ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

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みずき君が、猫先輩を押して離しながら何か言ってるのが見えたけど、ザワついてる事もあって、ギャラリーの僕達のところまでは聞こえない。

気持ちがザワザワした。後ろ姿になったみずき君の表情が見えなくて、ザワザワは余計に大きくなる。

(大丈夫。何か理由があるんだよ。みずき君だもん。それに、今のは先輩が勝手にやっただけだもん。みずき君は悪くないよ)

僕はギャラリーから離脱した場所で、すーはーと深呼吸して自分に言い聞かせた。

(うん、大丈夫。落ち着いた)

みずき君、途中で遅れたのに1着でゴールしたんだから、後ですごいって言わなきゃ。

僕は、ふんっ、と立ち直った。こんくらいの事で動じるような僕らじゃないんだからね!みずき君は僕を大好きで、僕はみずき君を大好きなんだから!!

…とまあ、この辺まではね、僕も仏でした。


その後はアナウンスが流れてお昼休憩になった。
僕は呼びに来てくれたみずき君と一緒に手を洗いに行って、教室に戻ってリュックを持った。せっかくだから中庭じゃなくてグラウンドで食べようって話になってまた外に出たんだけど、みずき君はずっと落ち着かない様子で僕の顔色を窺ってる様子だった。勿論、僕は気にしてないよ!って感じでいつも通りに振舞ったよ。だってみずき君がちゅーした訳じゃないし、不意打ちに腹を立てるほど僕は器ちっちゃくないですから!

戻ったグラウンドでは、既にあちこちの木陰を生徒が確保している模様。でも一番端っこの木の下が空いてた。ラッキー。ここ、芝もあるしゴツゴツしないね。シートを敷いて座って、お茶のペットボトルを2本置いて、真ん中に三段重。一番上は、枝豆やコーンのごはんをおにぎりにしたやつがぎっしり。美味しそう…!2段目3段目は予告通りフライドチキンです。やったね!!僕は取り皿とお箸をみずき君に渡しながら言った。

「お母さんの骨付きフライドチキン、美味しいんだよ。あの店にも負けてないよ」

「あの店?」

「白いお髭の…おっと、それ以上は僕の口からは言えないよ。オトナの事情ってやつだね…」

「大人の事情」

みずき君は頷いて、美味しそうにチキンを食べた。僕ももりもり食べた。

「ケチャップ使うならコレ爪楊枝でプチッとしてね」

いつもお弁当用にマヨネーズとかケチャップを持たせてくれる時、お母さんはラップに小さく風船みたいに丸く包んで捻って輪ゴムで留めて、爪楊枝を添えてくれる。使う時は爪楊枝でプチュッと突くとそこからケチャップが出る仕組み。僕はフライドチキンとかフライドポテトを食べる時には途中から味変したくなるから、ケチャップ必須なんですね。

みずき君はチキンにケチャップをかけて食べて、

「美味い。確かにあの店に負けてない」

と嬉しそうに言った。そんな顔見たら僕も嬉しくなって笑った。

「さっき1着、カッコよかったよ!」

僕が言うと、みずき君はちょっとビクッと肩を揺らした。来たか~って思ってるのかな。

「あー、うん、ありがと。…あのさ、ラン…怒って、ない?」

「あ、猫先輩のキスの事?」

「ああああれは不可抗力だったんだからね?」

珍しくうわずるみずき君。やっぱ気にしてたんだね…。僕はニコッと笑って答えた。

「やだなー。そんな事くらい見てたらわかるよ。…でも、抱っこしながら走ったのはなんで?そういう指示だったの?」

これはほんとに単純に不思議だったから、僕は首を傾げながら聞いた。そしたらみずき君はフルフル首を振った。

「いやあれは…ほら、俺、あの時だいぶ遅れてただろ?でもあの先輩、一昨日足首を捻挫して包帯巻いてるって話だったから、走ってもらうのは無理そうだなって思って」

「あ、そうだったんだ」

ジャージ履いてたしわからなかった。そうだったんだ。まあ、体育祭の練習で怪我したりもあるもんね。僕は謎が解けたなあと思って、ちょっとだけスッキリした。でも、そう言えばそもそもお題は何だったんだろう?

「みずき君、さっきのさ…、」

「あっ、いた~、さっきのイケメンく~ん」

聞こうとした時、僕のセリフに被せるように誰かの声がした。
声の方を見ると、さっきの猫先輩が僕とみずき君の前に立って、みずき君を見下ろしてる。
みずき君はちょっと顔を顰めてた。

「……さっきはどうもあざした」

頭だけを下げて、さっきの協力のお礼を言ってる。先輩だもんね。でもどこか不服そうなのは、きっと最後にされた頬っぺチューのせいだろうなあ。
でも先輩、何しに来たんだろ?

僕は猫先輩とみずき君を交互に見ていた。



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