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婿になるらしい。

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「結婚式はひと月後。
英雄殿には本日より王城でお過ごしいただき、然るべき心構えを…」


午後になって突如やって来た王城からの使者と、その後ろに従っている騎士達。

う~ん?
つまり、何だ。

「俺が、救国の英雄になる予定で、姫様の婿に…ですか…。」

「左様。」

使者は騎士団の団長だと名乗った。

「でも、あの…俺、剣も魔法もからっきしなんですが?」

魔法の使える人なんて精々人類の10%程度だから、別に使えなくて支障無い筈だけど、世界を救う英雄となれば話は別じゃない?

だが使者の騎士様はゆっくり首を振り、

「ご心配めさるな。
然るべき舞台設定…いや、サポートは此方にお任せを…。」

「舞台せ…なんて?」

「言葉のあやでございます。
お気になさらず。」

「…はあ…。」


いや、何か気になるんだけど?

それに幾ら英雄予定だからって、未だ結果出してないのに姫様と結婚とか、そんな事ある?


「ございます。今まさに。
予言は絶対なのです。」

「お、おう…。」

思わず口から漏れていたらしく、使者殿に力強く言われてしまった。
そうか。絶対なのか。絶対なら仕方ねーな。


「姫様が、お嫁さん…。」

想像すると、ふふふ、と笑いが漏れた。
そんな俺を、何故か何とも言えない表情で見ている使者殿。
そんな様子にたちまち不安になる俺。

え、もしかして姫様、めちゃくちゃ不細工だったりする?
もしくはハチャメチャに太ってたり?


「いえ、姫様は大変お美しくスタイルも申し分無いお方でございます。
その点はこの一命を賭けて保証いたします。」

「いえ、別にそこ迄していただかなくても良いです。」


ホッ…。そっか、美人なのか。
金持ちでスタイルの良い美人嫁かあ…。
自然、にやけてしまう。

あ、でも…結婚したら、あれだろ…旅に出なきゃなんだろ…魔王討伐とかの…。

えー、それ生きて帰れるのかなあ~?
死ぬフラグがガン立ちだからやる気スイッチ入れる為に先にご褒美って事なんじゃねーの?
何か嫌な予感してきたんだけど。


「いえ、危険な事は決して。
我が王国騎士団の名を賭けて勇者様を全力サポート…」

いや救国すんのにそんな危険無いよ~なんて事、ある?

なんか一転して裏があるようにしか思えなくなってきたぞ。

使者殿に疑惑の目を向け出す俺。
しかし親は違った。


「まあまあまあ!ウチのリクが?!」
 
「名誉な事だ!なあ?」

「とうとうこの日が…。
カルデア家が再興されるこの時が…ヴッ」

祖父ちゃん…寝たきりの要介護じゃなかったっけ?
通いのパートさんびっくりしてんじゃん…。
あと泣き方が汚ねえ。

それより何よりこの浮かれっぷり…。
5年前に祖母ちゃんが死んじゃってからこの家族にはストッパーがいないのだ。
俺では止められないしィ…。


「これで貴族として…ヴフッ」

「お義父さん、興奮しすぎですよ、大丈夫?」

祖父ちゃんの背中をさする母とパートさん。

「貴族の生活って小さい頃迄だったからなあ。上手く馴染めるかなあ~。」

目を輝かせている父。

いや、ええ…これもう断ったら不味い感じ?


「どうか!どうか我らをお救いください。」

「って言われても…具体的に今って何か困ってましたっけ?」

別に魔族が襲ってきたとか魔獣が現れたとかも聞かないぞ。

「それはずっと各国の王が対策を…」

「対策?」

はあ…なるほど。
人知れず民の為に、王族や皇族が頑張ってると。
なら何故、今救国の英雄なんてもんが必要なのか。
ますます怪しい…。

「いえ、まあ何と言いますか…。討伐とかそういう物騒な感じではなくですね、交渉を…」

「…交渉?」

あー、平和的解決に努めてる感じなのか。
でも俺、特に口が立つとかそんな事もないんだけど?

そう言うと、


「いやもう!いて下さるだけで!リク様は、その存在だけで!!」

とか言われて、
えー、そんなそんな…と照れるが、いやそんなに大した俺かな?(自問自答)


「余計な事言ってないでさっさと支度しなさい!何時迄お待たせするつもり?」

と母にドヤされ、俺は腑に落ちないまま 部屋に着替えに戻り、当座の着替えと必需品のみを鞄に詰めて王室の馬車に乗ったのだった。








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