ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

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素敵だけどちょっぴり不穏なみずき君の告白に、僕はこくこく頷いた。そりゃもう高速で頷いた。なんだろう、本能的に?捕食なんかある訳ないのに何かの危機を感じたよ?

でも、頷いた僕にみずき君は、目が潰れそうなくらい輝くような笑顔をくれました。

「やったあ」

……なにそれ可愛い。みずき君もやったあなんて言うんだ?

「じゃあ今から俺とランは恋人同士だよ。番(つがい)前提の」

「番前提の?!」

思わず大っきい声が出た。
えっ、いつの間にそんな事になったの?!急に重い!!
でもみずき君は……。

「え、俺言ったよね?運命だって」

「え…あ、うん、言ってた、ね?」

「俺が運命感じたって事は、つまり俺とランは運命の番だって事だよ?」

「えっ、そうなるの?」

僕がびっくりして聞き返したら、みずき君は例のすごい優しい…慈しみ?みたいな表情で言ったんだ。

「ラン、お医者さんにまだアルファとして未発達みたいな事言われたんだろ?
匂いはわかるけど、それが何か識別できなかったり反応できないんだよな?」

「うん」

「だからまだわかんないだけじゃないかな」

「…!!なるほどぉ!」

言われてみれば、そうかも。だって実際、リンゴの匂いはすっごくわかってたのに、それがみずき君のフェロモンだって気づけなかったし。フェロモン嗅いだら普通はえ…えっちな気分になるって聞くのに、ふわっとしかならないし!
…もしかして僕…、アルファとしてっていうか、男として未発達?!

「な?その点俺は結構早めに発現してるし。それに、ランと会った日からオメガホルモンバランスが安定したのがいい証拠だと思う」

「僕と会ってから?」

「自分の半身と出会えた安心感かなー」

「半身…!」

みずき君、なんてロマン溢れる表現するんだ…!さすみず!!

「さすみず!!」

「…さ…え、何?」

「…なんでもないよ?」

思った事が同時に口からも出てみずき君に不思議な顔をされたけど、上手くごまかせた。(?)

「とにかく、俺達が運命の番なのは間違いないよ」

「そっか、わかった」

みずき君が自信満々だから、きっと間違いないんだなと思って、僕は精一杯神妙な顔を作って頷いた。
運命の番が現れるなんて滅多に無いって教わった。それが僕には現れた。これってめちゃくちゃラッキーな事なんだよね?何がって言われたらよくわかんないけど…でもみずき君がすっごく優しくて超絶美人イケメンで、僕はアルファ冥利に尽きるって事だけはわかる!!
僕は真面目にみずき君の目を見た。

「大切にするよ!!」

「エッ、あ、ありがと。俺も」

なんかびっくりされた。

「僕、一生みずき君を守れるように頑張るね!」

「ふ、ふはっ、ありがと。頼りにしてる」

びっくりされたけど、喜んでくれたみたい。
その笑顔を見て僕は、明日からは素振りの回数を倍に増やそうと心に決めた。

そんな訳でめでたくおつきあいする事になった僕とみずき君は、その後仲良くお弁当を平らげて、一緒に歯磨きをした後でもう1回キスをした。
今度は照り焼き味じゃなくて歯磨きペーストのバナナ味だったけど、やっぱり気持ち良くて素敵だった。

高校に入学してこんなに短期間で恋人ができて、その上ファーストキスまで経験しちゃうって、僕、なかなかの怒涛だよね~。



帰りも一緒に帰ろうねって約束して教室に戻ると、入った途端にざわめかれる。え、何?

「ランたん…」

「ヨッシー…」

「吉田君…」

ゲームとか映画のゾンビみたいな動きで僕に寄ってくるみんなにちょっとドン引き。何その動き。

「Cクラスの壱与君とはどういう関係?マジでただの友達?」

「早くも1年の裏ボスって2つ名付いてる壱与君とSクラスの健やか健康優良児が何であんなに仲良いの?」

「ハッ、まさか吉田君、脅されたりしてる?大丈夫?」

「……?」

みんな僕と壱与君の関係が気になってたのか…。友達って言ったけど、関係が進展してしまったから情報のアップデートしとかないとね。

僕はふふんと不敵に笑った。
何せキスまで経験しちゃったかんね、僕。もうオトナ一歩手前だよ。

「僕とみずき君は恋人です。」

「「「「は?」」」」

あれ、聞き取りにくかったかな?と思った僕は、もう一度同じ事を言う。

「だから、僕とみずき君は恋人です」

「「「「「「はあああぁ~~~?!!」」」」」」

クラス中が綺麗にハモった。

「えっ、この昼休みの間に一体何があった?!」

「行く前は壱与君呼びだったのに??」

ざわ…ざわ…

みたいな感じで教室内のざわめきがとまらない。

「…え、ちょっと待って?
じゃあ壱与君って、やっぱり…」

急に声を潜めて僕の耳元で言う佐久間君。

「ん?」

「…いや、いい」

僕が聞き返したら、佐久間君は急に口を噤んで首を振った。やっぱり、の次は何なの?言いかけてやめるとか、今日の佐久間君、変だなあ。

それから佐久間君は何か考え込むみたいな顔をしたまま席に戻っていった。
でも教室のザワザワは、次の古典の葛西先生が入ってくるまで続いた。

ゴハンの後の古典って地獄だよね…。













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