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しおりを挟むみずき君が波と戯れて、浜辺のお色気マーメイドになってしまったり、メッキ貝っていう金色の貝を拾ったり、一緒に海を見ながらお弁当を食べたり、隣りあってシャワーを浴びたり、帰りには移動クレープ屋さんでオヤツを買い食いしながら手を繋いで帰ったり。
初めての海デートは、夏休み最後の最高に楽しい思い出になった。
さようなら、紅茶色じゃない紅茶の海。また来年…いやもしかしたら再来年…は受験だから無理か。……まあまたそのうち!
海で半裸のつき合い(?)に関係が進展してからというもの、みずき君と僕の仲はますます順調だ。順調過ぎて、みずき君があけすけになっちゃってるくらいに。
この間、新学期が始まってから1週間くらい経った頃に壱与家に遊びに行ったら、みずき君の部屋の壁何ヶ所かに僕の水着姿の写真の引き伸ばされたのが貼ってあって、反応に困った。どこを見ても自分がいるって変な気分。
ほとんど毎日実物見てるのに、どうしてだろうって不思議に思って聞いてみたら、
「常にランを摂取していたいんだ」
ってな事を真剣な顔で言われた。摂取?まさか僕の写真が何かを放出してる…?
「そっか。なら仕方ないね」
僕にはわからないけど、みずき君が言うなら意味があるんだろうな、と思って頷いたら、
「だろ。妄想の中ならカウントされないもんな」
と言われた。
…なるほど、そういう事。クラスメイト達やみずき君に感化されて最近めっきりお色気方面の勘の良くなった僕にはピンと来てしまった。つまり、みずき君の妄想の中の僕はとっくにえっちしちゃってるのか。童〇卒業してるのか。リアルではまだやり方さえよく知らないけど、みずき君ワールドの中ではオトナになった僕がいるんだと思うと感慨深かった。
それから何日かしてから、僕はみずき君と別々に帰るようになった。バイトのお給料が出たからだ。それで、前に雑誌で特集されてて目を付けてたみずき君のプレゼントを買いに取り扱いしてる店舗を探して行ったんだけど、既に売り切れてた。数量限定品だったらしくて、そう言えばそう書いてあったような気がするって思い出してガッカリした。でもね。だからってプレゼントを無しにはできないし、適当な物にもしたくない。だから僕は、みずき君の誕生日までに新たに素敵なプレゼントを探すべく、放課後の時間を使って街まで出て色んなお店を回る事にした。
最初、お昼にお弁当を食べてる時に、用事があるからしばらく一緒に帰れないって言ったら、みずき君は不思議そうな顔で言った。
「用事って、またバイト始めたとか?」
「違うんだけど、ちょっと探し物してるんだ」
「なら俺も行く」
「だ、ダメ!みずき君は来ちゃダメだから!」
「だ、ダメ…?!」
めちゃくちゃショックを受けてるみずき君を見てしまったと思ったけど、仕方ない。だって、みずき君の為だし。
僕は辛い気持ちをぐっと我慢して、ごめんねと言った。それからもう3日連続で別々に帰ってる。
1人で街に行くのはちょっと緊張したけど、大丈夫。僕、強いし。いざとなったら鍛え抜いたアイアンクローが火を噴くし。
僕はデパートや百貨店に入ってるお店を見て回って、でもなかなかこれだ!って物に出会えずに早3日。そして今日で4日目…。
今日見つけられなかったら、土曜は朝から街に出なきゃと考えてた。
それから一時間後。
「……ぅわあ…」
僕の目は、何となく入ってみた小さなお店のショーケースの中に釘付けになっていた。ガラスの向こうに鎮座しているソレは、周りとは全然違う存在感を放っていて、最初に買おうと思ってたのと同じくらい素敵だ。前に小さく表示されてる金額も、何とかいける。
「こちらは新進気鋭の新人の方の作品なんですよ。新人さんなのでお値段はお手頃ですけど、センスと品質は折り紙付きです」
何故か自分が作ったみたいに、フンスッと鼻高々に説明してくれる、30代くらいの男の店員さん。その新人さんと仲良しなのかな?
みずき君がそれを身につけたところを想像して、少しぼおっとした。
「似合うだろうなあ…うん、絶対に似合う」
うん、決めちゃおう。また無くなっちゃったら困るもん。
「すいません、これください!」
僕は店員さんに向かってそう言った。そして、1ヶ月のアルバイト代、殆どと引き換えにみずき君へのプレゼントを手に入れたんだ。
綺麗にラッピングしてもらって、シックでカッコ良い黒地に金のロゴの入った紙袋に入れてもらったソレ。
「きっと喜んでくれるよね」
大好きな人の笑顔が頭の中いっぱいに浮かんで、胸の中があったかくなった。
もうすぐ来るみずき君の誕生日が待ち遠しいな。
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