ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

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「私も、嵐太がアルファだとわかった時に、アルファとオメガの事について妻と一緒に色々勉強したんだ。私達はどちらもベータだから、知らない事や、改めて驚かされる事も多かった」

そう言ったお父さんの顔を、僕は驚いてまじまじと見つめてしまった。そんな事してくれてたんだ、知らなかった…。

「嵐太がアルファだという事で何かに躓いた時、少しでもサポートできるようにしたいと、まあそう思っていたんだ…」

僕、感動でウルッときちゃった。やっぱりお父さんってお父さんなんだなあ…。

「が。ウチの息子、この調子で、今のところは取り越し苦労で終わっている訳なんだが…」

…この調子?
それってどういう意味だろ?

「いや、全然心配無くて良かったなって事だよ」

何故か慌てたようにフォローを入れてくるとこが気になりますねえ。
お父さんは僕のジト目に少し苦笑してから話しを続けた。

「いやな。仕事関係の知り合いに、何人かアルファの方がいるんだ。そんな方達はやはりお子さんもアルファだったりして、色々大変そうな様子を聞いていたんだよ」

「大変そうって、どんな?」

僕が聞くと、みずき君も不思議そうにお父さんを見てた。お母さんはお父さんの傍で訳知り顔で黙ってる。

「まあ、そんなご家庭ばかりではないと思うんだが…」

そんな前置きをしてから、お父さんは続けた。


お父さんの知り合いのアルファのKさんという人には、やっぱりアルファの息子さんがいるらしい。それで、その息子さんが高校生の頃に覚醒して間もなく、出会って間も無いオメガの子のヒートフェロモンに誘われて、噛んで番にしちゃったらしい。
覚醒したてや、若いアルファの中にはまだ自制の利かない人もいるから、そんな事も起こり得るんだね。
で、問題なのはここから。
普通のベータカップルの場合に比べて、アルファとオメガのカップルだとヒート時の妊娠率が激高なのはよく知られてると思うんだけど、番にされたそのオメガの子も、その時まんまと妊娠しちゃったらしい。で、それを親に言い出せずにいる間に、オメガの子の親御さんが異変を感じて事が発覚。
いくらアルファといっても、高校生。学生だ。まだ経済的に自立してない。それに、番になるのは原則18歳になってからって決まってるから、もし学校にバレたら退学。
で、さっきのKさんの息子さんも番の子も、やっぱり知られて退学処分になっちゃったんだそうだ。番になったオメガの子も退学になって、双方の両親を交えた話し合いがなされた。その結果、Kさんご夫婦が、2人と産まれてくる子供を、18歳までは責任持って面倒を見る事になったらしい。で、息子さんはKさんの手配した土建屋さんに就職させてしまった。しかも、息子さんが18歳になったその日に家から追い出して独立させちゃったんだって。
 
『常々気をつけろと言っていたのに暴走したのはあの馬鹿。せいぜい自力で責任をとっていけば良い。』

って、父さんに話してくれたKさんは、深~い溜息を吐いていたらしい…。



「ひ、ひょえぇ…」

「…」

なんて事だ…。
番になって、子供できちゃって、学校退学になって大学行けなくなって、想定外の職業につかなきゃいけなくなって…。
学生でも大学生だったら多分、状況は全然変わったんだろうけど高校生でこれはリスクが高過ぎるよね…人生設計変わっちゃうよね。
本人達2人だけの問題じゃないんだ、未成年者2人だけじゃ自分の事にすら責任能力って無いんだ…。

おつきあいを始めてからずっと浮かれっぱなしだった僕とみずき君は真っ青になって、悲鳴と絶句する事しか出来なくなった。

どうしよう…僕達もキスしちゃってる…。

僕はみずき君のお腹の辺りを、目を細めて観察してみた。いや、早いか。流石に早いか。初めてキスしてまだ何週間?流石にない。それくらいは僕にもわかる。
あと、多分だけどキスだけじゃ子供は出来なかったはず…。
安心した僕は、こくりと頷いてからお父さんに視線を戻した。

「まあ、Kさんのとこほどじゃないが、似たような状況になった話は他にも聞いた事がある。
だから、つまりね。何が言いたいかと言うと、」

お父さんは僕とみずき君を交互に見ながら、噛んで含めるように言った。

「壱与君は抑制剤が効くようになって何より。引き続き頑張ってヒートを乗り切ろう。嵐太は…まあ当分大丈夫だろうが、その内オトナになってきても壱与君のお色気にアテられてガオーしないように頑張ろう」

「…はい」

「うん?」

「平たく言うと、念の為、高校生の間はエッチは禁止って事だ。万が一の事があった時に責任取れないし、お互いの人生も周囲の状況も変えちゃうからね」

その途端、朝顔が萎れてくみたいにがっくりうなだれたみずき君にびっくりした僕。

「大丈夫?!どうしたのみずき君!!?」

「…大丈夫だよ、ラン。何でもない…何でもないんだ…ウッ」

手で口を覆ってるみずき君。泣いてるのかな、そんなにショックだったのかな。僕はみずき君の背中をさすってあげる事しかできなかった。
お父さんもみずき君の様子に困惑してたし、お母さんはなんか可哀想なものを見る顔してる。

「まあ、若い2人には酷かもしれないけど…手前で踏みとどまるように頑張ってね」

何か気遣う感じの声で言われて、みずき君は伏せったまま、

「…わかりました…」

と言った。僕も同じように返事をしようとして、気になった事をお父さんに聞いてみた。

「わかったけど、キスってどうなんだろう?やっぱり危険かなあ…?」

「「「……」」」

ちょっとの間、部屋の中に沈黙が流れたあと、静かな声でお父さんが答えてくれた。

「…まあ、キスくらいは…良いんじゃないか?」

「やった~!良かったね、みずき君!キスは良いって!」

「…うん、良かった…」

そう言った時のみずき君のハイライトの消えた目と、『もうキスまで進んでたのか、危なかった。』っていうお父さんの呟きが印象的だった。

でもエッチって、保体の授業受けてもいまいちリアルに想像できないよね。






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