結婚式の最中に略奪された新郎の俺、魔王様の嫁にされる

Q.➽

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こちらの異世界事情。

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「あ、でも…魔王様のご希望だったんですよね。
ですが俺、予言の巫女の神託で王城に召されたんですよ?」

「巫女を介して危機回避の方法を提示するのも神の仕事よ。」

「…危機回避ですか…。」

「魔王の1人が勇者とくっついてからのここ五百年ほど、我らと天と人との間にも、一応の協定があるのよ。」

「協定…?」

「みだりに人界に手を出さぬというな。
時たま、ならず者共が協定を破るが、大きな被害には至っていない筈だ。」

「まあ、確かに…。」

魔獣や人型の魔族の目撃談はあるが、畑や建築物以外、人的被害は、あまり聞かない。
恐ろしいもの、近づいてならないもの、という認識は根強いが、実はそういう方面での治安は悪くないのだ。


「魔界の警備も強化しているのだが、…まあ、なんだ。何事も100%ってものはなかろ?」


なんか人間臭い言い訳しだした。

というか、ちょっと待って?

あんまりにもサラッと話すからうかっと聞き流しがちだけど、何て言いました?
魔王の1人と、勇者がくっついて?

「何だ…知らぬのか。」

モリオン様は少し呆れたような表情。
すいません無知で。

「魔王は1人ではない。常時5人はいる。定員は7人だがな。」

「定員?!」

いや、思ってたより数いたし、定員あるのも知らなかったな?

「定年もあるぞ。」

「マジすか…。」

「魔族は長命だが不死ではない。魔王としての名は継いでいくゆえ、ずっと生き永らえているように見えるだろうがな。」

「そうだったんですか…。」

「時折、イベント開催して勝ち上がってきた勇者やその他と付き合ったり婚姻したりもする。」

「イベント?!」

「最近で言うと三百年前にも魔道士と付き合って一緒になった魔王もいた。
魔道士が使い魔に手を出して離婚したけど。」

「離婚!!」


俺や皆の認識不足だっただけで、魔王は実は姫ポジだったのだろうか。  

認識が覆されていく。

「しかし我は浮気は許さぬ。
他に気が行こうが逃げようが寿命尽きる迄愛するゆえ、そのつもりでな。」

「ヒィ…」

ベッドに横たわりながらニヤッとしつつ、またしてもサラッと激重なやつ投下してくるモリオン様。  

いや俺の何が貴方様にそんなセリフ言わせてんだろ?
…もしかして俺って、自己評価低いだけで実は結構イケメンだったのかな…?

「こんなに常に抜けていて締りのない顔でボヤっとしておる奴など、危なっかしくて我が守ってやらねば直ぐに悪い女子に騙されるか死ぬかするであろ。」

起き上がってにじり寄ってきたモリオン様は 一瞬の自惚れすら許してはくれず、
真面目な顔で真っ直ぐ俺を見てそんな事を仰る。

え、貴方様、ほんとに俺の事、好きなんですよね??



「案ずるな。」

肩にポン、と手を置かれる。


「こう見えて我は情に厚き男よ。」

「は、はあ…。」

「一度袖の内に囲ったものは、最後迄面倒を見る主義ゆえ、そなたも心やすらかに過ごすが良い。」

「…アリガタキシアワセ…。」

 


一生逃亡不可なやつじゃん。


俺、一生童貞かもしれん。





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