ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

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誤解しないで欲しいんだけど、上手く想像ができないってだけで、セッ…クスがどういうものかくらいは知ってるからね?
性交渉って事でしょ?
僕だって子供じゃないから、それくらいはね。
なんかこう…フェロモンで興奮するとムラムラするんでしょ。
なんか裸で抱き合って、体中をはみはみしながらぺろぺろするんだよね。そんであまつさえあんなとこをスリスリするんでしょ…。

……具体的に想像したら顔が熱くなってきたけど、全然大丈夫だから。なんたって僕、みずき君と何度もキスしてるしね。
 
オトナの階段、確実にのぼってるから。






がっくりうなだれたままのみずき君に、僕の部屋で休む?って聞いたら、こくっと頷いた。

「じゃ、いこ」

「うん…」

「後でお茶とケーキ持って行くわね~」

お母さんののんびりした声に背中を押されて、僕達は部屋に向かった。

部屋に入ると、みずき君は肩がピクッと動かして、顔を上げた。それで、クンクン鼻を動かしながら言う。

「ランの匂いする…」

「えっ、うそ!消臭したのに!」

あんなに頑張ったのに~。
ショックを受ける僕を尻目に、みずき君は部屋の中を彷徨い始めた。ワァ、みずき君が僕の部屋にいるゥ~。でも何で徘徊始めちゃったの?

初めて恋人が部屋に来た感動と、その恋人の奇行に真顔になってしまう僕。
え?こういうものなの?恋人の初訪問って。

「…みずき君?寝るならベッド貸すけど…」

ウロウロするみずき君の後ろをついて歩きながらそう言ったけど、みずき君はそれどころじゃないみたい。 
仕方ないから気がすむまでおつきあいする事にした。

ウロウロ…ウロウロ…

トコトコ…トコトコ…

勉強机、椅子、カーペット、窓辺のカーテン、あ、窓開けっ放しだった!そこから2人で周囲を見渡して、また部屋の中に戻ってクッション、ベッド…。

「あっ、ここだ…!」

「えっ、何が?!」

「こっからランの匂いがする、すっごくする!!」

みずき君は高らかに言い放って、僕の枕をガバッと持ち上げた。そして、顔をうずめちゃった…。

「ややや、やめてよみずき君!!」

しまったよ、枕カバー替えるつもりだったのに忘れてた!くっ…むねん…。  
みずき君は僕の枕をスーハーしてたと思ったら、急にベッドにパタンと倒れ込んでしまった。

「み、みずき君?!」

「…ぅう~…きもちいい~…」

「えっ?」

きもちいい?

びっくりして見ていたら、みずき君は僕の枕を抱きしめて顔を埋めたまま、布団の上にごろごろと転がってる。
なんかマタタビ酔いしてる猫みたいで可愛い。

まあでもなんか元気そうだし大丈夫かなと思ってちょっと様子見てたんだけど、その内みずき君はスッと起き上がって、モゾモゾと布団の中に入ってしまった。
…まあ、うん。元々ベッド貸すつもりだったから良いんだけどさ。

「…すーはー、すーはー…あぁー…ランの匂いが濃い…幸せぇ…」

「…そんなに?」

シーツは昨日替えたんだけどなぁ。布団カバーは3日前くらいだから染み付いちゃってるのかな。…でも僕、そんなに臭う?恥ずかしくなってきたんだけど。
というか、僕本体がココにいるのに匂いが付いたカバーとかのが良いって、困惑だよみずき君…。

僕は若干しょんぼりしながら布団にくるまったみずき君をベッド横に座って眺めた。
うっとりした顔で目を閉じてるみずき君。いつものカッコ良いのと違ってキュンキュンするくらい可愛いけど、このまま寝ちゃうのかな?
でもさっき具合い悪そうだったし、仕方ないか。

しばらく好きに寝かせといてあげようと思って立ち上がろうとしたら、みずき君に手首を掴まれてベッドに引き倒された。

「みずき君、寝ないの?」

「寝るけど…」

みずき君の綺麗な目が、何だかうるうる濡れてるように見えてドキッとする。リンゴの匂いもすごく濃くなってる。これ、みずき君のフェロモンだよね。
それに気づいて、遅ればせながらピンときた。

「あっ、もしかしてこれって…」

噂に聞くフェロモン酔いだね?
オメガがアルファの匂いに反応しちゃってゴロニャン状態になっちゃうアレだね?
オメガをその状態にさせたら、アルファも一人前って言われてる、アレだよね?!

はっ

という事は僕、もう一人前??!

……なわけないか。

目の前のみずき君の顔は紅潮してて、ちょっと息が速い。僕の手首を掴んでる手も、何時もより熱いみたい。
でも普通はオメガがヒート前になる事が多いんだって聞くけど、まさかね。抑制剤効くようになったって言ってたし。

「みずき君、大丈夫?ヒート来そうとかになってない?」

そう聞いてみたら、みずき君は小さく首を振った。

「ううん、近い感じだけど…ヒートじゃないと思う。ちょっと嬉しくてはしゃいじゃったわ…」

ホッ、良かった。
ちょっと力が抜けちゃって布団に沈み込んだら、みずき君は僕の手首を離して指を絡ませてきた。やっぱり指も熱い。

「ラン、好きだ…」

「うん、僕も大好き」

僕の答えにふにゃあと笑ったみずき君の顔は、普段より幼く見えるのに何故だかドキドキしてしまう。

(可愛い、な…)

僕よりずっとおっきくて、カッコ良くて、イケメンで、でもこうして2人で寝転ぶとすっごく可愛くなるみずき君はすごい。あらゆる要素兼ね備えてる。さすみず。

「とってもとっても大好きだよ、みずき君」

僕は、僕の布団の中のみずき君の唇に、ちゅっと唇をおしあてた。

キスは良いんだもんね。


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