超高級会員制レンタルクラブ・『普通男子を愛でる会。』

Q矢(Q.➽)

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87 疑惑

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翌日の土曜は久々に男鹿の店に食事に連れて行かれた。何時もの個室席に男鹿が現れた瞬間、室内の空気が一変して忽ち2人の世界になったので、俺は順当に傍観者に。無事、一ノ谷さんが目と目で乳繰りあうのを眼前で見せつけられた。今にもキスしそうな雰囲気。

何このプレイ。いたたまれん。俺と三田も一緒に歩いてる時とか大学で話してる時とかにこんな空気出してたらどうしよう…と一抹の不安が。


「ん、ユイ君も来てたのか。何時もケイに付き合わせて悪いな。ありがとう。」

「はぁ、こちらこそ。」

いや男鹿、見ない内にすっかり彼氏面だな。いや実際彼氏なんだけど。俺を敵視して威嚇射撃してきてた頃からすると別人級に穏やかな表情だ。穏やかと言うか、やに下がってる?
見てらんねーな、俺も気をつけなきゃと思いながら炭酸水を飲んでたら、男鹿が話を振ってきた。

「聞いたぞ。君、両思いの相手が居るんだってな。」

「ぶっ。」

いきなりで炭酸水、吹きそうになった。
一ノ谷さんに視線をやると、申し訳なさげに手を合わせている。

「ごめん、ユイ君。光一郎がヤキモチ妬いちゃうから話しちゃった。」

「…あはは。」

嘘だろ。いや、確かに口止めはしなかったし、付き合い始めた男鹿に伝わるのは時間の問題なとこあったか…。

「…はあ、まあ居ますが。」

「付き合ってるのか?」

「いや…それはまだ…。」

「まさか、本当に退店する迄またせるつもりなのか?真面目だな。」

「……。」

ほっとけ…。

「光一郎、あんまり他人様の事に口を出すのは…。」

一ノ谷さんがフォローに入ってくれたけど、その表情は言葉とは逆にうずうずしてる。一ノ谷さん、ちょいちょい三田の事聞いてくるもんな。実はすごい興味あるんだろうな。

「…まあ、一応、俺なりのケジメというか。」

と言いながらもやらしいキスもしてるし、抜かれたし、…オカズにされたりもしたけど、あれは誕生日の事だったし特別というか。
実際、あの後からは普通に純な付き合いだ。でもなまじ距離が近いから、くっつかれる度に妙な気分にはなるんだよな。

「そんな事言ってると他に目移りされるんじゃないのか?」

男鹿が茶化すような調子で言ってくるが、俺も言い返した。

「彼奴は離れてからも10年以上俺を想ってくれてたんですよ。あと半年くらい待たせたって、今更余所見なんかしませんよ。
男鹿さんだって、圭人さんと離れてる間、余所見出来なかったから今こうなってるんでしょう。」

それを聞いた男鹿は、はっとしたように真面目な顔になって、悪かったと謝罪してくれた。

「光一郎、人の気持ちに水を差すような事を言うもんじゃないよ。」

「そうだな。俺が大人気なかった。ケイと恋人同士になれたのが嬉しくて、つい。」

「や、やだなもう!光一郎ってば!」

油断も隙も無く再び2人の世界に突入された。

俺、もう今日、帰りましょうか?



しかし、その数日後。

男鹿が言ってた事を無視できないような事が起きたのだ。

「ゆっくん、ごめん。当分、昼は一緒できない。」

2講目が終わり、学食にでも行こうと荷物を纏めていた時。今日は後から来て後ろの席に座っていたらしい三田が席に来て、気不味そうにそう言った。
隣に座ってたミズキもキョトンとしてる。
日頃、あれだけミズキを威嚇して俺から離れない三田が…みたいな。正直、俺も内心少し驚いたけど、まあ三田にだって色々あるかと思い、頷いた。

「そうか。わかった。」

当分ってどれくらいだろ、と思いながら了承して、ミズキと学食へ向かう。三田は何か物言いたげな顔をしているように見えたけど、何かあれば連絡してくるだろ…と、その日はそれで離れた。
思えば、あの時無理にでも突っ込んで聞いてやれば良かったんだろうが、いまとなってはそれも結果論に過ぎない。
 
翌日から、俺は1人で大学へ行き、バイトの無い日は1人で帰るという、以前のような日常を送るようになった。
日曜日も、三田が家に来る事は無くなり。完全に三田があっくんだと知る前の状態に逆戻りだ。

(…?俺、何かしたっけ?)

スマホには時々連絡が来るけど、元気?とか、最近送って行けなくてごめんね、とかそんな短文ばかりだから、俺が一言二言返せば直ぐに会話終了になってしまう。
学部も違うし、やらなきゃならない事も忙しくなる時期も違うのは仕方ない。何時も俺の都合に合わせてもらってるから、三田の都合にだって合わせてやるべきだろう。寂しいけど、少しの間だろうと呑気に構えていたある日、俺は見てしまった。

三田が、華奢で綺麗な男と、すんごく親密そうに腕を組んで歩いてるのを。
しかも一緒に学内の、あのAカフェに入って行った。

元々は取り巻きを連れてるような奴だから、以前は左右の腕に女生徒を引っ付けて歩いてたのはよく見てた。Aカフェで俺に真剣だと告白してくれて以降はそんな場面を見る事は無くなったのだが、まさか今度は男をひっつけるようになってたとは…。
俺は目を疑いつつ、カフェに入って行く2人を見送った。

ショックなのか、何かの間違いだろうかとか、何か理由があるんだろうかとか。
胸の中に渦巻くコレは、どういう感情なんだろう。

(まあ、別に…付き合ってる訳じゃないし…。)


「…大丈夫?ユイ君。」

隣を歩いていたミズキが、気遣わしげにそう声を掛けてきた。

「…ああ。」

「最近、三田君とは連絡は?」

「…まあまあ。」

呆然としながら答える俺に、ミズキは何となく事情を察したようだった。そして、閉じたAカフェの扉を見つめながら言った。

「今度は三田君がターゲットになったんだね、女王様。」

「…女王様?」

「三田君と一緒にいた男子生徒だよ。やたら綺麗な顔してるけど、相手のいるイケメンを略奪するのが大好きっていう悪趣味略奪女王様。」

「男なのに女王様なのか。」

ミズキが三田といた奴を知ってた事に驚いたけど、どうやら有名人らしい。
でも、男子校でもなく普通に女生徒もいる大学でも女王様なんて呼称で呼ばれる男がいるとは。
妙なところに想いを馳せていると、ミズキは憎々しげに言った。

「自分が1番でなきゃ気が済まない、歪んだ勘違い野郎だよ。」

 
それを聞きながら俺が思ったのは、

(相手が居る男を略奪って…、俺と三田、未だ付き合ってなくね?)

という事だった。






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