超高級会員制レンタルクラブ・『普通男子を愛でる会。』

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74 気が早い男

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とりま3時のオヤツにお茶入れてチョコ食べて休憩した後、2人で2階に上がって猫部屋清掃再開。
ベランダの水道で猫トイレも全部洗って、トイレシート敷いて砂敷いて。
でも1人でやるより早く済んだ。


「三田、晩飯どうする?母さん、金は置いてってくれたけど、祖父ちゃんも居ないしどっか食いに行く?」

俺1人なら別にカップ麺でも何でも適当にするけど、もしかして三田は母さんの晩飯をアテにして来たかもと思って、一応聞いてみた。車道に出ればラーメン屋も、少し歩けばファミレスもあるしファーストフードもある。スーパーで弁当は、ちょっと侘しいか。

三田は、そうだなあと言いながら、

「外に行くとゆっくり出来ないんだよなあ。ゆっくんが行きたいなら行くけど。あ、それか、ウチから津村さんの料理持ってこようか?」

津村さんってのは三田んちのハウスキーパーさんだったな。こないだの料理も美味かった。
どうしよっかな…。

祖父ちゃんも出かけてるから俺迄留守にするのもなあ。猫達だけで留守番させるのも可哀想だし、両親も何時頃帰ってくるかわからないけど、出迎えてやった方が良いよな。
となると、やっぱり俺が三田んちに行くより三田に料理を持ってきてもらってウチで食べる方が良いか…。

「じゃあ、頼むわ。米は炊くからさ。」

「了解。」

そんな感じで晩飯はウチで取る事が決まり、三田は家に料理を取りに帰り、俺はキッチンで米を研ぐ作業に。
10分程で三田は、料理の容器を3つとハー〇ンのカップアイスを10個くらい入れたエコバッグを持ってきた。

「冷凍に入ってたから、食後のデザート要るかなと思って。」

「三田ァ…。」

やっぱお前、最高な。



 

猫達にゴハンをあげてる内に米が炊けて、温めた料理を皿に移し、俺達は7時過ぎには食卓を囲んでいた。最近よく三田とこうして食事をしてる気がするな、と思いながら料理に箸を伸ばす。鶏もも肉の甘辛煮、柔らかくて味がしっかりしててご飯がすすむ。
後の料理は鰤の煮付けに、梅紫蘇風味のドレッシングで和えられたキュウリのサラダ。梅味って夏場にちょっと嬉しいな。津村さんの料理は三田にどうにか野菜を食べさせたい工夫がいっぱいで泣けてくる。野菜嫌いの子を持つ幼児の母じゃん…。

「三田、お前…ちゃんと野菜料理も残さず食わないと津村さん気の毒だぞ。」

サラダに全然手を伸ばさない三田にそう注意すると、ギクッとしたような顔をして嫌々サラダを取る三田。

…マジで子供か。



食事の後片付けをして、アイスと炭酸飲料を持って2人で2階の部屋に上がる。
部屋に入ってテレビをつけて観ていたら、母さんからスマホに連絡が入った。
どうやら帰宅は22時頃になる模様。祖父ちゃんは…まあ、似たようなもんだろうな。なんなら飲んでるだろうし、もう少し遅いかもしれない。

「結婚式か。ゆっくんは行かなくて良かったの?」

アイスをつつきながら質問してくる三田に、同じくアイスを掬いながら答える俺。タイムリーにもテレビの画面は、結婚情報誌のCMが流れている。

「俺からは微妙に遠縁だし、会った事もそんなに無いし、別に。」

「ふーん。」

それに、学校は別にして、単純にあんまり人が集まる場には行きたくない。

「結婚式かあ。中学の時に従姉妹の姉ちゃんの結婚式に出て以来だなー。」

思い出すようにそう言った三田に、ふと、本当に何気なく聞いてしまった。

「三田は、将来的には結婚式とかしたいと思うの?」

口にしてからしまったと思った。三田は俺と付き合いたいって言ってるのに、そんな事聞かれたら困るじゃん。だって、結婚式って事は俺と付き合って別れた後に、普通に女と結婚する未来って事だし…。

案の定返答は無くて、そっと様子を窺うと、驚いたような顔で俺を見つめる三田が。

「…あ、愚問。ごめんな。」

そう言った俺に、三田は静かに聞いてきた。

「ゆっくんはしたいの?結婚式。」

気を使って謝ったつもりだったのに逆質問されて面食らう。

「え、俺?俺はあんまりそういうのは…。」

そう答えたら、

「そっか。じゃあ俺もナシで良いよ。形には拘り無い方だし。」

と言う三田。

……?

「じゃあさ、式とかナシで2人でどっか旅行行こうよ。行った先の国の教会とかで2人だけでやんの。指輪も交換して。」

……??

あれ?何か、話が…。

「現地で婚姻証明書出してもらえる国が良いよね~。」

ウッキウキで語り出す三田。
あ、コイツすげえな。ナチュラルに俺が俺と三田の結婚式どうする?って話振ったと思ってるんだ。

気ぃ使って損した。

「行くなら何処が良い?景色が良いとこが良いよね。あ、城…城とかどう?山の上の中世の城なんて景色良いよ?」

「…うん、そだなー。城いいなー。」

「海も良いよね、砂浜でさー、」

やばい、三田が戻って来ない。一ノ谷さんとはまた違うタイプの結婚ハイになるやつだコイツ。

三田のテンションに呆れながらも、此奴の考える未来に普通に俺が組み込まれてる事を嬉しく思った。

付き合う前から新婚旅行の予定考えるの、すげえ。
どんだけ気が早いの、お前って男は。








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