2 / 86
2
しおりを挟む小2に上がった辺りだったかな、空手とか合気道とか、格闘技の道場にでも通う?って父さんと母さんに聞かれた事があったけど、僕はそういうのあんまり好きじゃなかった。そんなとこ汗臭くなっちゃうし、痛そうだし、つまんない。そんな事するより本読んでる方が良い。僕は体は他と比べたら少し小柄だけど、強いし、本気になったら何時もは格納してる爪と牙出して反撃するもん。
そう言っても父さんと母さんは心配そうだったけど、目の前で完璧な純人間への擬態をしてみせたら安心したみたい。
僕、小さい頃から自主トレで何とかする派だったから、自分の部屋で人知れず擬態の練習してたんだよね。だからその成果を見せつけてみたってわけ。2人とも感心してくれて、くれぐれも他人に獣人姿を見せないようにね、って事で話はまとまった。
とりあえず僕は、純人として過ごそうって思った。
小学校の時期なんて、まだバース性がわかってる子なんて殆どいないから、ほぼ全員ベータ扱いだし、そこは気にしなくて良かった。
勿論学校側に対しては、※万が一の時の為に告知義務があるから、獣性は届け出してあったよ?あるけど、別に自分が獣人かどうかを周囲に明かすかどうかは自己判断だからね。まだ擬態が下手っぴで隠せない子はダダ漏れだけど、マスターしてる子の中には僕みたいに普段は純人間のフリしてる人もいる。
希少種だったり弱い獣性を持つ人ほど、その傾向が強い気がするなー。
大人になると小動物系の獣人でオメガだと、ひた隠す人も結構いるって聞く。
そういうの聞いてると、僕も獣人だし大きくなってからが不安だな~って思ってたんだよね。
でも、中学に上がる前の検査で、そんな不安を一気に吹き飛ばしてくれる事実が判明した。
僕、アルファだったんだ。
しかも、獣人の中でも絶滅危惧種と言われてるレッサーパンダの、更に全人類の7%程度しか存在しないと言われてるアルファ。
それだけでも僕がどれだけ貴重な存在かわかると思う。
正直…やっぱりな、って感じだった。
だって僕、自分で言うのもなんだけど、小さい頃から賢かったし、見た目もイケてたし、威嚇も人並外れてたし。(←?)
でも不思議だなとは思った。だって、父さんと母さんは獣人と純人だけど、ベータ同士のカップルだったんだもん。
となると、僕は誰の子疑惑が一瞬浮上したけど、DNA鑑定の結果は2人の実子に間違いなし。
実際は父さんが子供の頃に死んじゃったっていう父さんのお父さん…つまり僕のおじいちゃんが、レッサーアルファだったんだって。
要するに、隔世遺伝。
ものすごく稀だけど、あるんだって…びっくりだね。
そんな訳で12歳の春から、僕のアルファとしての獣人ライフはスタートしたってわけ。で、そうなると、アルファとしては将来的に番になる相手がいないかな、なんて意識してきちゃうもんなんだけど…。
基本的に、バース性に関わらず獣人ってのは、種を守る為なのか同種の獣人に最も強く惹かれるらしい。あくまで基本的には、ね?
でもそんな事気にせず結婚したり番になってる人達が殆ど。
同種の獣人同士でくっつく場合もあれば、異種の獣人でくっついてる事も、獣人と純人のカップルもいる。
生まれてくる子が混血化するか、どちらか一方の特性を継ぐかは兄弟でもそれぞれ違うし、その辺の振り分けのメカニズムは不明。
だから皆、相手の種にはあんまり拘らない。勿論、純血種が守れたらそれが一番なんだろうけど、皆、その為だけに生きてる訳じゃないもんね。
恋は自由だし!
でも残念ながら、中学では僕が目と心と鼻を惹かれる相手は現れなかった…。
まあね~、本能で探すならやっぱり匂いにピンと来る筈のオメガなんだろうけど、僕、まだ惹き付けられるようなオメガの匂いって知らないし。匂いが悪くなくて見た目がタイプならベータでも全然良いかな、なんて思ってた。
でも、今にして思うと、その時の僕はまだ、アルファとオメガや番の事を、まるでわかってなかった。
自分の事なのに軽く考えてたんだ。
だけどそんな僕の生半可な意識は、進学先の高校で一気に変わる事になったんだよね。
※万が一の時
校内での不慮の事故、怪我などで輸血や治療が必要になった時、獣性によって使える血液や薬剤が異なる為。
70
お気に入りに追加
1,381
あなたにおすすめの小説
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。

騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる