上 下
17 / 22

報告に行く俺達。

しおりを挟む






(……やっちまった…。)



マジで噛ませてしまった、エリオに。


しかも、よほど相性が良かったのか、ものの数十秒で血も止まり、咬印完成、そして定着。


…こんなん聞いた事ねえ…。


速すぎる番の成約に俺は今更ながら呆然と天井を眺めている。


昨日の昼過ぎから現在、翌朝8時。

……やっちまった感が再来。


隣で可愛い顔して寝てる、意外に野獣だったエリオ君。素敵だったぜ。


多分、昨日は使用人や公爵家の誰かが何度かは呼びに来た筈だ。
昼食や夕食、様子が変…などなどで。

厚いとはいえ、扉の向こうから漏れ聞こえる嬌声や音、人によっては匂いで察したんじゃなかろうか。


「ぐぁ…は、恥ずかし…!!」


おそらく俺達が挿入りっぱで寝落ちたのは、…今朝方?
で、今こんな感じで落ち着いているけど、多分また数時間で波は戻ってくる。
今の内に誰かには事情を説明さしておかねばなるまいよ。

お叱りはヒートが落ち着いてから甘んじて受けるとして…。

俺はエリオを起こさないようにそっとベッドを抜け出し、素早く服を着た。

だが、直ぐに気配を察したエリオに見つかり咎められる。


「どこ行くの。…帰るの?
番になったのに?」

「違う違う違う、今の内に公爵様か兄上様に事情を言っとかないとと思ったの!」

「じゃあ僕も一緒に行く。」


エリオはベッドから降りて、脱ぎ捨てられていた服を着た。
そして、髪を手櫛で整える。

…なんか…なんか、色気が…。

俺はごくりと喉を鳴らしてしまう。

駄目だ、堪えろ。今は堪えろ。



「じゃ、行こう。この時間ならもう皆起きてるよ。朝食、食べて大丈夫かなあ。」

エリオが呑気に言って、2人で部屋を出たが、いや本気?

俺ら色んなモンでベタベタだよ?
いち早く状況報告しなきゃと思ったから急いで身支度したけど、食事の席にはどうかと思う。
そんで次の波来る前にシャワーくらいはしような?

そういった事をやんわり伝えると、それもそうだね、じゃあ部屋に色々用意させなきゃ、と言ってくれて胸を撫で下ろす。


話している内に公爵様の部屋前に着いたので、エリオが声をかけて開けてもらう。

既に朝の支度を済ませていた公爵閣下は俺達の姿を見て、あからさまにホッとしているようだった。
それに、大体何があったのかは察していたようだ。

「エリオは発現したんだな。」

それには少し嬉しそう。
しかし次には俺を見て、何だか申し訳無さげに

「しかし、まさかセス殿を噛んでしまうとは…。
あの、まさかエリオが無理矢理…」

と言われたので、

「いやそれは無いです。」

と被せ気味に否定する。

「エリオの匂いで発情した俺の匂いでエリオが発情しました。」

「う、うん??」


ややこしくて申し訳ない。

「それで、俺が前からエリオを好きだったので、噛んでくれと頼みました。」

「え、セス殿そうだったの?ウチのエリオを?
本当なのかエリオ。」

公爵閣下、驚きのせいか口調が。
本当、大事な息子さんを手篭めにしてすいません。


「はい。僕もセス、好きだったので…。」

照れながら嬉しそうにチラチラ俺を見るエリオ。

いや可愛いけど今はそうじゃない。
叱られるかもしれないんだぞ、未だ王太子との婚約解消しない内にこんな勝手な事して、って。

しかし公爵閣下の言う事は予想を覆していた。

顎に手をやりながら、

「んー?いや、別にそれは問題無いと思うが…。」

とか言う。

王族との間の事で、そんな事ある?


「いや、だって…βかαだったら解消、って事なんだから、α発現した時点でもう良くない?番にもなったって事だし…。」



……公爵閣下がフランク過ぎるな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王道俺様生徒会長が悪役令嬢の弟に転生しました

むぎはむ
BL
元祖王道BL小説の生徒会長のような人生だった主人公。 転校生を守るのと引き換えに交通事故で命を落とした。 転生した場所は王道少女漫画のようなキラキラとした世界だった。 極悪非道な噂が絶えない伯爵家に生まれてしまい、家族を反面教師にして身分も名前も隠して生きてきた。 ワルプルギスのパーティーの夜、美しい騎士団長と出会う。 その騎士団長もまた、己を隠し生きてきた謎深き人だった。 寵愛執着激重騎士団長×転生俺様悪役令息 捕まったら最後、茨の蔦に絡まり囚われる。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

みそっかす‪α‬、ある日スパダリΩに拾われる。

Q.➽
BL
飯嶋 茜太(いいじま せんた)、25歳。 ‪性別 男、‪α‬。長身で黒髪黒目、ルックスそこそこ、学歴そこそこ。 基本性格は明るく人懐っこい。 でも、モテません。 それは、‪"α‬"だから―――。 さて、期待外れと呼ばれて今迄の生活を捨てたαに、幸せは訪れるのか。

処理中です...