ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

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掃除機、かけた。埃取りワイパー、やった。コロコロで毛を…取った。散らかしてた服とかマンガ…片付けた。ごみ箱…中身捨てたばっか。換気よし。
…換気のついでに消臭スプレーしとこう。もち、無臭のやつね。
最近はみずき君がマーキングを調整してくれて、前がMAX5だとしたら、今は3くらい。所有権を主張しつつも日常生活に支障をきたさないギリギリだってみずき君は言ってた。確かに食べ物の匂いも戻ってきたから食欲も完全に元通り! 
安心したよ。病院で病気じゃないって言われて、みずき君からマーキングだったって聞かされてから少しはマシになってたけど、しっくりこない感じだったんだよね。あのまま微・食欲不振が続いたら痩せちゃって、縦にも伸びなくなるかもって危ぶまれたからホント良かった…ふう。

部屋のチェックを終わって、そろそろだなあと思いながらリビングに行ったら、お父さんがソファに座ってて、難しい顔でテレビを観ていた。お父さんが何か思考している!仕事に関係する世界情勢とか経済問題とかかな!!と、僕も隣に座って観る事にした。

CMを挟んで再開したのは、子供向けアニメだった。

どうしたのお父さん。そんなの観てた事無かったじゃん、と顔を覗き込んでみたら、お父さん、何だか固まってた。

その時玄関のチャイムが鳴って、お父さんの肩がビクッとしたと思ったら、はいは~いというお母さんの声とパタパタという足音が聞こえた。
みずき君が来た!僕も迎えに出なきゃ!
ソファから立ち上がって、急いで玄関に向かう。玄関には、お母さんと話してるみずき君。お?なんだろう?お母さんはみずき君から何かしらの箱を手渡されて嬉しそうです。賄賂かな?

「みずき君、いらっしゃい!!」

と声を掛けて抱きついたら、

「ラン、今日はお招きありがとう」

って上品でお行儀の良い言葉が返ってきた。
今日のみずき君、髪も片側上げて、いつもと違って更にカッコ良い。丸い耳もピンッとしてる。
僕は3歩後ろに後退って、目を細めてみずき君を観察した。初めて見た私服、すごくカッコ良い。ブルーのシャツに黒のパンツ、黒にシルバーのラインの入ったシューズ。シルバーのバングルもめちゃ似合う。どうしたの?パリコレのランウェイ歩きに来たの?ウチは極東の小国の木の実町三丁目にある一般家庭だよ?オシャレさんにも程があるよ。そして足が長過ぎる。

僕はうぅむと唸ってみずき君に感想を述べた。

「みずき君は菓子の木街の生んだ奇跡だね」

「範囲せっま」


 

時刻は午前11時。何で初訪問をこんな時間に設定したかといえば、それはお昼ご飯にも誘ったから。
せっかくだからお昼はお鮨を桶で頼もうか、ってお母さんが提案してくれた。
でも、お鮨なんて高いじゃんって言ったら、

『ウチは連休とかに出かけないんだからこんな時くらい贅沢しましょ!』

って。お父さんも、そうだなって頷いて、決定。
お鮨は連休中も営業するという、近所の門左衛門鮨しで頼む事にして、もうお母さんが注文してた。前にみずき君もお鮨好きだって聞いてたから、一緒に食べるのが楽しみ。

「こっち、リビングこっちだよ」

「はいはい」

玄関で靴を揃える躾の行き届いたみずき君に心でいいねを連打して、右手に抱きついて引っ張る。
お母さんがみずき君から受け取ってたのは、菓子の木街駅前にある有名なパティスリーの箱だったらしくて、お母さんは嬉しそう。冷蔵庫に入るかしらぁ~、なんて浮かれながらキッチンに入っていった。
僕はみずき君とリビングへ。
みずき君はソファに座ってるお父さんに気づいて、すごく良い姿勢でお辞儀をした。

「お邪魔します。初めまして、壱与 瑞希です」

ゆ、優雅~。モデルかと思ってたら、王子様だった。見蕩れる僕。
さっき珍しく厳しい顔をしてたお父さんは、そんなみずき君を見て、ほけっと間の抜けた顔になっていた。お父さん、さっきは緊張してたのかなあ?

「あ、ああ…君が壱与君。よく来たね。いつも嵐太と仲良くしてくれてありがとう」

ほけ~っとしたままだけど、ちゃんと大人の対応を見せるお父さん。良いよ~ナチュラルだよ~。
どうやらマイスィートみずき君の美貌は、ビビりなお父さんの緊張すら溶かしてしまうもよう。さすみず。

「まぁ、掛けなさい」

「ありがとうございます」

ニコッと笑って勧められたソファに座るみずき君。すごい。学校に居る時より破壊力増してる。もうこれタダのお客様じゃないね。貴賓だね、貴賓。

みずき君のそばに僕も腰を下ろして、ちょっとの間部屋の中が静かになったけど、すぐにお母さんがお茶の載ったトレイを持って、リビングをちょっと覗いて言った。

「あら?壱与君、嵐太のお部屋じゃなくて良いの?」

お母さん、僕の部屋にお茶を持って行こうと思ってくれたらしい。

「あ、はい。せっかくだからお父さんともお話してみたくて」

「そんなの、お昼食べながらでも良かったのに」

お母さんは笑いながらリビングに入ってきて、目の前のガラステーブルにグラスを置いてお茶を入れてくれた。
 
「みずき君にインゴッドのケーキいただいたから、おやつに出すわね。壱与君、ありがとう」

お店の名前を聞いて、実は甘いもの好きのお父さんも目を輝かせる。

「え、あの店の…?それは嬉しいな、ありがとう壱与君」

「いえいえ、何時でも持ってきますよ」

みずき君、大人と話すの慣れてるのかな。あまりに自然過ぎない?ホントに同い年の高校生?

みずき君にはまだまだ僕の知らない顔があるみたい。













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