結婚式の最中に略奪された新郎の俺、魔王様の嫁にされる

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人界と魔界。

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その夜、汗やら色んな物でベトベトになった俺は風呂に入らせてもらって、早々にベッドに入った。
初夜とかは昼日中に済ませてしまって、流石に俺の気力と体力が色々持たないので夜は大人しくお布団に入ったのだ。

勿論モリオン様も同じ寝床に。

なんたって夫婦…いや、夫夫なので。
未だ実感が薄いけど俺がモリオン様と伴侶になったのはどうやら夢ではないようだし、形から入ってくのもアリだろう。

気持ちより体から先に籠絡されてしまった感は否めないけど、まあこういう事も世の中にはままある事だろうし、きっとこれから追っつく…んじゃないかな~。たぶん。


正直、あの姫様は美人だけど気が強いのが明らかだったし、上手くやっていけるだろうか?みたいな危惧は持ってた。
でも逆玉だし、大概の事は耐えようかな~みたいな気持ちでいたんだよな。

でも攫われてこっちに来てみたら、魔王様は俺にベタ惚れだし、(男だけど) 超絶美形だし、(男だけど) その上体の相性バッチリだし(男だけど) 、魔王だから勿論財力と権力もある訳で、どう比較してもこっちのが良い気がしてる。(男だけど)

まあ…同性ってのは、正直、女を知らないからなのか元々そういう素質があったのか、単にモリオン様が性別を超えて素晴らし過ぎるからなのか、些末な問題に思えてる。いや、些末だわ、うん。

ぶっちゃけめっちゃラッキーだと思ってる自分がいる。

人間界には帰れないのかもしれないから、家族は気になるけどさ…。じいちゃん俺が竜巻に連れてかれたの見て大丈夫だったかなー?びっくりして倒れちゃってたらどーしよ。



「じいちゃん大丈夫かなあ…。」


肌触りの良い羽根布団を口元迄引き上げて思わずそう呟くと隣にくっついて寝てたモリオン様にバッチリ聞かれてた。


「なんだ。祖父を案じておるのか。」

体を更に寄せてきながらそう聞かれ、頷く。

「心臓がちょっと悪くてですね。」

「心の臓か。なるほど、それは心がかりであるな。」

モリオン様は片手を布団から出して、手のひらを宙に翳した。

水晶玉が現われ、それが浮いたまま大きくなったかと思うと中に見慣れた風景が見えた。

「あ、ウチだ…。」

水晶玉の中に映っているのは実家の小さいホテルで、徐々に内部迄映し出していく。

貴族に返り咲いたらしかったけれど、まさか引越してはいないよな?
商売はどうなったんだろ。
家を出て1ヶ月ちょいだから、流石に未だ引越しは無いか。

と、祖父の部屋の前が映された。
内部の祖父は……

鼾をかいて寝ていた。


「…全然元気だな。」

「良かったのう。」


次に父と母……も、普通にすやすや寝ていた。
涙の跡とかすらない。

「国王が我の所にリクが来た事は言うておる筈ゆえ…。」

「でも、魔界に嫁に行ったとか言われたらそれはそれで心配しませんかね、普通…。」

「まあ、我らは人間にとっては恐怖と畏怖の対象であろうからのう…。」

モリオン様はそう言いながら水晶玉を消した。


「だが、最近は魔界も様変わりして、愛しい者の身内は大切に扱っているものだが…。」

「まあ、実際魔族に酷い事されたって話、そんなに聞きませんしね。」

「取り締まっておるゆえな。
しかし、リクを寄越さねば我もどうしたかはわからぬが。」

「…怖い事言わないで下さいよ。」

「冗談じゃ。それに今の所、神託と巫女を介しての人間との縁組が拒否されたり壊れた事は先ず無いゆえ。」


そうなのか。

人間側からしたら、やっぱりまだまだ人身御供的な意味合いで差し出してそうだけど。
こっちに来た人間がちゃんと大事にされて暮らしてるなんて、きっと知らないんだろうな。


まあ、それはその方が良いのかもしれない。

やっぱり人間界は人間界、魔界は魔界で棲み分けして、あまり関わるのは良い事ではないんだろう。俺達のような場合を除いて。


俺の思考を読んだかのようにモリオン様が続けた。

「本来はな、魔族と人族は、互いの世界では生きられぬものなのだ。
人間は魔界では伴侶となる魔族の加護無しには長く生きられぬし、我らも余程力のある者で無い限りは人間界では長く形を保てぬ。
互いに空気が合わぬのだ。
故に、あまり行き来をせぬが良いのよ。」

「そうだったんですか。知らなかったな…。」

俺を迎えるにあたっても、モリオン様はそれなりの代償を払っているんだもんな。

別に俺が望んだ訳ではないけど、異界の者を望むってのはそういうものなんだろう。


つまり。


俺って愛されてるなあ、としみじみ思いながら、その内俺は眠ってしまっていた。




モリオン様が一晩中俺の寝顔を眺めていた事は、知らない。







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