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しおりを挟むそれから僕とみずき君は寝落ちちゃって、3時のオヤツにケーキを持って来てくれたお母さんの声で起こされて目が覚めた。ドアはちょっと開けてたんだけど、声を掛けても返事がないからって部屋に入ってきたお母さんに、額をくっつけてぐーすか寝てるとこ写真に撮られた。
「可愛かったから…」
だと、その後の取り調べで動機を吐いたけど…許されないよね。年頃の息子とその恋人の危うい場面を無断で撮影。許されないよ。
…でも後から画像送ってもらったけど。だってみずき君、寝顔もイケメンなんだよ。欲しいに決まってるじゃん。
みずき君はお母さんに見られて恥ずかしそうにしてたから要らないかなって思ったけど、後からコソッと『俺にもちょーだい?』って言われたからそっと共有ボタンを押した。
そのあと、みずき君が持ってきてくれたケーキを食べた。お母さんが4個お皿に載せてきてくれて、全部違う種類だったからそれぞれ半分こずつにして食べたんだけど、マンゴーとかメロンや他のフルーツがたくさん使われててすごく美味しかった。流石だよインゴット。さすイン。
「みずき君、ケーキたくさん持ってきてくれたよね。お金たくさんかかったでしょ」
って聞いたら、
「いや、ウチ小遣い要員いっぱいいるから」
って答えてくれた。小遣い要員…。
「親父も兄貴も姉貴も仕事してるから」
「そっか、すごい!」
「末っ子だからかな、頼んだら結構くれるよ」
「いいなあ」
「だから結構金持ちだよ、俺」
そう言って笑ったみずき君はフォーク使いも優雅だ。やっぱり貴賓だな…。みずき君ちはやっぱりお金持ちなんだろうなあ、と思う。僕んちはお父さんが会社員で、お母さんはパートしてる一般的な家。お小遣いの使い途は、学校帰りのに小腹が空いたときにちょっとしたオヤツを買うくらいだよ…って考えてて気がついちゃった…。僕も今度みずき君ちに僕も何か買ってかなきゃいけないんじゃない?!
僕は口の中のメロンを飲み込んでから聞いた。
「みずき君ちは、みんな何が好きっ?!」
「え、何急に…」
僕が突然質問したからか、みずき君はキョトンとしてる。それで、首を傾げながら言う。
「好きなって、何の事?」
「お菓子とか。お土産持ってかなきゃでしょ。みずき君みたいに!」
「いや…別にいらないと思うけど」
「最初が勝負って言うじゃん!!」
「勝負?」
「みずき君の恋人として!好印象を持ってもらいたいんだよ!」
僕が力説したらみずき君は目を丸くしたけど、ちょっと笑いながら言ってくれた。
「別に特別に何か持ってかなくても、ランは元気に挨拶するだけで良い子だって思われるよ」
何も特別なものを持たずに元気に挨拶。それじゃ学校と変わらないじゃん。それじゃだめじゃん。
僕はむむぅ、と唸って腕を組んだ。そんな僕を見て、みずき君は続けて言う。
「ウチの家族はみんなそんなにケーキや菓子を食べないし…そんなに気を使わなくて大丈夫」
「そんなぁ…」
なんて事だ。甘いもの好きじゃない家族だなんて。早くも行き詰まった僕は頭を抱えそうになった。どうしたら良いんだ。持ってくもの、何も思いつかない。
悩み出した僕にみずき君は、優しい声で言う。
「そんな悩まなくても、ランは絶対ウチの家族に気に入られるよ」
「…そうかなあ?」
「そうだよ」
みずき君は僕を好きだからそう思うだけじゃないかなあ。チビのレッサーなんかウチのみずきにはふさわしくありませんっ!!って言われちゃったらどうしよう。
なんだか不安で胸がいっぱい。ケーキめちゃおいしい…。
そんなこんなでオヤツを食べ終わった僕は、みずき君のリクエストで家の近所を案内して歩く事になった。
みずき君はこの辺には来た事がないらしい。3駅って微妙だよね。近いようだけど、誰か知り合いがいるとか用があるんじゃなきゃ行く事もないし。僕もみずき君ちの最寄り駅って駅前しか知らないもん。
って事で、まずはいつも行く一番近いコンビニ。まあ全国チェーンだからどこの店舗も大体同じですけど!
次に、小さい頃からよく行ってたお菓子屋さん。お客はいつも子供が多くて、他のとこでは珍しいお店らしい。ちっちゃくてまるい純人のおばあちゃんがやってるんだけど、駄菓子っていうのかな、いろんな種類の20円とか30円とかの小さいお菓子がたくさん売ってる。クジ引きとかもあるんだけど、見た事ないようなオモチャが当たる時もあるけど、たいていは小さいガムとか小袋の甘納豆の時が多くてすごい温度差がある。お父さんが小さい頃には同じようなお店が近所にもう一軒あったんだって。
せっかくだからってみずき君とクジ引いたけど、みずき君が黄色いめちゃくちゃ跳ねる小さいボールを当てて、僕はガムだったから、相変わらず安定の仕様だなって思った。
それからいつも行くパン屋さん。夕方行くと、よくおまけにパン1個くれる。その隣りにはお母さんがパートしてるスーパー。結構広くてキレイ。それからお団子が美味しい庶民的な和菓子屋さんに、本屋さんとか色々。
たまにご挨拶する小さな神社の前を通って、何年ぶりかに通ってた小学校にも行った。僕の住んでる街をみずき君と一緒に歩くのは、とっても楽しかった。
そして、みずき君ちに持ってくお土産に悩んでた事をすっかり忘れちゃったのだった。
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