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しおりを挟む小2に上がった辺りだったかな、空手とか合気道とか、格闘技の道場にでも通う?って父さんと母さんに聞かれた事があったけど、僕はそういうのあんまり好きじゃなかった。そんなとこ汗臭くなっちゃうし、痛そうだし、つまんない。そんな事するより本読んでる方が良い。僕は体は他と比べたら少し小柄だけど、強いし、本気になったら何時もは格納してる爪と牙出して反撃するもん。
そう言っても父さんと母さんは心配そうだったけど、目の前で完璧な純人間への擬態をしてみせたら安心したみたい。
僕、小さい頃から自主トレで何とかする派だったから、自分の部屋で人知れず擬態の練習してたんだよね。だからその成果を見せつけてみたってわけ。2人とも感心してくれて、くれぐれも他人に獣人姿を見せないようにね、って事で話はまとまった。
とりあえず僕は、純人として過ごそうって思った。
小学校の時期なんて、まだバース性がわかってる子なんて殆どいないから、ほぼ全員ベータ扱いだし、そこは気にしなくて良かった。
勿論学校側に対しては、※万が一の時の為に告知義務があるから、獣性は届け出してあったよ?あるけど、別に自分が獣人かどうかを周囲に明かすかどうかは自己判断だからね。まだ擬態が下手っぴで隠せない子はダダ漏れだけど、マスターしてる子の中には僕みたいに普段は純人間のフリしてる人もいる。
希少種だったり弱い獣性を持つ人ほど、その傾向が強い気がするなー。
大人になると小動物系の獣人でオメガだと、ひた隠す人も結構いるって聞く。
そういうの聞いてると、僕も獣人だし大きくなってからが不安だな~って思ってたんだよね。
でも、中学に上がる前の検査で、そんな不安を一気に吹き飛ばしてくれる事実が判明した。
僕、アルファだったんだ。
しかも、獣人の中でも絶滅危惧種と言われてるレッサーパンダの、更に全人類の7%程度しか存在しないと言われてるアルファ。
それだけでも僕がどれだけ貴重な存在かわかると思う。
正直…やっぱりな、って感じだった。
だって僕、自分で言うのもなんだけど、小さい頃から賢かったし、見た目もイケてたし、威嚇も人並外れてたし。(←?)
でも不思議だなとは思った。だって、父さんと母さんは獣人と純人だけど、ベータ同士のカップルだったんだもん。
となると、僕は誰の子疑惑が一瞬浮上したけど、DNA鑑定の結果は2人の実子に間違いなし。
実際は父さんが子供の頃に死んじゃったっていう父さんのお父さん…つまり僕のおじいちゃんが、レッサーアルファだったんだって。
要するに、隔世遺伝。
ものすごく稀だけど、あるんだって…びっくりだね。
そんな訳で12歳の春から、僕のアルファとしての獣人ライフはスタートしたってわけ。で、そうなると、アルファとしては将来的に番になる相手がいないかな、なんて意識してきちゃうもんなんだけど…。
基本的に、バース性に関わらず獣人ってのは、種を守る為なのか同種の獣人に最も強く惹かれるらしい。あくまで基本的には、ね?
でもそんな事気にせず結婚したり番になってる人達が殆ど。
同種の獣人同士でくっつく場合もあれば、異種の獣人でくっついてる事も、獣人と純人のカップルもいる。
生まれてくる子が混血化するか、どちらか一方の特性を継ぐかは兄弟でもそれぞれ違うし、その辺の振り分けのメカニズムは不明。
だから皆、相手の種にはあんまり拘らない。勿論、純血種が守れたらそれが一番なんだろうけど、皆、その為だけに生きてる訳じゃないもんね。
恋は自由だし!
でも残念ながら、中学では僕が目と心と鼻を惹かれる相手は現れなかった…。
まあね~、本能で探すならやっぱり匂いにピンと来る筈のオメガなんだろうけど、僕、まだ惹き付けられるようなオメガの匂いって知らないし。匂いが悪くなくて見た目がタイプならベータでも全然良いかな、なんて思ってた。
でも、今にして思うと、その時の僕はまだ、アルファとオメガや番の事を、まるでわかってなかった。
自分の事なのに軽く考えてたんだ。
だけどそんな僕の生半可な意識は、進学先の高校で一気に変わる事になったんだよね。
※万が一の時
校内での不慮の事故、怪我などで輸血や治療が必要になった時、獣性によって使える血液や薬剤が異なる為。
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