53 / 86
53
しおりを挟む諦めた女の子達の波が引いた後、僕とみずき君は浜辺のレンタルショップでビーチパラソルを借りて、ショップに隣接するシャワー施設とその横にあるコインロッカーに貴重品を入れた。小さいビニール製のウエストポーチに小銭入れだけ入れて、スマホは悩んだけど、ロッカーに預ける事にした。みずき君は僕のより少し大きめのビニールポーチだから、崩しといた小銭とスマホは持ってくらしい。ロッカーの鍵はみずき君がポーチに入れた。
それから浜辺に歩いて、みずき君はレンタルしたパラソルを持って、ふんっ!と力強く砂浜に立てた。僕はその気合いにびっくりして、危うくファイティングポーズを取りかけた。えっ?祠チャレンジ?
パラソルを広げる姿も漢気溢れすぎてて、呆然と見蕩れる僕。僕のハニー最強。
周りにいた獣人の何人かもみずき君の気合いにビクッとしてた。純人の人にはタダの超絶イケメンにしか見えないだろうけど、獣人にはスタンド…じゃない、元のグリズリー姿がうっすら見えてるんだもんね。
僕はここまでみずき君に持ってもらってた大きなビーチバッグの中から折り畳まれてたレジャーシートを出して広げて、設置したパラソルの下に敷いた。よし、良い日陰。
「日陰になるとちょっとマシだね」
「そうだな」
シートの上にドサッとバッグを下ろす。このバッグには今日のお弁当も入ってるけど、遠出だと荷物になるからいつもより軽めにしてもらった。どうせアイスとか、色々買い食いする予定なんだもんね。
(あっ、そうだ!)
僕はお母さんに言われた事を思い出して、バッグの内側のポケットから日焼け止めジェルを出した。
「塗っときなさいって言われたから、みずき君、背中とか塗ったげる」
「えっ、いや自分で…」
「まあまあまあお客さん」
戸惑ってるみずき君のウインドブレーカーを剥ぎ取って、シートの上に寝そべってもらった。みずき君の足が長すぎてはみ出してる。
みずき君は背中も無駄な肉が無くて、細身に見えるのに筋肉が盛り上がっててカッコ良い。僕はちょっとドキドキしながら日焼け止めジェルを手のひらに出して、背中一面に満遍なく広げた。トロッとしてるけど、塗ってしばらく経てばサラッとするって書いてあったな、と思いながら塗り塗り。すると、うあああ、なんという事でしょう!タダでさえキレイな肌が、ジェルの美肌効果でツヤツヤ。ジェルだから透明なのにすごい。らけしからん美筋肉になってしまったよ。しかも僕がお尻と腰の辺りを跨いでせっせと塗ってると、『ふっ…』とか、『ぅ…』とか、小さく吐息を洩らす。うつ伏せ苦しいのかも、と思って僕は早々に日焼け止めジェル塗りを終了した。
起き上がったみずき君は、やっぱりちょっと赤い顔をしてて、多分お尻の上に乗っちゃったのが痛かったか苦しかったのかもなと思った。みずき君は何故か向こうを向いたまま、残りの首や手足にジェルを塗ってたから、僕もウインドブレーカーを脱いで寝そべって、みずき君にお願いした。
「みずき君、僕も背中お願い」
みずき君の後ろ姿が一瞬動きを止めて、ギギギギって首だけこっちを向いた。こわ。そーゆーホラー映画トラウマだからやめてよ。
「ら、ランの…背中…」
「うん、お願いします」
「…わかった。任せて」
背中にみずき君の息遣いを感じる。大きな手がぬるっと肩や首や肩甲骨を滑って、ひゃっとびっくりして声が出てしまった。
「んんっ…」
「ご、ごめん、大丈夫か?」
「ん、大丈夫。びっくりしただけ。…あっ…」
みずき君の手がヌルッと動くから、思わずまた声が出てしまった。小さい声で、肌が、とか柔らかいとかブツブツ言ってるけど、どうせ僕にはご立派筋肉ついてませんよーだ。
少しの間塗ってもらって、僕はみずき君に声をかけた。
「みずき君、ありがとー、もういいよ。後は自分で前塗るね」
「……うん」
僕は起き上がって、自分で首や胸、お腹に塗り塗り。手も、一応足も塗り塗り。足は水に入ったら意味無くなっちゃうだろうけど、まあ良い。それよりも、日焼け止めを塗る作業をみずき君がガン見してくるのが若干気になる。
「…どうかした?」
「いや、うん。なんでもない」
なんでもない、と言ったみずき君の視線がずっと乳首に注がれてる。何でいつも、みずき君みたいな立派な胸筋でもない、あるかなきかの僕の乳首にそんなに興味があるのさ…。
僕は自分のつるぺた胸を見下ろして、みずき君のご立派な胸を見て、なんとも言えない気持ちになった。
「……みずき君、準備運動しようよ」
「…そうだね」
僕らは砂浜でラジオ体操を真剣にしてから、海の浅瀬でパシャパシャ水を掛け合って遊んだ。
あんまり泳げないから深いとこは行けないけど、楽しかった。
二人共水着だから、じゃれてる間に肌がくっついていつもよりドキドキしっぱなしだった。
海、心臓に悪い。
47
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる