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しおりを挟む座り込んで僕のしっぽの先っぽで自分の首とかを撫でている熊獣人の佐久間君と、僕の匂いをクンクン嗅いでる狼獣人の稲取君は、どうやら中学からの同級生らしい。
こそばゆいからやめて。
同級生と言っても、クラスはずっと別で顔を知ってるって程度だったから、今日同じクラスになるまでは話した事もなかったんだって。
なのに僕のしっぽをモフりに来て和気あいあいと会話してたの?まるで普通に友達同士みたいだったよ?
でも、佐久間君と稲取君だけじゃない。僕を撫でる為に囲んできたみんながそんな感じになってた。
あれ?なんか僕、良いようにコミュニケーションツールにされてない?アニマルセラピー的な何か?当の僕は猛獣系を交えた囲みにずっと微妙に毛が逆立って緊張状態なんだけど?いやこっちだって凶暴でならした食肉類ですけどね?!
やっぱ体格差があるしちょっぴり恐怖心が生まれるのは仕方ないって言うか…。
でも初日のそれがあったからか、僕らSクラスはあっという間に全員が仲良くなった。高校入学に張り切って前日しっぽに念入りに専用トリートメントを施した身としては、複雑な気分。
なんか雑多にニオイついちゃってたから毛繕いするのもちょっと嫌だったし、帰り道は憂鬱だった。さっさと帰ってお風呂から入ったもん。まあ…良いよって許可したのは僕だから仕方ないんだけどさ。
そんな風にスタートした高校生活は、中学とは違ってすごく自由で新鮮だった。
入学して翌日からはテストだった。で、その日の昼休み。
僕は昨日のアレからやけに仲良くしてくれるようになった湯川君と佐久間君、稲取君と共にクラス内でお弁当を囲んでいた。
ポツポツとお互いの事を話したりしながら、テストどうだったとか、何故この学校に来たのかなんて事や、色んな事を話していた。その内、この学校はアルファが結構集まるらしいって話になったんだけど…。
何故か情報通らしい稲取君によると、この高校にはアルファが1年生から3年生まで、全部で15人いるらしい。それだけじゃなくて、何とオメガも4人、居るんだって。その内公表してるのは3人らしいけど…すっご。4人もって、すっご。
同年代のオメガなんか初めて。見る機会あるかな。あったら良いな。
この学校に来てるからには男のオメガだろうけど、それでも生のオメガを見られる貴重なチャンスだもん。
やっぱ華奢で綺麗なんだろうな。楽しみ、とまだ見ぬ彼らに夢を馳せる僕。
僕より小さい人もいるのかな~?
「でも1年のオメガは、その公表してない1人だけらしいぜ」
稲取君がそう言ったもんだから、さっきまでの膨らんだ期待はパチンと弾けた。
えー、そっかー。なら見られないかもなー。後のオメガは上級生で、どうやら3人ともアルファの婚約者がいるらしい。
なるほどね。お手つきだからもう安全って事で公表してるのかも。普通、よっぽどの事が無い限り、他のアルファが匂い付けしたオメガに横から手を出すアルファはいないって言うし。
アルファはプライドが高いから、他人のお手付きを嫌がるんだよね。オメガの取り合いで戦うなんて殆ど殺し合いになるだろうし。
僕は母さんのお手製豆腐ハンバーグをもぐもぐしながら頷いた。中学までは給食だったからお弁当、新鮮。この高校には学食もあるらしいんだけど、ウチは父さんのお弁当と一緒に母さんが作ってくれるんだって。学食にもちょっと興味あったんだけどなあ…。
「2年のオメガは猫でめっちゃくちゃ美人らしいぜ」
更なる情報提供をしてくれたのは、稲取君。彼のお弁当はサンドイッチと紙パックのフルーツ牛乳。女子みたい。
「へえ…ちょっと興味あるな」
とは、佐久間君。佐久間君はおにぎり2個と500mlペットボトルのお茶か…それ、足りるの?佐久間君、筋肉隆々の身長190cm越えなのに。
「やっぱりアルファだとオメガなら性別とかは関係無いの?」
純粋な疑問という感じで首を傾げる湯川君。うん、普通のコンビニのお弁当とペットボトルのお茶だな。
「…まあ、俺は基本的には構わない」
「俺も。やる事は一緒だし」
答えたのは稲取君と佐久間君。え、そうなの?やっぱアルファってオメガなら性別こだわらないって人、多いのかな?
「吉田は?吉田も一応、アルファなんだよな?」
湯川君が失礼な質問のしかたをしてきて、ムッとする僕。
一応って何?
「そうだけど…僕も、そんなには。…でもできれば僕より小さい方がって願望はあるかも?」
卵焼きを箸で切りながらそう言ったら、何故か3人が黙り込んだので目を上げたら、みんな優しいけど微妙な顔をしていた。慈愛の眼差しやめて。お前よりチビって難しいよないたらいいな、って顔、やめて。
僕はこれから伸びます。
だってみんなの中で僕のお弁当が一番大っきいもん。二段だし。下が一面ご飯で上がぎっしりおかずだもん。なんたって成長期だし。
(正体不明の1年生のオメガ、かあ…)
会えたらわかるかなあ…。
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