ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

文字の大きさ
上 下
24 / 86

24

しおりを挟む

今日はお休み。
でもタダのお休みじゃない。

今日はなんと、ウチにみずき君が来る日なのです!!


おつきあいして2週間ちょい。僕とみずき君の仲はすこぶる順調です。そんなある日のお昼休み。一緒に中庭でお弁当を食べてる時に、ふとみずき君に聞いてみたんですよ。

『もうすぐゴールデンウィークだね』

『そう言えばそうだね』

『みずき君ちはどっか行く予定あるの?旅行とか』

みずき君はお母さん特製ハムチーズサンドを食べながら、うーんと首を捻って答えてくれた。あざと可愛い。
ウチのお母さんのサンドイッチ、食パンで具を挟みっぱなしのカットしないやつ。だからパッと見、食パンそのまま食べてるみたいに見える。

『いや、ウチは連休はあんまり遠出とかしないな。どこも混むし』

『ウチもだよ!同じだね!』

『そうなんだ?』

やっぱりそうだよねぇ。新幹線もいっぱいだし飛行機もホテルも高くなるし、道路は渋滞するし。小学生の頃に一度、他府県のテーマパークに行くのに家族3人車で行って2泊3日したんだけど、帰りに高速が事故渋滞してさ。トイレ行きたくなるしお腹は空くし大変だった。それ以来みんな懲りて、連休にどこか行きたいなんて禁句になったんだよね…。連休に高速はどマゾだよ。

僕は苦い記憶をぎゅっぎゅっと封印の小箱に詰めながらみずき君に聞いた。

『じゃあお家でずっと?』

『そうだな、ゴロゴロしてる。マンガ読んだりゲームしたり寝たり』

『僕も~』

みずき君も同じような事して休みを過ごしてるのか~って、ちょっと嬉しくなった僕、単純。長い休み、嬉しいな~。…と思ってたら、はたと超重大な事に気づいた。気づいてしまった。

『…学校、休みの間…みずき君とお弁当、食べられなくなるんだね…』

みずき君に会えない…。
僕はいきなり真っ暗な穴の中に落とされたような気分になった。せっかくのお母さん特製分厚い卵焼きサンドも喉を通らない。
お休み、1週間はある…。その間みずき君に会えないのか…。

急に僕がどんより落ち込んだから、みずき君が気づいてくれて、頭を撫でてくれた。

『ラン。ランの家と俺の家までの駅数は?』

『えっ、3つ……ハッ!』

僕、気づいちゃった。
そうだよ、僕とみずき君ち、その気になればそんなに遠くないジャン?
僕は一瞬で元気を取り戻してみずき君を見た。

『会えるね!遊べるね!』

『そうだね』

ニコッと笑って、嬉しい興奮で膨れた僕のしっぽを撫でるみずき君。最近はしっぽの毛を付け根から先っぽに向かって撫で上げるのがマイブームらしい。ランの毛並みは最高だね~って褒めてくれる。わかる?元々はもう少ししっかりした毛質なんだけど、お気に入りの特製トリートメントでお手入れしてるからね!ふわふわだよ、ふわふわ。

それからは、駅前のショッピングモールやゲーセンくらいなら行こうかとか、何して遊ぶとかの話をしてたんだけど、しばらくして不意にみずき君が黙り込んだ。

『どしたの?』

急に静かになったみずき君が心配になって覗き込んだら、すごく真面目な顔してた。

『デートもしたいけど、ランの家にも行きたいし、…ウチにも来て欲しいな』

『みずき君ち…』

ドキッとした。勿論、ウチに来てもらって僕の部屋に呼ぶのもちょっとドキドキするけど、みずき君のお家に行くとみずき君の家族もいるんだよね。…みずき君ちって、一家全員グリズリーなんだよね。
自慢の超絶イケメン息子のみずき君の彼氏が、まだチビの僕だなんて…。会った途端にショックで齧られたらどうしよう。
僕はあらぬ想像をしてしまって思わず真顔になった。
ありえないのはわかってるんだけど、何故か捕食される場面が鮮明に脳裏を過ぎるんだよね。変だな。ご先祖様達の記憶かなと思ってたけど、生息地被ってない筈なんだよね。……妄想?

僕が色んな想像をして黙ってたから、今度はみずき君に心配されたみたい。逆に僕の顔を覗き込んできた。

『……イヤ?』

ハッとする僕。

『そんな訳ないよ!ちょっと緊張するなって思っただけ』

『そっか』

みずき君が安心したみたいに笑ったから、僕も笑った。そうだよ、みずき君のお父さんやお母さんが怖い人なわけないよね。
お会いしたらちゃんとご挨拶しなきゃ。
きっとみずき君を幸せにします、って。 
……あれ?これじゃまるで結婚の挨拶みたいじゃん。フライング過ぎるか。

そんな感じで話して、その時ある程度の日程を決めたんだ。
まず、連休の最初あたりにみずき君がウチにくる。お母さんにお弁当のお礼がしたいんだって。お礼は毎朝言ってくれてるからそんなに気にしなくて良いのにね。それから、まだ会った事がないお父さんにも会いたいらしい。
大丈夫かな。ウチのお父さん、みずき君のマーキングだけでもあんなにビビってたのに。隠れて出て来なかったらどうしよう。それから、僕の部屋が楽しみだって言う。
普通の部屋だから大してみんなと変わらないと思うんだけど。でもちゃんと掃除しとかなきゃ、緊張するな~。




それが5日前の事だったのでした…。
そして連休2日目の今日、とうとうウチにみずき君が来る。今日はいつもの朝みたいに玄関だけじゃない。

僕は緊張でドキドキしながら約束の時間を待っていた。












しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

処理中です...