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朝っぱらから悲しげな足音をさせて歩く僕。
おはようございます。半年を経て超久々に1人登校中の吉田嵐太です。
毎朝恒例化してたみずき君のお迎え無しで、だから今日は背負ってるリュックの中のお弁当も最初の頃と同じ2段で軽くなってる。だけど自分で持つのが久々だからか、この重みが新鮮。電車内での毛繕いが無かった事に寂しさを覚えつつぼんやりと車両を降りて改札を出て、てくてく歩いてたら後ろからポンと肩を叩かれた。
振り向くと、クラスメイトの友人・佐久間君だった。佐久間君はみずき君と同じ熊種の獣人だからか、背が同じくらい高くて毎回見上げちゃう。
「おはよう佐久間君」
「おはよ、ヨッシー」
「珍しいな、1人か」
佐久間君はそう言いながらキョロッと周囲を見回して、ハッと何かに気づいた様子で僕に視線を戻した。
「あ」
「ん?」
「ヨッシーの彼ピ、ヒート入った?」
「えっ?!どうしてわかるの?」
「……アルファだからだな?」
あ、なるほど。あまりにみずき君フェロモンが匂ってるのが恒常化し過ぎてて違いがわからなかった!他のアルファにはそれがわかるのか…。だから電車に乗った時からチラチラ見てく人がいたの?
その事に気づかなかった自分に、何となくしょんぼりしてしまう。やっぱり僕、アルファとしてまだまだなんだな。こりゃみずき君のヒートを癒してあげられる日もまだまだかなぁ…。
少しだけ胸がどんよりしてしまった。それにしても、みずき君以外の人と並んで登校するの久しぶりだな。
「じゃあ、今週はクラスで飯食えるんだな」
しょぼくれながら歩いてたら、自称・空気を読むのが苦手な男佐久間君がそんな事を言ったから、そうだったと思い出す。
「そうなんだ。一緒に食べてくれる?いつも超絶イケメンな恋人とイチャイチャしてる癖にとか言ってハブらない?」
「…ヨッシーってちょいちょい彼ピ自慢うぜぇよな」
…僕、そんな風に思われてたの?ちょっぴりショックを隠しきれないんですけど…。
「でもま、これから何日かは気楽に話せるな。」
佐久間君が言った言葉に、えっと驚く。
「今まで気楽に話してなかったの?」
「え…おま…ニブぅ…」
逆に鈍さを驚かれてしまった。でも毎日普通に話してたじゃん、と首を傾げると、佐久間君は呆れたように言った。
「お前の怖ぇ彼ピ君が睨むから、気を使って近寄らなかっただろ。いつもちょっと離れて喋るようにしてたの、気づいてなかった?」
「あ…そういえば?」
言われて思い出してみたら、確かにここ何ヶ月か、佐久間君との距離は微妙に遠かった気がする。クラスでは普通に話すのに登校中に姿が見えても近寄って来なかったのはそういう事だったのか。
「ヨッシーの彼ピさあ、俺にはアタリがキツいんだよな。同じ熊だからなのかね…」
「…そうかなあ?」
それはごめん、ちょっとよくわからない。でも、オメガのみずき君がアルファの佐久間君にそんな事するかなあ?アルファ同士ならライバル意識とか持つ事もあるらしいけど…。
でもその辺りの事は僕が考えてもよくわからないから、結局その話はそこで終わって、2年生が行ってる修学旅行先の話なんかをしながら登校した。
その日のお昼は賑やかだった。
稲取君と湯川君と佐久間君は前と同じようにずっと一緒にお昼を食べてるから、僕もそこに混ぜてもらった。
いつもはみずき君と中庭で周りは静かだけど、教室でわいわいい賑やかな中で食べるのもたまには楽しいなぁ。
「ランたん、今日から何日か寂しいな」
僕が説明しなくてもみずき君の休みの理由も期間も察してるらしい稲取君。やっぱわかるんだ。
「パートナーがヒート中の場合って、そんなにわかるものなんだね」
と、僕が感心しながら言ったら、3人は顔を見合わせて急に静かになってしまった。え、どうしたの?と思ってたら、稲取君が少し言いにくそうに口を開いた。
「いや、つーかさ。普通はあんまりそこまでハッキリはわかんねーよ。嗅ぎ取れても、微かにそれっぽい残り香がするかなって程度だし」
「…そーなの?アルファならみんなわかるのかなって思った…」
僕はまたまた首を傾げた。
じゃあ、何で佐久間君も稲取君もわかっちゃうの?
そんな僕に佐久間君が言った。
「あー、ごめん。朝の俺の言い方が悪かった。
アルファだからみんなわかるんじゃなくて…あぁ、いやそれはそうなんだけど…」
「?」
「つまり、それくらいわかり易く匂い付けされるって事なんだよ」
と、佐久間君を加勢するように口を挟んだのは湯川君。そして、稲取君も…。
「普通のオメガはヒートが来てる事を隠したがるもんなんだけどな。ランたんの彼ピはすげーな。流石はグリズリー。
ヒート中のオメガフェロモンでもグリズリーのものとなると他のオメガ避けにもなるよなー」
「というか、アルファすら避けちゃうよね。何時も嗅がされて耐性付いてる僕らだから我慢出来るけど」
「……」
みずき君、みずき君?
今頃はどうしてますか。
あのね。オメガの人は普通、ヒートは隠すんだって。知ってた?
あと、知らない内に僕のクラスメイト達の忍耐スキルが上がってたみたいだよ。すごいね…。
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