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これが正規ルート。
しおりを挟むん~と…。
何この状況。
意識が途絶えていたのはどれくらいの間だったのか。
多分そんなに長くはなかったんじゃねーかなと思う、が。
再び目を開けた時、真っ先に視界に入って来たのは、宮殿内の自室のものとは違う、ベッドの天蓋。
そうか。何処かしらの屋敷のベッドの上に着地したのか。
ラッキーだったな。
この屋敷の住人にはアンラッキーだろうけど。
あんまり王城から遠くなきゃ良いんだけど…、と思った時、ふと背中と尻の違和感に気づく。
ベッドにしては…ちょっと硬いなあ…。
そろり、と振り返ってみる。
人だ。
俺は誰かを下敷きにしてしまっていた。
(やばっ、この家の人の上に着地しちゃったのか!)
慌てて退いた。
いきなり俺みたいなそこそこ上背も筋肉もある普通の男の下敷きになって無事だとは思えない。
「申し訳ありません!!」
と言いながら、息してるのか安否確認をする為に気を失っているその人の顔を見る。
「…わ…」
白皙の美貌って、こういうものだろうか。
彫りは深いが、程よい。
輪郭が整っていて顎のラインがシャープ。
閉じていても切れ長で美しい瞼、長い睫毛。
こんなに綺麗な整った鼻筋、滅多に見ない。
唇は薄く形良く、紅色。
布団の上に散った黒髪は豊かで長く、艶やかで美しい。
男…男だな。
姫様よりも断然好みの美形だけど、残念ながらこれは男だ。
そんで、もっと問題なのは…。
「ツノ…だなあ…。」
うん。間違いない、ツノである。
形の良い綺麗な黒髪の頭には左右対称に、まあまあでっかいツノが生えていた。
なかなかに重そうだ。
手の爪も、黒く鋭い。
…魔族…だよなあ…、どう見ても。
けどまあ、今はそれより…。
鼻に手のひらを当ててみる。
…うん、呼吸は、してる。
怪我は…と、手足や全体をみたが、特にその様子もない。
でも本人が起きてくれないと、もしかしたら何処か骨折してたり捻挫してたり、するかもしれないしな。
内臓は大丈夫でありますように…。
俺は男の頬を軽くぺちぺち叩き、
「大丈夫ですか~?」
と声をかけた。
そうしながら部屋の中を見回したが、窓も開いてなければ 壁や天井に穴が空いてる訳でもない。
おかしいな、俺はどっからこの部屋に…?と疑問を持ちかけた時だった。
「んん…。」
「!?大丈夫ですか?!」
超絶美形が少し唸ったのだ。
意識が戻りかけている!
少なくとも死なせてはないみたい!と、俺はホッとした。
暫く見ていると、男は薄らと目を開けた。
そこから見える瞳は、紅。
ゾクッと背中に悪寒が走る。
やはり、魔族。
ヤバいじゃん。魔族下敷きにしたんか俺。
(俺、死ぬかも…。)
最良の日になる筈だった日が、人生終了の日になったかも。
俺は覚悟を決めた。
この男の意識が明瞭になった瞬間、この首は飛ぶだろう…。
それならこの顔見ながら死ぬ方が痛み感じないかもな~、と俺は彼の美しい顔を眺めながら、その目の焦点が合うのを待った。
そして。
「あ、我が嫁…。」
「え?」
目が開くと更に心臓が止まりそうな程の美貌だった魔族の男は、俺を見てハッキリそう言って、花がほころぶような笑顔を見せたのだった。
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