28 / 86
28
しおりを挟む誤解しないで欲しいんだけど、上手く想像ができないってだけで、セッ…クスがどういうものかくらいは知ってるからね?
性交渉って事でしょ?
僕だって子供じゃないから、それくらいはね。
なんかこう…フェロモンで興奮するとムラムラするんでしょ。
なんか裸で抱き合って、体中をはみはみしながらぺろぺろするんだよね。そんであまつさえあんなとこをスリスリするんでしょ…。
……具体的に想像したら顔が熱くなってきたけど、全然大丈夫だから。なんたって僕、みずき君と何度もキスしてるしね。
オトナの階段、確実にのぼってるから。
がっくりうなだれたままのみずき君に、僕の部屋で休む?って聞いたら、こくっと頷いた。
「じゃ、いこ」
「うん…」
「後でお茶とケーキ持って行くわね~」
お母さんののんびりした声に背中を押されて、僕達は部屋に向かった。
部屋に入ると、みずき君は肩がピクッと動かして、顔を上げた。それで、クンクン鼻を動かしながら言う。
「ランの匂いする…」
「えっ、うそ!消臭したのに!」
あんなに頑張ったのに~。
ショックを受ける僕を尻目に、みずき君は部屋の中を彷徨い始めた。ワァ、みずき君が僕の部屋にいるゥ~。でも何で徘徊始めちゃったの?
初めて恋人が部屋に来た感動と、その恋人の奇行に真顔になってしまう僕。
え?こういうものなの?恋人の初訪問って。
「…みずき君?寝るならベッド貸すけど…」
ウロウロするみずき君の後ろをついて歩きながらそう言ったけど、みずき君はそれどころじゃないみたい。
仕方ないから気がすむまでおつきあいする事にした。
ウロウロ…ウロウロ…
トコトコ…トコトコ…
勉強机、椅子、カーペット、窓辺のカーテン、あ、窓開けっ放しだった!そこから2人で周囲を見渡して、また部屋の中に戻ってクッション、ベッド…。
「あっ、ここだ…!」
「えっ、何が?!」
「こっからランの匂いがする、すっごくする!!」
みずき君は高らかに言い放って、僕の枕をガバッと持ち上げた。そして、顔をうずめちゃった…。
「ややや、やめてよみずき君!!」
しまったよ、枕カバー替えるつもりだったのに忘れてた!くっ…むねん…。
みずき君は僕の枕をスーハーしてたと思ったら、急にベッドにパタンと倒れ込んでしまった。
「み、みずき君?!」
「…ぅう~…きもちいい~…」
「えっ?」
きもちいい?
びっくりして見ていたら、みずき君は僕の枕を抱きしめて顔を埋めたまま、布団の上にごろごろと転がってる。
なんかマタタビ酔いしてる猫みたいで可愛い。
まあでもなんか元気そうだし大丈夫かなと思ってちょっと様子見てたんだけど、その内みずき君はスッと起き上がって、モゾモゾと布団の中に入ってしまった。
…まあ、うん。元々ベッド貸すつもりだったから良いんだけどさ。
「…すーはー、すーはー…あぁー…ランの匂いが濃い…幸せぇ…」
「…そんなに?」
シーツは昨日替えたんだけどなぁ。布団カバーは3日前くらいだから染み付いちゃってるのかな。…でも僕、そんなに臭う?恥ずかしくなってきたんだけど。
というか、僕本体がココにいるのに匂いが付いたカバーとかのが良いって、困惑だよみずき君…。
僕は若干しょんぼりしながら布団にくるまったみずき君をベッド横に座って眺めた。
うっとりした顔で目を閉じてるみずき君。いつものカッコ良いのと違ってキュンキュンするくらい可愛いけど、このまま寝ちゃうのかな?
でもさっき具合い悪そうだったし、仕方ないか。
しばらく好きに寝かせといてあげようと思って立ち上がろうとしたら、みずき君に手首を掴まれてベッドに引き倒された。
「みずき君、寝ないの?」
「寝るけど…」
みずき君の綺麗な目が、何だかうるうる濡れてるように見えてドキッとする。リンゴの匂いもすごく濃くなってる。これ、みずき君のフェロモンだよね。
それに気づいて、遅ればせながらピンときた。
「あっ、もしかしてこれって…」
噂に聞くフェロモン酔いだね?
オメガがアルファの匂いに反応しちゃってゴロニャン状態になっちゃうアレだね?
オメガをその状態にさせたら、アルファも一人前って言われてる、アレだよね?!
はっ
という事は僕、もう一人前??!
……なわけないか。
目の前のみずき君の顔は紅潮してて、ちょっと息が速い。僕の手首を掴んでる手も、何時もより熱いみたい。
でも普通はオメガがヒート前になる事が多いんだって聞くけど、まさかね。抑制剤効くようになったって言ってたし。
「みずき君、大丈夫?ヒート来そうとかになってない?」
そう聞いてみたら、みずき君は小さく首を振った。
「ううん、近い感じだけど…ヒートじゃないと思う。ちょっと嬉しくてはしゃいじゃったわ…」
ホッ、良かった。
ちょっと力が抜けちゃって布団に沈み込んだら、みずき君は僕の手首を離して指を絡ませてきた。やっぱり指も熱い。
「ラン、好きだ…」
「うん、僕も大好き」
僕の答えにふにゃあと笑ったみずき君の顔は、普段より幼く見えるのに何故だかドキドキしてしまう。
(可愛い、な…)
僕よりずっとおっきくて、カッコ良くて、イケメンで、でもこうして2人で寝転ぶとすっごく可愛くなるみずき君はすごい。あらゆる要素兼ね備えてる。さすみず。
「とってもとっても大好きだよ、みずき君」
僕は、僕の布団の中のみずき君の唇に、ちゅっと唇をおしあてた。
キスは良いんだもんね。
66
お気に入りに追加
1,381
あなたにおすすめの小説
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる