ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q.➽

文字の大きさ
上 下
1 / 86

1

しおりを挟む


しゅっ しゃっ

本日も僕は自分の部屋の姿見の前で自慢の爪を出して、敵を一発で仕留める為の必殺パンチの素振りにいそしむ。
立ち上がって歯を剥き出して、鋭い牙もアピール。精一杯背伸びして、自分の優位を示すポージングの練習も欠かさない。
これ全部、僕の幼稚園の頃からの自主トレ。

何の為かって?
決まってるだろ。
不逞のやからに遭遇した場合、おのが力で自分の身を守る為だよ。
なんたって将来的には自分だけじゃなくて、僕の大事な番も守らなくちゃいけないしね!



僕の住むこの世界には純粋な人間と、人間なんだけど様々な動物の特性を持って生まれた人間達がいる。
哺乳類を始めとして、鳥類、両生類、爬虫類、陸ではめっちゃ生き辛そうに思えて心配になっちゃう魚類。小動物から大動物まで。
そしてそれらにも当然性別がある。男と女。そしてそれぞれが更にアルファ、ベータ、オメガという第2性別を持つ。つまり、性別が6つあるって事ね。
え、ややこしい?僕もそう思う。何もここまでややこしくしなくてもね?
でも、ものっすごい大昔は、ベータの男と女しかいなかったんだって。ラクそ~。アルファとオメガってのは、何時の間にか生まれてたベータの突然変異体で、でもそれが何時ごろから存在してたのかは、偉い学者先生達にもはっきりとはわからないらしい。

アルファとオメガ。彼らは生殖可能な年齢になってくるとそれぞれに特有のフェロモンを放出してヒートと呼ばれる発情期が来るようになる。因みにオメガは男女どちらでも妊娠出産が可能で、男性オメガも殆どは出産する。
そんなアルファやオメガだったけど、やっぱ突然変異だったから、超絶数が少ない。アルファは…まあ増減あるらしいけど、今は少なくて全人口の7%くらい。オメガは更に少なくて、3%くらい。両方合わせてもやっと10%って、何だか切ないよね…。
でもアルファは突出して綺麗で賢かったから世界の頭脳として尊敬と畏怖を一身に集めてる。だから世界各国の政府は、自国にアルファをどれだけ擁するかに頭を悩ませてるんだって。将来の国力に関わってくる事だもんね~、仕方ない。
そんなアルファと反対に、オメガは見た目は綺麗な事が多いけど能力的にはベータ以下って個体が多かった。でも、それでもオメガは大切にされた。何故なら、オメガはベータよりもずっとずっと、優秀なアルファ達の子供を産む能力があったからなんだ。
生殖って点に於いて、アルファはベータよりもオメガと断トツに相性が良かったんですね! 
何せ、アルファとベータ間に待望のアルファが生まれる確率なんて、統計とか見たらほぼゼロに近いもん。なのに、アルファオメガ間だと、生まれた子は90%以上の割合でアルファなんだよ?すごくない?オメガ、すごくない?
しかも、アルファとオメガの間では番(つがい)っていう、結婚よりもずっと深い契約が結ばれる。
結婚はさ、紙切れ1枚で解消出来るけど、番の解消は命に関わるかんね。簡単には解消できない。
まあ、でも滅多にいないって聞くけど。
番になると、お互いのフェロモンしかわかんなくなるって言うし、何よりよそ見なんかできないくらい想い合うらしい。アルファは最愛のオメガを隠すようにして命懸けで守るし、オメガは愛するアルファを頼って尽くす。
僕もそんな番って関係に、実はちょっと憧れてるんだよね。


…ん。

前置きが長くなったけど、要約すると、人間と各種獣人がいて、男女各々に更に3つの性別がある。おk?

オレンジに近い茶色のフサフサした毛並み、利発さを表す、くりんとしたどんぐり色の瞳。
それが僕、吉田 嵐太。
獣種はレッサーパンダ。

幼稚園頃までは上手く人型を保てなかったから、油断するとお母さんと歩いてても通りすがりの人達にすぐモフモフされたり、ペット目的でさらわれかけたりして大変だった。


しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

処理中です...