを扱うお店がたくさん並んでた。カラフルなこし餡やホイップクリームで可愛くデコられたお団子屋さんや自分の顔の3倍くらいに大きい綿あめなんかも売ってた。それをみずき君と一緒に食べながら写真を撮ったりしたよ。
正直、古いお寺とか見てるより、売ってる珍しい食べ物を見て回ってる方が多かった気がする。休日の趣味は寺社仏閣や城巡りらしい湯川君だけは、やたら感心しながら見てたけどさ。
夕方は大きな旅館にチェックインして、夕食を食べた後、自由行動の時にコンビニで買っといたおにぎりとかお菓子を部屋で食べながら翌日のスケジュールをみんなで打ち合わせした後、お風呂に。大浴場がすっごく広くて、滝みたいにお湯が流れてた。旅館とかの大浴場ってみんなこうなのかな?
お風呂から部屋に戻ったらすぐに就寝時間になったけど、残念ながらみずき君は一応オメガだって事で、お風呂も部屋も別だった。だから寝る前に僕らの部屋に顔を出してくれて、おやすみと言って自分の部屋に帰っていった。
みずき君は今回、3日とも引率で来てる副担任の野口先生と同室だ。野口先生は番持ちの男性教師で、みずき君と同じオメガなんだ。これは、学年唯一のオメガのみずき君が僕らと一緒に修学旅行に行く為の学校側が配慮らしい。何なら野口先生が2―Sの副担任になったのも、みずき君のフォローの為って噂もある。
でもね。僕、思うんだけど。間違いでも最強グリズリーのみずき君を襲う生徒なんていないって、みんな思ってるんじゃないかなあ…。
まあ、デリケートな問題だよね。みずき君と同じ部屋で過ごせないのは残念だけど、ウチの学校はオメガの生徒の為にしっかり対策してるって事がわかったから、良かったなと思う。
まあそんな感じで、初日は無事に楽しく終了した。
翌日は隣の暁日県にバス移動で、今度はめっちゃ鄙びたお寺ばっかり。刺激が皆無だったけど、修学旅行の修は修行の修なんだなと思って、お坊さんになった気持ちで乗り切った。どこに行っても観光客もお店も少なくて昨日より退屈だったけど、明日にはまた賑やかな場所に移動だから我慢。それに、宿に帰っても寝る直前までみずき君の顔が見られるのは嬉しいから、それでプラマイ0だ。
そうして2日目も無事乗り切って、問題は3日目に起きた。
海京県。昔から水路・陸路共に、交通の要所だった場所なんだって。古い寺社仏閣も大きなお城もあるけど、同じくらい有名な繁華街には外国人観光客も多くて賑やかだった。
自由行動でグループのみんなと一緒に、みずき君とは手を繋ぎながら。お土産なんかを見て回ってる時に、それは来た。
「せんぱーい!壱与先輩!」
背中から聞こえて来た、覚えのあり過ぎる甲高いハイトーンボイスに嫌な予感しかしない僕とみずき君。
「…ねえみずき君。今の、聴こえた?」
「ああ、聴こえた」
「良かった。僕の空耳じゃなかった。…いや、気持ち的には空耳であれって感じなんだけどさ」
「そうだな。俺もだ」
「おい壱与、ランたん、あれって…」
後ろを振り返りたくなくて、前を向いたままそんな会話をしている僕達。でも残念ながら、そんな願いは無駄だった。
「壱与先輩、来ちゃいました~。」
走って前に回って来たその声の主は、予想通りの各務君だった。
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