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しおりを挟む土日を挟んだ週明け、みずき君が復活した。
日曜日に電話が来た時には、明日からは迎えに行くからって言われてたんだけど、翌朝玄関先に立つみずき君を見た時は、思わず抱きついてしまった。
出会ってからというもの、1週間近くも顔を見ない事なんて初めてだったから、感極まって。実際の日数よりも、ずっと長く会ってなかったような気がしたんだ。
「会いたかったよ」
僕のハグに、そう言って抱きしめ返してくれるみずき君は、1週間前よりも更に綺麗になったみたい。でも、少し痩せたみたいだ。
僕、ネットでも調べたんだよ。ヒート中って、何か食べる余裕が無くなるんだって。気をつけなきゃ水分補給も疎かになって、ヒートが終わった途端に脱水症状と貧血で救急車呼ぶ事になる人もいるって読んだから、余計心配だよ。
普通にヒートが終われたら、何日か休んでゆっくり回復させていくらしいけど、ゴッソリ消耗した体力がほんの2日くらいで回復するのかなあ。
「もう大丈夫なの?」
抱きついたまま見上げると、ニコッと笑うみずき君。
「大丈夫大丈夫。俺、元々体は丈夫だし。基礎体力あるから全然平気」
「よかった…」
ホッと胸を撫で下ろしたら、少し屈んだみずき君に頭や首筋やあちこちを嗅がれた。
「?」
「ほぼ消えかけてるなあ…。やっぱり1週間はもたないか」
みずき君がそう言ったかと思ったら、薄まってたリンゴの匂いが濃くなった気がした。もう僕にも、それがマーキングをかけ直されたんだって事がわかる。いいにおーい。
「リンゴ食べたくなっちゃった」
すんすん鼻を動かしながらそう言ったら、そう言えばって顔をしながらみずき君が言った。
「多分、頼んでたリンゴがくるの、そろそろじゃないかな」
「えっ?」
「幻の最高級蜜入りリンゴ」
「あっ、前に言ってたやつ!」
最初にみずき君ちに遊びに行った時にそんな事言ってたなって思い出した。みずき君は思い出すように続ける。
「11月中旬から下旬発送って事だったし、そろぼちだろ。来たらウチに遊びに来る?それとも朝持って来よっか」
「遊びに行くよ!」
僕は慌ててそう言った。朝からみずき君に大荷物背負わせる訳にはいかない。それに、みずき君ちで一緒に食べる方が何倍も美味しいだろうし。
「そっか。じゃ、来たらおいで」
「うん」
玄関先でイチャイチャしてたら、お母さんが呆れたように笑いながら、
「そろそろ行かないと電車間に合わないんじゃない?」
って言ってきたから2人してハッとして、急いで家を出た。
再開された通学電車の中での毛繕いはいつもより更にねちっこくて、何度か声が出ちゃいそうになったけど、何とか耐えきった。会えない間の寂しさより、ちょっとくらいの恥ずかしさの方が全然マシだよ。
だって、毛繕いは愛情表現なんだから。
それからお昼のお弁当も、またみずき君と中庭で食べるようになった。
お母さん特製カレードッグをもしゃもしゃ食べながら、僕はみずき君に、
「実は、言いそびれていた重大発表があるんだ」
と、真剣な顔をして言った。みずき君もカレードッグをもしゃもしゃしてたんだけど、僕の言葉に一旦それを飲み込んでから、
「どうしたの?」
と真面目な顔で聞いてきた。
僕はこくりと頷いて、告げた。
「実は…僕、4月よりも3センチ背が伸びたんだ」
「え、マジで?」
みずき君は驚いているみたいだったけど、
「そっか。そういや最近、目線が少し違う気がしてたんだよな。良かったな」
と言って喜んでくれた。
僕はそれに頷きながら、みずき君に返礼を返す。
「ありがとう。中2から止まってた成長が再開したのも、みずき君のお陰だよ」
訝しげな表情になるみずき君。
「え、何で俺?」
それに僕は答えた。
「みずき君が教えてくれたんじゃん。成長期にあんまり重たいものを持つと伸びなくなる事。それで、代わりにお弁当持ってくれるようになったでしょ?
ここ2、3日伸びた要因を色々考えてたんだけどね、やっぱりそれかなって」
「……そっか、2、3日も…」
「みずき君は僕の成長の最大の功労者だよ。ありがとうね」
「いや、そんな。…うん、良かった。お役に立てて。うん」
さっきは喜んでくれたのに、僕の見解を述べた途端、みずき君は何故か歯切れが悪くなった。どうしたんだろう?
(※この詳細は17話をご参照下さい)
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