ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

文字の大きさ
上 下
25 / 86

25

しおりを挟む

掃除機、かけた。埃取りワイパー、やった。コロコロで毛を…取った。散らかしてた服とかマンガ…片付けた。ごみ箱…中身捨てたばっか。換気よし。
…換気のついでに消臭スプレーしとこう。もち、無臭のやつね。
最近はみずき君がマーキングを調整してくれて、前がMAX5だとしたら、今は3くらい。所有権を主張しつつも日常生活に支障をきたさないギリギリだってみずき君は言ってた。確かに食べ物の匂いも戻ってきたから食欲も完全に元通り! 
安心したよ。病院で病気じゃないって言われて、みずき君からマーキングだったって聞かされてから少しはマシになってたけど、しっくりこない感じだったんだよね。あのまま微・食欲不振が続いたら痩せちゃって、縦にも伸びなくなるかもって危ぶまれたからホント良かった…ふう。

部屋のチェックを終わって、そろそろだなあと思いながらリビングに行ったら、お父さんがソファに座ってて、難しい顔でテレビを観ていた。お父さんが何か思考している!仕事に関係する世界情勢とか経済問題とかかな!!と、僕も隣に座って観る事にした。

CMを挟んで再開したのは、子供向けアニメだった。

どうしたのお父さん。そんなの観てた事無かったじゃん、と顔を覗き込んでみたら、お父さん、何だか固まってた。

その時玄関のチャイムが鳴って、お父さんの肩がビクッとしたと思ったら、はいは~いというお母さんの声とパタパタという足音が聞こえた。
みずき君が来た!僕も迎えに出なきゃ!
ソファから立ち上がって、急いで玄関に向かう。玄関には、お母さんと話してるみずき君。お?なんだろう?お母さんはみずき君から何かしらの箱を手渡されて嬉しそうです。賄賂かな?

「みずき君、いらっしゃい!!」

と声を掛けて抱きついたら、

「ラン、今日はお招きありがとう」

って上品でお行儀の良い言葉が返ってきた。
今日のみずき君、髪も片側上げて、いつもと違って更にカッコ良い。丸い耳もピンッとしてる。
僕は3歩後ろに後退って、目を細めてみずき君を観察した。初めて見た私服、すごくカッコ良い。ブルーのシャツに黒のパンツ、黒にシルバーのラインの入ったシューズ。シルバーのバングルもめちゃ似合う。どうしたの?パリコレのランウェイ歩きに来たの?ウチは極東の小国の木の実町三丁目にある一般家庭だよ?オシャレさんにも程があるよ。そして足が長過ぎる。

僕はうぅむと唸ってみずき君に感想を述べた。

「みずき君は菓子の木街の生んだ奇跡だね」

「範囲せっま」


 

時刻は午前11時。何で初訪問をこんな時間に設定したかといえば、それはお昼ご飯にも誘ったから。
せっかくだからお昼はお鮨を桶で頼もうか、ってお母さんが提案してくれた。
でも、お鮨なんて高いじゃんって言ったら、

『ウチは連休とかに出かけないんだからこんな時くらい贅沢しましょ!』

って。お父さんも、そうだなって頷いて、決定。
お鮨は連休中も営業するという、近所の門左衛門鮨しで頼む事にして、もうお母さんが注文してた。前にみずき君もお鮨好きだって聞いてたから、一緒に食べるのが楽しみ。

「こっち、リビングこっちだよ」

「はいはい」

玄関で靴を揃える躾の行き届いたみずき君に心でいいねを連打して、右手に抱きついて引っ張る。
お母さんがみずき君から受け取ってたのは、菓子の木街駅前にある有名なパティスリーの箱だったらしくて、お母さんは嬉しそう。冷蔵庫に入るかしらぁ~、なんて浮かれながらキッチンに入っていった。
僕はみずき君とリビングへ。
みずき君はソファに座ってるお父さんに気づいて、すごく良い姿勢でお辞儀をした。

「お邪魔します。初めまして、壱与 瑞希です」

ゆ、優雅~。モデルかと思ってたら、王子様だった。見蕩れる僕。
さっき珍しく厳しい顔をしてたお父さんは、そんなみずき君を見て、ほけっと間の抜けた顔になっていた。お父さん、さっきは緊張してたのかなあ?

「あ、ああ…君が壱与君。よく来たね。いつも嵐太と仲良くしてくれてありがとう」

ほけ~っとしたままだけど、ちゃんと大人の対応を見せるお父さん。良いよ~ナチュラルだよ~。
どうやらマイスィートみずき君の美貌は、ビビりなお父さんの緊張すら溶かしてしまうもよう。さすみず。

「まぁ、掛けなさい」

「ありがとうございます」

ニコッと笑って勧められたソファに座るみずき君。すごい。学校に居る時より破壊力増してる。もうこれタダのお客様じゃないね。貴賓だね、貴賓。

みずき君のそばに僕も腰を下ろして、ちょっとの間部屋の中が静かになったけど、すぐにお母さんがお茶の載ったトレイを持って、リビングをちょっと覗いて言った。

「あら?壱与君、嵐太のお部屋じゃなくて良いの?」

お母さん、僕の部屋にお茶を持って行こうと思ってくれたらしい。

「あ、はい。せっかくだからお父さんともお話してみたくて」

「そんなの、お昼食べながらでも良かったのに」

お母さんは笑いながらリビングに入ってきて、目の前のガラステーブルにグラスを置いてお茶を入れてくれた。
 
「みずき君にインゴッドのケーキいただいたから、おやつに出すわね。壱与君、ありがとう」

お店の名前を聞いて、実は甘いもの好きのお父さんも目を輝かせる。

「え、あの店の…?それは嬉しいな、ありがとう壱与君」

「いえいえ、何時でも持ってきますよ」

みずき君、大人と話すの慣れてるのかな。あまりに自然過ぎない?ホントに同い年の高校生?

みずき君にはまだまだ僕の知らない顔があるみたい。













しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

助けたキツネが恩返しにきました。もふもふはいるだけで幸せです。

三園 七詩
ファンタジー
いじめられていたキツネの子供を助けると人の姿で恩返しにきた。 キツネの子との生活に心を癒されるジャック。 幸せな二人の生活だったが……幸せを邪魔する影が…

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

【完結】ハーレムルートには重要な手掛かりが隠されています

天冨七緒
BL
僕は幼い頃から男の子が好きだった。 気が付いたら女の子より男の子が好き。 だけどなんとなくこの感情は「イケナイ」ことなんだと思って、ひた隠しにした。 そんな僕が勇気を出して高校は男子校を選んだ。 素敵な人は沢山いた。 けど、気持ちは伝えられなかった。 知れば、皆は女の子が好きだったから。 だから、僕は小説の世界に逃げた。 少し遠くの駅の本屋で男の子同士の恋愛の話を買った。 それだけが僕の逃げ場所で救いだった。 小説を読んでいる間は、僕も主人公になれた。 主人公のように好きな人に好きになってもらいたい。 僕の願いはそれだけ…叶わない願いだけど…。 早く家に帰ってゆっくり本が読みたかった。 それだけだったのに、信号が変わると僕は地面に横たわっていた…。 電信柱を折るようにトラックが突っ込んでいた。 …僕は死んだ。 死んだはずだったのに…生きてる…これは死ぬ瞬間に見ている夢なのかな? 格好いい人が目の前にいるの… えっ?えっ?えっ? 僕達は今…。 純愛…ルート ハーレムルート 設定を知る者 物語は終盤へ とあり、かなりの長編となっております。 ゲームの番外編のような物語です、何故なら本編は… 純愛…ルートから一変するハーレムルートすべての謎が解けるのはラスト。 長すぎて面倒という方は最終回で全ての流れが分かるかと…禁じ手ではありますが

処理中です...