ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

文字の大きさ
上 下
66 / 86

66

しおりを挟む

年末年始、みずき君ちにはお客さんが多いみたいです。

『もううんざりしてる。早くランに会いたい』

ってメッセージが何度も入って、その夜には電話も来た。
どうやら、遠くに住んでる親戚が何組も来るからご挨拶しなさい、って言われて、こっそり出かける事も出来ないんだって。ウチは一日の昼間におばあちゃんちに行ったら、伯父さんや従兄弟達もいて、それで年始の挨拶を済ませたらもう終わり。毎年こんな感じだよ。
だから2日目からは全然暇だし、『僕が行こうか?』って言ったら、全力で止められた。みずき君の親戚は熊の家系で、おじさん(みずき君のお父さん)やお姉さんに似たタイプの、小さくて可愛いもの好きな人が結構いるらしい。その中に僕が行くと、初訪問の日の再現みたいになる事が予想される…って事で、モフグシャにされるのが嫌なら絶対に来ないようにって言われた。
モフグシャ……恐ろしいひびき…。

『三が日は絶対にウチに近寄っちゃ駄目だ…アイツらが束になったら俺にも防ぎ切れない』

って言われたから、僕は想像してしっぽの毛をブワッと膨らむのが抑えられなくて、ウンウンと頷きながら返事をした。おじさんもお姉さんもお兄さんも良い人なんだけど、あのモフりにかける勢いがなあ…。
それでもやっぱりちょっと寂しいから、

「でも会えないの寂しいな」

って言ったら、

『年始の4日くらいになったら一緒に初詣に行こう。だからそれまでもう少し我慢な』

って初詣デートがまとまった。でもそれまでは忍耐の日々だったな。たった3駅しか離れてないのに、そのたった3駅が海の向こうみたいに遠く感じた。でも今回は、ヒートの時みたいにみずき君が1人で苦しい思いをしてる訳じゃないってわかってるから、寂しいけど前ほど辛くはなかった。
ウチは例年通り、一日の夜からは家族3人でのんびりまったりコタツでテレビを見てお節を食べたりしながら過ごしてた。今年のお正月は、お母さんが働いてるスーパーで割引きで買ったお節のお重と、お母さんが大量に揚げてくれたフライドチキン。コタツのお供にはミカンって家が多いらしいけど、僕んちはミカンの他に箱買いのリンゴもある。もしゃもしゃリンゴを齧りながら見る正月番組は最高だよね。お笑い系しか観ないけど。
お節は一日に食べ切ったから、2日目からは普通にカレーとかコロッケが出てきたんだけど、普通は三が日はお節食べたりするものなのかな?お節が2日目まで残ってたためしが無いんだけど。
あと、3日目は僕のリクエストしたホワイトシチューが出てきた。普通のシチューも美味しいけど、やっぱりホワイトシチューの方が好き。
そうしてゴロゴロしながら過ごしてて、1月4日。
やっとみずき君がウチに来てくれた。
約束の時間にインターホンが鳴る前から玄関先でソワソワして待ってて、鳴った瞬間ドアを開けた。5日振りに見たみずき君は、新年から一段と輝いてる。今日のみずき君は、前髪を半分上げてセットしてて、いつもより更に大人っぽい。そしてやっぱり金色のチャームを付けて来てくれてる。

「あけましておめでとう、ラン。今年もよろしく」

「あけましておめでとう!僕こそよろしくね。寒かったでしょ、上がって上がって!」

「うん。おじさんおばさんにも年始の挨拶しないとな」

礼儀正しいみずき君は、お父さんお母さんにも綺麗なお辞儀で年始の挨拶をした。それで、お茶を飲みながら少し話してから、僕とみずき君は電車に乗って何駅も向こうの、少し大きな神社に向かった。4日なのに参拝客はまだまだ結構多くて、露店もたくさん。僕らは参拝を終えてから、屋台を順番に見て回った。
お祭りやこういう時にしかない屋台の食べ物って、見るだけでも楽しくて、でも見てたらお腹が空いてくる。
特に目を引いたのは、お箸にぐるぐる巻かれたトルネードポテトと、更に大っきくぐるぐるのトルネードウインナー。勿論食べたよ。
で、そういうのを食べたら今度は甘いものが食べたくなるよね。だからその後は、奇をてらってない普通のリンゴ飴と、チョコバナナと薄皮のたい焼きを食べた。ハズレ無しの安定の美味しさだった。

帰りは近くに寄り道しながら本屋さんとかに寄って、もらったお年玉で欲しかったマンガを何冊も買ってから、カフェに寄ってあったかいカフェラテを飲みながらお喋りしてから帰った。楽しかった。



それから三学期が始まって、またいつもの毎日がゆっくり過ぎて、そしてまたみずき君と出会った季節が巡って来た。





しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...