31 / 86
31
しおりを挟む「みずき君、ごめんね。僕、みずき君をボウトク?しちゃった。もうしないから許してほしい」
みずき君でやらしい事を想像して気持ちよくなってしまった罪悪感に耐えられなくて、僕はみずき君に自白してしまった。みずき君の初訪問から2日後の事だった。
そんな事言うの恥ずかしいって事より、みずき君に申し訳ない罪悪感が勝った結果だった。隠して普通に振る舞おうとしてもLIMEの遣り取りしてると、鋭いみずき君は何かを感じ取るのか、『なんか元気なくない?』とか、『大丈夫?お腹痛い?』とか、すっごく心配してくれるんだよね…。それが心苦しくて、なんでもないよ、って返すのが辛くなっちゃった。そんな訳で僕は、みずき君宅訪問の今日、駅まで迎えに来てくれたみずき君に開口一番謝罪の意を表明したってとこです。
みずき君は僕の謝罪にすごく不審げな顔をして、
「どういう事?冒涜?何に対する謝罪かちょっと見えてこないんだけど…」
とおっしゃいましたね。そりゃそうだよね。やっぱりちゃんと言わなきゃダメか。お父さんも、『人付き合いの基本は正直さと誠実さだぞ。』っていつも言ってるし。
覚悟を決めた僕は、みずき君にきちんと向き合って答える事にした。
「あのね。一昨日、僕のベッドでみずき君と寝たじゃん?夜寝る時にみずき君のいい匂いがしてね。なんかわかんないんだけど、すっごい気持ち良くなってきちゃって、それで自分でアソコをしご…」
「あーあー、あーっと、ラン?ちょっと場所変えて詳しく聞かせてくれる?」
「えっ、場所を?!」
「うん。ココ、真昼間の駅前だからね」
すごい勢いで止められてからの移動要請。周りをぐるっと見回したら、何してるの?って顔した駅利用者の皆さんや通行人の皆さんが不思議そうな顔で僕らを見ていた。あっ、しまった。目立っちゃってる。TPO大事だよね…。僕は失敗しちゃったなあと思いながらみずき君に視線を戻した。そこには、何とも言えない戸惑った表情のみずき君。
みずき君、怒って…る?
そうだよね…そりゃそうだ!
僕は覚悟を決め…(以下略)。
「わかった…行こうか」
「ラン?何でそんな死地に赴く傭兵みたいになってんの?」
「…覚悟を決めてるからね…」
「?」
その後みずき君は僕を、数メートル歩いたとこにあるビルとビルの間に引き入れた。湯川君のみずき君1年裏番説がチラッと頭を過ぎる。カツアゲ?…違う違う、みずき君はフリョーじゃないから。
僕が過ぎったそれを打ち消してたら、みずき君が僕を後ろのビルに壁ドンしてきて言った。ひゃあ、僕男子高校生なのに、い、イケメンに壁ドンされてる!!
「じゃあちょっと…さっきの詳細聞かせてくれる?」
「え?う、うん。実は…、」
僕は一昨日の夜、お風呂上がりのところからあった事を、詳しく話した。みずき君は最初、真面目な顔で聞いてたんだけど、途中からは真面目なのかよくわからない微妙な表情になってた。
「いや、ラン、それはさ…、」
とみずき君が何か言いかけてたけど、僕はクッと眉を寄せて無念さをアピール。
「ごめんね…。18になったら一緒にって決めてたのに…っ!」
「えっ、そこ?」
目を丸くしてるみずき君に、僕は頷いて続けた。
「本当にごめんね、僕だけみずき君であんなに気持ち良くなっちゃって。超反省してる。だから昨日は朝起きてからちゃんとカバー類を全部洗濯に出したよ。
同じ過ちを繰り返す訳にはいかないからね…」
対処は完璧で、昨夜はちゃんとすぐに眠れた。それを言うと、みずき君は何故かすごく残念そうな顔をした。
「替えちゃったかあ…」
「安心して。これで僕一人で抜け駆けなんてしないから!」
「抜け駆け…」
みずき君は壁ドンしたままちょっと何かを考えていたようだったけど、急にニコッと笑って僕を見下ろしてきた。
「ラン。大丈夫だよ。それ、俺もランの匂いでしてるよ。だからおあいこだね」
「えっ、みずき君も?!」
びっくりする僕にみずき君は言う。
「あのね、好きな人の匂いで興奮するのは当たり前だし自然な事だよ」
「それはわかるけど…でも僕、みずき君と約束したから…」
「それは2人でするセックスの話ね。ひとりエッチは良いの。ノーカウント」
「そ、そうなの?!」
驚く僕の頬に、みずき君はチュッとキスをしてくれながら言った。
「そうだよ。だって、ひとりでいくらしたって子供は出来ないだろ?」
「…ハッ…!」
それもそうだね!!
僕は驚きと尊敬の眼差しでみずき君を見つめた。
「うっ…ラン、可愛い…」
「みずき君、頭良い!!」
それからみずき君は今度は僕の唇にチュッとキスしてくれて、ギューッとハグしてから、手を繋いでそこから出た。
「あ、そうだ。あのね」
僕は聞かなきゃいけない事を思い出した。
「みずき君ち、ナッツとドライフルーツ好きかな?」
実は、僕はすっかり忘却の彼方だったんだけど、出掛けにお母さんに洒落たショップの袋を渡されたんだ。お菓子かなって思ったら、色んなナッツ類とドライフルーツの詰め合わせって言われた。
熊さんだからこっちかなって思ったらしいけど、ホントできるお母さんだよね。
みずき君はナッツと聞いて、パッと輝く笑顔になった。だから昼間は明度下げてよぅ。
「うん、菓子はあんまり食べないけど、みんなナッツは好きでよく食べてる」
「良かった!!」
初訪問の手土産は合格みたい。
僕らは手を繋いだまま、みずき君ちに向かった。
59
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。

オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる