ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

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「みずき君、ごめんね。僕、みずき君をボウトク?しちゃった。もうしないから許してほしい」

みずき君でやらしい事を想像して気持ちよくなってしまった罪悪感に耐えられなくて、僕はみずき君に自白してしまった。みずき君の初訪問から2日後の事だった。
そんな事言うの恥ずかしいって事より、みずき君に申し訳ない罪悪感が勝った結果だった。隠して普通に振る舞おうとしてもLIMEの遣り取りしてると、鋭いみずき君は何かを感じ取るのか、『なんか元気なくない?』とか、『大丈夫?お腹痛い?』とか、すっごく心配してくれるんだよね…。それが心苦しくて、なんでもないよ、って返すのが辛くなっちゃった。そんな訳で僕は、みずき君宅訪問の今日、駅まで迎えに来てくれたみずき君に開口一番謝罪の意を表明したってとこです。

みずき君は僕の謝罪にすごく不審げな顔をして、

「どういう事?冒涜?何に対する謝罪かちょっと見えてこないんだけど…」

とおっしゃいましたね。そりゃそうだよね。やっぱりちゃんと言わなきゃダメか。お父さんも、『人付き合いの基本は正直さと誠実さだぞ。』っていつも言ってるし。

覚悟を決めた僕は、みずき君にきちんと向き合って答える事にした。

「あのね。一昨日、僕のベッドでみずき君と寝たじゃん?夜寝る時にみずき君のいい匂いがしてね。なんかわかんないんだけど、すっごい気持ち良くなってきちゃって、それで自分でアソコをしご…」

「あーあー、あーっと、ラン?ちょっと場所変えて詳しく聞かせてくれる?」

「えっ、場所を?!」

「うん。ココ、真昼間の駅前だからね」

すごい勢いで止められてからの移動要請。周りをぐるっと見回したら、何してるの?って顔した駅利用者の皆さんや通行人の皆さんが不思議そうな顔で僕らを見ていた。あっ、しまった。目立っちゃってる。TPO大事だよね…。僕は失敗しちゃったなあと思いながらみずき君に視線を戻した。そこには、何とも言えない戸惑った表情のみずき君。
みずき君、怒って…る?
そうだよね…そりゃそうだ!
僕は覚悟を決め…(以下略)。

「わかった…行こうか」

「ラン?何でそんな死地に赴く傭兵みたいになってんの?」

「…覚悟を決めてるからね…」

「?」


その後みずき君は僕を、数メートル歩いたとこにあるビルとビルの間に引き入れた。湯川君のみずき君1年裏番説がチラッと頭を過ぎる。カツアゲ?…違う違う、みずき君はフリョーじゃないから。
僕が過ぎったそれを打ち消してたら、みずき君が僕を後ろのビルに壁ドンしてきて言った。ひゃあ、僕男子高校生なのに、い、イケメンに壁ドンされてる!!

「じゃあちょっと…さっきの詳細聞かせてくれる?」

「え?う、うん。実は…、」

僕は一昨日の夜、お風呂上がりのところからあった事を、詳しく話した。みずき君は最初、真面目な顔で聞いてたんだけど、途中からは真面目なのかよくわからない微妙な表情になってた。

「いや、ラン、それはさ…、」

とみずき君が何か言いかけてたけど、僕はクッと眉を寄せて無念さをアピール。

「ごめんね…。18になったら一緒にって決めてたのに…っ!」

「えっ、そこ?」

目を丸くしてるみずき君に、僕は頷いて続けた。

「本当にごめんね、僕だけみずき君であんなに気持ち良くなっちゃって。超反省してる。だから昨日は朝起きてからちゃんとカバー類を全部洗濯に出したよ。
同じ過ちを繰り返す訳にはいかないからね…」

対処は完璧で、昨夜はちゃんとすぐに眠れた。それを言うと、みずき君は何故かすごく残念そうな顔をした。

「替えちゃったかあ…」

「安心して。これで僕一人で抜け駆けなんてしないから!」

「抜け駆け…」

みずき君は壁ドンしたままちょっと何かを考えていたようだったけど、急にニコッと笑って僕を見下ろしてきた。

「ラン。大丈夫だよ。それ、俺もランの匂いでしてるよ。だからおあいこだね」

「えっ、みずき君も?!」

びっくりする僕にみずき君は言う。

「あのね、好きな人の匂いで興奮するのは当たり前だし自然な事だよ」

「それはわかるけど…でも僕、みずき君と約束したから…」

「それは2人でするセックスの話ね。ひとりエッチは良いの。ノーカウント」

「そ、そうなの?!」

驚く僕の頬に、みずき君はチュッとキスをしてくれながら言った。

「そうだよ。だって、ひとりでいくらしたって子供は出来ないだろ?」

「…ハッ…!」

それもそうだね!!

僕は驚きと尊敬の眼差しでみずき君を見つめた。

「うっ…ラン、可愛い…」

「みずき君、頭良い!!」

それからみずき君は今度は僕の唇にチュッとキスしてくれて、ギューッとハグしてから、手を繋いでそこから出た。

「あ、そうだ。あのね」

僕は聞かなきゃいけない事を思い出した。

「みずき君ち、ナッツとドライフルーツ好きかな?」

実は、僕はすっかり忘却の彼方だったんだけど、出掛けにお母さんに洒落たショップの袋を渡されたんだ。お菓子かなって思ったら、色んなナッツ類とドライフルーツの詰め合わせって言われた。
熊さんだからこっちかなって思ったらしいけど、ホントできるお母さんだよね。
みずき君はナッツと聞いて、パッと輝く笑顔になった。だから昼間は明度下げてよぅ。

「うん、菓子はあんまり食べないけど、みんなナッツは好きでよく食べてる」

「良かった!!」


初訪問の手土産は合格みたい。
僕らは手を繋いだまま、みずき君ちに向かった。










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