ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

文字の大きさ
上 下
56 / 86

56

しおりを挟む

プレゼントを買えたから、翌日の土曜日はゆっくり休めたし、日曜日にはみずき君がウチに遊びに来るのをお断りせずにすんだ。
みずき君は手土産に、大きなチョコレートの詰め合わせの二段ボックスを持ってきてくれた。お高いやつ…これ、お高いやつだよね?!

「どどどうしたの、これ?」

僕が嬉しさに若干どもりながら聞いちゃったら、みずき君はニコニコ笑いながら言った。

「昨日、母さんが出先で買ってきてくれたんだよ。ラン、ここのチョコ食べてみたいって言ってただろ?」

「いいい、言ってたけどどど!」

「ラン、しっぽブワッてなってるよ?」

「ひゃあ!」

僕は宝石箱みたいな赤い二段ボックスを前に興奮していた。
確かに言った…夏休みに入ってすぐくらいに、壱与家でみずき君と一緒に、エリアのグルメ雑誌見てる時に。超美味しそうなお店がたくさん掲載されてて、新店情報とか見て、ここ場所的に行けそうだね、なんて話してた。その雑誌に見開きで特集されてたのがこのショコラトリー。フランス帰りの有名ショコラティエがいるんだって。写真に映る綺麗で綺麗で可愛いキラキラしたチョコレート達は世の女性陣を虜にしてるらしいけど、僕まで虜にするなんてね…。思わず、

「僕、チョコ、好き」

って知らない内に口から出てて、

「ラン、カタコトになってるよ」

ってみずき君に指摘されたんだからね。…あまりにも衝撃を受けると語彙力が吹っ飛ぶ事って、あるじゃん?
でもその時は、お店の場所が隣の県だったし、買いに行くにはちょっと遠いなって諦めたんだ。それにお値段もセレブ価格だったから、一介の高校生にはちょっとなあとも思ったし。でもみずき君はその事を覚えててくれてて、おばさんに話してたみたい。
う、嬉しいけど、こんな高いもの、良いのかな?

みずき君にそう聞いてみたら、

「別にお土産だから良いんじゃない?僕もよくご飯ご馳走になってるんだし」

と言われた。

「えぇ…ご飯でこんなデラックスなお土産を?良いのかなあ…」

「良いんじゃないの?それに、変に遠慮されて持って帰ってもウチじゃ誰も食べないよ」

「あ、そっか。そだよね、壱与家はお菓子あんまり食べないんだもんね」

「そそ」

なら遠慮なくいただいちゃおうと決めてお母さんに見せに行ったら、めちゃくちゃ喜んでた。わかる。興奮しちゃうよね。食べるの楽しみ。

その日もお昼を一緒に食べて、僕の部屋でゲームとかお昼寝とかしてまったり過ごして、夕方になってから散歩に出て、みずき君を駅まで送ってから帰った。
翌日からはまた前と同じように一緒に登校して、お昼食べて、帰りも一緒に帰るようになって、すっかり平常運転で過ごしてる内にあっという間に一週間が経った。

今回は土日月、って三連休で、惜しい事にみずき君の誕生日は休み明けの火曜日だった。日曜日は壱与家に行ってみずき君ルームで一緒にゴロゴロしたんだけど、月曜日はLIMEでやり取りしただけで、それぞれ家で過ごしたんだ。それで、夜の9時には眠くなっておやすみって送ったんだけど、夜中にアラームで起きた。
日付けが変わってすぐに『お誕生日おめでとう』ってメッセージを送りたかったから、23時55分に設定してたんだ。

それで、あと何分だ、あと何秒だってカウントダウンしながら待ってた。だって、そんな事するの初めてだったんだ。友達には普通に、学校行っておめでとうって言ってたし。
でも、恋人って特別だから。
世界で一番初めにおめでとうって伝えたかったんだよ。

だからドキドキしながらその瞬間を待った。

3秒、2秒、1秒。ポチ。

『お誕生日おめでとう』

すると、すぐに既読がついて電話が掛かってきた。びっくりだよね。僕は、翌朝みずき君が起きて、朝一番でメッセージに気づいてくれたら良いなって思ってたから。まさかすぐに読まれるなんて想定してなかったから、電話が掛かってきた瞬間、ビクってしてしまった。

「もしもし?起きてたの?」

僕がスマホのマイクに向かって話しかけたら、みずき君が少し嗄れた声で答えた。

『うん』

嘘だよ。絶対寝てた声だよ。だって少しガラガラしてるもん。絶対僕が起こしちゃったんだ。僕は申し訳なくなって、みずき君に謝った。

「お誕生日おめでとう。こんな時間に起こしちゃってごめんね」

『ううん。嬉しいよ。ありがとう。誕生日、覚えててくれて』

良かった。深夜だけど喜んでくれたもよう。でもすぐ気づくなんてすごい。
夜中にスマホ越しに聞くみずき君の声、なんか新鮮。

「それだけ伝えたかったんだ」

そう言ったら、みずき君はふふっと笑った。

『そっか。ほんとにありがとう。今年の誕生日はランが一番乗りだ』

やった。一番だった。僕は嬉しくなった。

「これからずっと一番乗りだよ」

『…ランって、なんか…たまに言動はスパダリだよな』

「ありがとう?」

たまに?って何ってツッコむべきか迷ったけど、スパダリって褒められたから見逃す事にしたよ。
その内全面的にスパダリ化する予定だから、しばしお待ち願いたく!って気持ちで。
そうして2度目のおやすみを言って、初めての深夜の通話は終わった。


翌朝迎えに来たみずき君は、顔を合わせた瞬間からハグしてきた。登校電車での毛繕いもいつもより大胆だったからか、お昼ご飯までの記憶が曖昧だった。

いつの間に四時間目まで消化してたの?





しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

オメガの復讐

riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。 しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。 とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

処理中です...