ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

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僕なりに頑張ったみずき君の誕生日は、とっても成功の内に幕を閉じた。初めて作ったケーキのスポンジは冷蔵庫に入れてたせいもあってか少し固くなっちゃってたけど、みずき君には概ね好評みたいだった。だって、普段は甘いものそんなに食べないみずき君が、切り分けたのをおかわりして、トータルで2分の1も食べてくれたんだよ。これって意外とイケてたって事だよね?僕も自分で食べてみて、悪くないなと思ったもん。
来年はもっと上達して、綺麗な形に仕上げるぞー。

その後、みずき君は満面の笑みでチョコクリーム味のキスをしてくれたんだけど、ちょうどその時にお母さんが仕事から帰ってきたから、残念ながらちょっとだけで終了。
ま、いつもしてるんだけどね。

みずき君が帰る時、まだ6時半だったから駅まで送ったんだけど、みずき君、ずっとニコニコしてた。いつもの5割増ニコニコしてた。イケメンの笑顔の眩しさよ…。

『こんなに嬉しい誕生日も贈り物も初めてだ。今度はランのバースデーに俺がお返しする番だな』

って言ってたけど、僕の誕生日、4月の5日だからね。めちゃめちゃ先だから。こう見えてクラスの中で一番お兄ちゃんだからね、僕。実は昨日まではみずき君より歳上だったんだから!
それに、みずき君から改めて何かを貰おうなんて思わないよ。だって今回の事は、僕がしたくてした事だし。
僕はもうたくさんもらってるから良いんだ。毎日、みずき君の匂いをもらってるし、遊びに行くと珍しいお菓子やフルーツ、たくさんくれるもんね。

…あれ?僕の方がもらい過ぎ?



みずき君は僕が見送る時はいつも改札抜けてホームへの階段を上ってって、見えなくなるまで手を振ってくれる。今日はその時も最後まで笑顔MAXだったから、そんなにご機嫌だとたくさん逆ナンされちゃうんじゃないと心配になった。
家に帰り着いた後も、今日はありがとうってメッセージが来てて、頑張った甲斐があったなって思った。


それからはまた普通の毎日を過ごして、10月には中間テストがあったりした。みずき君と勉強したからか、一学期の期末よりちょっと上がってた。みずき君、すごい頭良いんだよ。でも中学の頃はホルモンバランスが安定しなくてずっと体調不良だったから、テストどころか授業受けるのもやっとだったんだって。一時期は保健室登校してたりして、何とか受かった高校でもきっと同じような生活になるって覚悟してたのに、あの日僕と出会ってから嘘みたいに体調が落ち着いたんだって。

『だから、今こうしてまともに授業受けられるのも、テスト受けられるのも、ランのお陰だ』

前からやってみたかったっていう、ファミレスでのテスト前勉強会を2人でしながら、みずき君は笑った。
楽しかった。ドリンクバーって利益出てるのかなって心配しながら帰ったり、テスト返ってきて、みずき君の点数すごいってびっくりしたり。
多分、中学生活を普通に過ごせてたら、みずき君はもっとすごい進学校に行ってたのかもしれない。それを考えたら、やっぱり運命のお引き合わせってあるのかなと思った。でもやっぱり、みずき君が苦しかったのを想像したら、悲しいな。
それでも今、みずき君はすごく元気だし、前の辛さなんて忘れちゃったよって言ってくれるから、良かった…なんて思ってた。
みずき君の身にあんな事が起きるまでは。





「明日から3~4日、休むわ。だからその間、クラスの友達と昼食べな」

11月に入って何日かしたある日、お昼を食べながらみずき君が言った。
突然そんな事を言われて、僕はびっくりした。

「3~4日?!そんなに、どうして?お家で何かあったの?」

僕は心配してみずき君に聞いた。そりゃそうでしょ?普通、聞くよね?

そうしたらみずき君は、慌ててる僕にクスッと笑って、落ち着いた様子で答えてくれた。

「いや、ここ2日くらい、朝起きると前兆があってさ」

「前兆?」

「ヒートの前兆な」

「えっ、ヒートの?!」

思わずちょっと大っきな声が出ちゃって、みずき君の大きな手に口を塞がれた。ごめん、みずき君。手のひらにご飯つぶ飛んじゃった。
みずき君は僕が静かになったのを見ると、周りをキョロキョロ見ながらそっと手を離してくれた。そして、その手を見て、僕が飛ばしたご飯つぶを舌で舐め取って食べた。僕が何かを食べてて口周りや頬っぺたに付けたご飯つぶやクリームを、みずき君が取って食べちゃう事は日常茶飯事だから今更驚かない。それは驚かないけど、ヒートって。

ヒートなんて、4月に出会ってから初めての事だから、ちょっと気が気じゃない。

「だ、大丈夫なの?!」

僕が聞くと、みずき君は頷いた。

「念の為に抑制剤を倍ぶっ込んできたから、今日までは何とか抑えられると思う。でもこれ以上は無理だろうな」

シャケのおにぎりを食べながら他人事みたいに淡々と言ってるけど、ヒートを1人で過ごさなきゃいけないのって、大変なんでしょ?苦しいんじゃないの?

僕はますます心配になって、みずき君をじっと見つめた。みずき君がうんうん唸りながら苦しんでるのを想像したからだ。詳しくは知らないけど、セッ〇スできないと苦しいんだよね?!

なのにみずき君は何故かケロッとしながら、僕に言ったんだ。

「だからさ、ラン。今日の帰り、ちょっと部屋に寄らせてよ」

「部屋に?いいけど、大丈夫なの?」

僕の言葉にみずき君は唇を片方上げて悪役みたいに不敵に笑って、とんでもない事を言いました…。

「明日からを大丈夫にする為に、ランの協力が必要なんだよ。帰ったら、着てる物全部脱いでパンツとシャツ回収するからな。それから、ランの部屋の匂い付きの…特に布物、生活に支障無い程度に借りてくから」

「ひ、ひえ…!」


う、うそ…。

僕のぱんつ、持ってかれちゃうの??





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