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プレゼントを買えたから、翌日の土曜日はゆっくり休めたし、日曜日にはみずき君がウチに遊びに来るのをお断りせずにすんだ。
みずき君は手土産に、大きなチョコレートの詰め合わせの二段ボックスを持ってきてくれた。お高いやつ…これ、お高いやつだよね?!

「どどどうしたの、これ?」

僕が嬉しさに若干どもりながら聞いちゃったら、みずき君はニコニコ笑いながら言った。

「昨日、母さんが出先で買ってきてくれたんだよ。ラン、ここのチョコ食べてみたいって言ってただろ?」

「いいい、言ってたけどどど!」

「ラン、しっぽブワッてなってるよ?」

「ひゃあ!」

僕は宝石箱みたいな赤い二段ボックスを前に興奮していた。
確かに言った…夏休みに入ってすぐくらいに、壱与家でみずき君と一緒に、エリアのグルメ雑誌見てる時に。超美味しそうなお店がたくさん掲載されてて、新店情報とか見て、ここ場所的に行けそうだね、なんて話してた。その雑誌に見開きで特集されてたのがこのショコラトリー。フランス帰りの有名ショコラティエがいるんだって。写真に映る綺麗で綺麗で可愛いキラキラしたチョコレート達は世の女性陣を虜にしてるらしいけど、僕まで虜にするなんてね…。思わず、

「僕、チョコ、好き」

って知らない内に口から出てて、

「ラン、カタコトになってるよ」

ってみずき君に指摘されたんだからね。…あまりにも衝撃を受けると語彙力が吹っ飛ぶ事って、あるじゃん?
でもその時は、お店の場所が隣の県だったし、買いに行くにはちょっと遠いなって諦めたんだ。それにお値段もセレブ価格だったから、一介の高校生にはちょっとなあとも思ったし。でもみずき君はその事を覚えててくれてて、おばさんに話してたみたい。
う、嬉しいけど、こんな高いもの、良いのかな?

みずき君にそう聞いてみたら、

「別にお土産だから良いんじゃない?僕もよくご飯ご馳走になってるんだし」

と言われた。

「えぇ…ご飯でこんなデラックスなお土産を?良いのかなあ…」

「良いんじゃないの?それに、変に遠慮されて持って帰ってもウチじゃ誰も食べないよ」

「あ、そっか。そだよね、壱与家はお菓子あんまり食べないんだもんね」

「そそ」

なら遠慮なくいただいちゃおうと決めてお母さんに見せに行ったら、めちゃくちゃ喜んでた。わかる。興奮しちゃうよね。食べるの楽しみ。

その日もお昼を一緒に食べて、僕の部屋でゲームとかお昼寝とかしてまったり過ごして、夕方になってから散歩に出て、みずき君を駅まで送ってから帰った。
翌日からはまた前と同じように一緒に登校して、お昼食べて、帰りも一緒に帰るようになって、すっかり平常運転で過ごしてる内にあっという間に一週間が経った。

今回は土日月、って三連休で、惜しい事にみずき君の誕生日は休み明けの火曜日だった。日曜日は壱与家に行ってみずき君ルームで一緒にゴロゴロしたんだけど、月曜日はLIMEでやり取りしただけで、それぞれ家で過ごしたんだ。それで、夜の9時には眠くなっておやすみって送ったんだけど、夜中にアラームで起きた。
日付けが変わってすぐに『お誕生日おめでとう』ってメッセージを送りたかったから、23時55分に設定してたんだ。

それで、あと何分だ、あと何秒だってカウントダウンしながら待ってた。だって、そんな事するの初めてだったんだ。友達には普通に、学校行っておめでとうって言ってたし。
でも、恋人って特別だから。
世界で一番初めにおめでとうって伝えたかったんだよ。

だからドキドキしながらその瞬間を待った。

3秒、2秒、1秒。ポチ。

『お誕生日おめでとう』

すると、すぐに既読がついて電話が掛かってきた。びっくりだよね。僕は、翌朝みずき君が起きて、朝一番でメッセージに気づいてくれたら良いなって思ってたから。まさかすぐに読まれるなんて想定してなかったから、電話が掛かってきた瞬間、ビクってしてしまった。

「もしもし?起きてたの?」

僕がスマホのマイクに向かって話しかけたら、みずき君が少し嗄れた声で答えた。

『うん』

嘘だよ。絶対寝てた声だよ。だって少しガラガラしてるもん。絶対僕が起こしちゃったんだ。僕は申し訳なくなって、みずき君に謝った。

「お誕生日おめでとう。こんな時間に起こしちゃってごめんね」

『ううん。嬉しいよ。ありがとう。誕生日、覚えててくれて』

良かった。深夜だけど喜んでくれたもよう。でもすぐ気づくなんてすごい。
夜中にスマホ越しに聞くみずき君の声、なんか新鮮。

「それだけ伝えたかったんだ」

そう言ったら、みずき君はふふっと笑った。

『そっか。ほんとにありがとう。今年の誕生日はランが一番乗りだ』

やった。一番だった。僕は嬉しくなった。

「これからずっと一番乗りだよ」

『…ランって、なんか…たまに言動はスパダリだよな』

「ありがとう?」

たまに?って何ってツッコむべきか迷ったけど、スパダリって褒められたから見逃す事にしたよ。
その内全面的にスパダリ化する予定だから、しばしお待ち願いたく!って気持ちで。
そうして2度目のおやすみを言って、初めての深夜の通話は終わった。


翌朝迎えに来たみずき君は、顔を合わせた瞬間からハグしてきた。登校電車での毛繕いもいつもより大胆だったからか、お昼ご飯までの記憶が曖昧だった。

いつの間に四時間目まで消化してたの?





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