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14 やや乱れ過ぎ妖精佐川さん
しおりを挟む「どう?気持ち良い?」
「あー、はい。すごいです。」
「だろうね。ユイ君、ガッチガチだもん。」
卑猥な会話ではない。マッサージを攻守交替しただけだ。
佐川さんは何時も俺の事もマッサージしてくれるが、そりゃもう上手い。
やっぱ自身がマッサージ好きなだけあって効くツボ知ってる。
お客様にそんな事させるなんてけしからんとか言う?
いやこれ初回で佐川さんが懇願して来た事だから。全く問題無いから。
『君の体をどうしても解したい!』って、何故か必死に。
俺の、若いだけの貧相な体を堪能したいって事だろうな…。(語弊)
お陰で佐川さん宅に来た翌日は体がスッキリ軽いのでめちゃありがたい。
「ありがとうございます。いやー…効いた…。」
俺は腕や肩をぐるんぐるん回しながら首をコキコキ動かして礼を言うと、佐川さんはどういたしましてと可愛い笑顔で答えてくれる。
ホント、可愛いんだよな。顔はな。三十路男性だけどな。
「今度アロママッサージ試してみない?してくれるだけでも良いんだけど。」
「アロママッサージですか…。」
それってアロマオイルを使うって事だよなあ、と俺は少し考えてしまう。
するとなるとそれなりに動画とか観て手順とか覚えなきゃいけないだろうな。服装も、オイルが付着しても良いように着替えが必要になるかもしれない。
「はい、まあ…何とか出来なくはないと思いますけど…。」
俺が考えながら答えると、佐川さんは
「マジ?!」
と食いついて来る。
「はい、多分…。あ、でも腕前はあまり期待しないでいただけると…。」
ヤバい、変に期待値上げられるといざと言う時ガッカリされる、と思った俺は予防線を張る。だが佐川さんは、とても良い笑顔で言った。
「良いよ良いよ!全然良い!ユイ君に裸体をぬるぬるされるって想像しただけで…。」
「……。」
「イきそう…。」
「やっぱ辞めときます。」
「えええ!!?」
何か今日、断ってばっかだな。
とはいえ、佐川さんとはそんなセクハラ紛いの言葉遊びばかりしてる訳ではない。仕事の愚痴を聞いたり、読者側からのアドバイスを求められたりもする。だが実は、失礼ながら俺はあまり漫画には詳しくなくて、最初の内はロクに感想すら言えなかった。
それからは佐川さんの作品だけは目を通す事にしてる。かといって、そんなに大した事は言えないから全く参考にはなってない自信がある。
佐川さんは過去、週間連載を持っていて、それが爆発的人気作品だった。アニメや映画にもなり、実写化もしたから、それは俺ですら知ってるくらいだし、読んだ事も観た事もある。だけど佐川さんはその時に週間連載の過酷さに懲りて、その作品を終了させてからは仕事をセーブする為に月刊誌に移って新たな連載を始めたのだという。人気と才能が溢れてるのも大変なんですね。
そんな職業の人なので肩や腕、何なら座りっぱなしで腰痛持ち。眼精疲労もかなりのものらしくて、俺は何時の間にか動画で学んだ目の周りの指圧もするようになっていた。
めちゃめちゃ喜ばれた。どれくらい喜ばれたかと言うと、帰りに『これ、僕が出資してる会社の商品なんだけど、良かったら…。』と言って、大きなブランドのショッパーいっぱいに入れられた男性用自慰用品を貰った。遠慮がちにありがたくいただいて、帰宅してから開けた時のドン引きと来たら…。
その時期は未だ、男性なのに妖精みたいに儚げな容姿の綺麗なお客様、という認識だったから俺も油断していたんだな。
それ以来、佐川さんは俺の中で、無邪気なセクハラを無自覚にしてくるお客様、とインプットされた。
実際、紛らわしくやたら色っぽい喘ぎ声を聞かされる以外にはそこ迄の害は無い。それに俺の下半身も男の声には反応しないので、別に妙な気分も催さない。
只々、他の部屋の人に聞こえたら佐川さん本人が恥ずかしいだろうなってだけの話だ。
マッサージを終了して、飲み物とケーキをご馳走様になりながら雑談をしている内に、そろそろ3時間が経過しようとしている。もう五分も経たずに15分前コールが鳴るだろう。
3時間って、長丁場に慣れた俺の体感的には結構短く感じる。無自覚セクハラされてるけど佐川さんって俺より細身だから危険を感じる事も無いし、身構えずに時間を過ごせるのだ。まるで、幼い頃から馴染んだ近所の優しいお兄さん的な…。
なんて思ってケーキ皿の端に楽しみに避けておいた苺をフォークで刺して口に運んでいると、ハッと何かを思い出したように佐川さんが俺に言った。
「あ、ユイ君、○ンガ持ってく?未だある?ストックたくさんあるから要るなら何時でも言ってね!」
「……アリガトウゴザイマス。ダイジョウブデス。」
やっぱり邪気は無くてもセクハラはセクハラかもしれない。
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