4 / 9
優希の結婚生活
しおりを挟む
「こないだまで、ちょっと結婚しててさ。」
優希は聞き捨てならない事をカジュアルに言い放った。
優希の話を要約すると…
食堂で俺に別れを告げられてから優希は鬱状態になった。
それに気付いた両親に心療内科に連れていかれたのだが、そこの心療内科医の女性がそりゃもう俺に似ていたらしい…。
そりゃまあ、どこにでもいそうなモブ顔だからね、俺。
旅行先で似た人見たとか、行ったカラオケ屋の店員さんに似た人いたとか、もうしょっちゅう報告されるかんね、俺。
ともあれ、通院する内にその俺似の心療内科医さんに惹かれていった優希。
とうとう交際を申し込んだという。
本来なら患者とそういう関係にはならないと決めていた俺似さんも、綺麗な顔で真摯に口説かれてる内にコロッと陥落しちゃったらしく、結構トントン拍子に結婚まで進んだのだと言う…。
「…え?良かったじゃん。めでたしめでたしじゃん?
それが何で、今俺の婚約者にカマ掘られてんの??」
疑問過ぎて思ってた事がうっかりそのまま口から出てしまった…。
「うーん…なんつーか、思ってたのと全然違ってさぁ…。」
結婚生活を思い出しているのか、眉間を指で押さえながら目を閉じている優希。
「違ったってどーゆう事だよ。穂積に似た女と結婚出来たんだから、それで御の字だろ。贅沢ゆーなよ。」
これまで空気と化していた大智が横槍を入れる。
そうか?モブ似と結婚して御の字とか、ある?
もうちょい高望みしても罰はあたらないんじゃない?君らの顔面偏差値なら。
別に自分を卑下する訳じゃないけどさ。
と、思いながら優希を見ると、苦々しい顔をしている。
「最初はづみと似てるって思ったんだよ。カウンセリングの時とかもさ。俺の顔にも、動じなかったし、クールで…」
「…基準、そこなんだ…?」
…え、俺、そんな感じに思われてんの?
「なかなか落ちてくれないのも良かったし、髪も似たような茶色のショートでさ。使ってるトリートメントのメーカーも同じだったし、たまに眼鏡掛けてんのも同じだったし、コーヒーにバカスカ砂糖入れてんのも同じだったし、胸も殆ど真っ平らで…」
…んん?
「あと、白衣の下、いつもスウェットだった…。」
「グレーか?」
「グレーか黒。」
「それは…仕方ねーな…。」
優希と大智が頷きながらなんか会話してるけど、お前らさっきまでずっぷし挿れたり挿れられたりしてたよな?
見えたか今のOLの下着の色…みたいに会話すんじゃねえやい…。
「だから多少の事は目を瞑って結婚しようと思ったんだよ。今度はちょっとやそっとじゃ逃げられないようにしなきゃと思ってさぁ。」
俺も色々考えたの、とドヤ顔しているが、お前は根本的に間違ってる。
拘束手段みたいに使うな結婚を。
「なのに婚約したくらいからどんどん変わっちゃって…」
先ず、髪を伸ばし出した。
完全にコンタクトになった。
お化粧に気を使い出した。
それだけでもちょっと気に入らなかったらしいが…。
「極めつけは、結婚したらスウェットが白とピンクで色違いのお揃いのを用意されて…。」
グレーも黒も着なくなって、髪も長くなって、化粧の香料の匂いがするようになって。
「幻滅したから離婚した。」
「………」
「………」
お前…お前、それは…それは、かなりひどいぞ…。
彼女からしたら、突然こんな綺麗な男にアプローチされて恋仲って事になりゃ、今まで通りって訳にはいかないなって考えたのかもしんないじゃん。
俺は男だし、これ以上自分を飾ろうって気も無いから平気だったけど、いくら地味で洒落っ気が無いったって普通の女子なら、コイツに釣り合うように少しでも頑張らないと…って、見た目に気を使い出すのも仕方ないと思う。
つーか、普通に喜ばしい事なんじゃないの?
恋人や嫁さんが綺麗になろうって努力してんのはさあ…。
ぐるぐる考えていたら、大智が気の毒そうに相槌を打ってた。
「…そっか。それは、仕方ねーよな…。」
「だろ?」
「仕方なくねーわボケナス。」
2人にビックリされて俺もビックリする。
いや、変な事言っちゃたったかと一瞬直前の会話を反芻したけど、間違いなく変なのお前らだかんね?
「普通、こんなヨレスウェット、新婚家庭で着る奴いねーわ。」
男でもな!!
俺だって結婚したら流石にこれ捨てるわ。
…多分、捨てるわ。
……いや、捨てる努力はするわ。
…………まあ、捨てなくてもどっかにしまって着ないわ多分。
つーか、そもそもの話、そんな部屋着の色如きに何故お前らは拘ってんのよ?
「そうかなあ…。」
「そーだよ。」
「「そうかなぁー?」」
「………。」
2人って結構気が合うんじゃねえのか。
もうお前らで結婚したらどうだ。
「でも…俺には最後の譲れない一線だったんだよ…。」
「だよな、わかる。」
…俺にはお前らの譲れない一線の定義が分かんねーわ。
※もう少し続きます。
優希は聞き捨てならない事をカジュアルに言い放った。
優希の話を要約すると…
食堂で俺に別れを告げられてから優希は鬱状態になった。
それに気付いた両親に心療内科に連れていかれたのだが、そこの心療内科医の女性がそりゃもう俺に似ていたらしい…。
そりゃまあ、どこにでもいそうなモブ顔だからね、俺。
旅行先で似た人見たとか、行ったカラオケ屋の店員さんに似た人いたとか、もうしょっちゅう報告されるかんね、俺。
ともあれ、通院する内にその俺似の心療内科医さんに惹かれていった優希。
とうとう交際を申し込んだという。
本来なら患者とそういう関係にはならないと決めていた俺似さんも、綺麗な顔で真摯に口説かれてる内にコロッと陥落しちゃったらしく、結構トントン拍子に結婚まで進んだのだと言う…。
「…え?良かったじゃん。めでたしめでたしじゃん?
それが何で、今俺の婚約者にカマ掘られてんの??」
疑問過ぎて思ってた事がうっかりそのまま口から出てしまった…。
「うーん…なんつーか、思ってたのと全然違ってさぁ…。」
結婚生活を思い出しているのか、眉間を指で押さえながら目を閉じている優希。
「違ったってどーゆう事だよ。穂積に似た女と結婚出来たんだから、それで御の字だろ。贅沢ゆーなよ。」
これまで空気と化していた大智が横槍を入れる。
そうか?モブ似と結婚して御の字とか、ある?
もうちょい高望みしても罰はあたらないんじゃない?君らの顔面偏差値なら。
別に自分を卑下する訳じゃないけどさ。
と、思いながら優希を見ると、苦々しい顔をしている。
「最初はづみと似てるって思ったんだよ。カウンセリングの時とかもさ。俺の顔にも、動じなかったし、クールで…」
「…基準、そこなんだ…?」
…え、俺、そんな感じに思われてんの?
「なかなか落ちてくれないのも良かったし、髪も似たような茶色のショートでさ。使ってるトリートメントのメーカーも同じだったし、たまに眼鏡掛けてんのも同じだったし、コーヒーにバカスカ砂糖入れてんのも同じだったし、胸も殆ど真っ平らで…」
…んん?
「あと、白衣の下、いつもスウェットだった…。」
「グレーか?」
「グレーか黒。」
「それは…仕方ねーな…。」
優希と大智が頷きながらなんか会話してるけど、お前らさっきまでずっぷし挿れたり挿れられたりしてたよな?
見えたか今のOLの下着の色…みたいに会話すんじゃねえやい…。
「だから多少の事は目を瞑って結婚しようと思ったんだよ。今度はちょっとやそっとじゃ逃げられないようにしなきゃと思ってさぁ。」
俺も色々考えたの、とドヤ顔しているが、お前は根本的に間違ってる。
拘束手段みたいに使うな結婚を。
「なのに婚約したくらいからどんどん変わっちゃって…」
先ず、髪を伸ばし出した。
完全にコンタクトになった。
お化粧に気を使い出した。
それだけでもちょっと気に入らなかったらしいが…。
「極めつけは、結婚したらスウェットが白とピンクで色違いのお揃いのを用意されて…。」
グレーも黒も着なくなって、髪も長くなって、化粧の香料の匂いがするようになって。
「幻滅したから離婚した。」
「………」
「………」
お前…お前、それは…それは、かなりひどいぞ…。
彼女からしたら、突然こんな綺麗な男にアプローチされて恋仲って事になりゃ、今まで通りって訳にはいかないなって考えたのかもしんないじゃん。
俺は男だし、これ以上自分を飾ろうって気も無いから平気だったけど、いくら地味で洒落っ気が無いったって普通の女子なら、コイツに釣り合うように少しでも頑張らないと…って、見た目に気を使い出すのも仕方ないと思う。
つーか、普通に喜ばしい事なんじゃないの?
恋人や嫁さんが綺麗になろうって努力してんのはさあ…。
ぐるぐる考えていたら、大智が気の毒そうに相槌を打ってた。
「…そっか。それは、仕方ねーよな…。」
「だろ?」
「仕方なくねーわボケナス。」
2人にビックリされて俺もビックリする。
いや、変な事言っちゃたったかと一瞬直前の会話を反芻したけど、間違いなく変なのお前らだかんね?
「普通、こんなヨレスウェット、新婚家庭で着る奴いねーわ。」
男でもな!!
俺だって結婚したら流石にこれ捨てるわ。
…多分、捨てるわ。
……いや、捨てる努力はするわ。
…………まあ、捨てなくてもどっかにしまって着ないわ多分。
つーか、そもそもの話、そんな部屋着の色如きに何故お前らは拘ってんのよ?
「そうかなあ…。」
「そーだよ。」
「「そうかなぁー?」」
「………。」
2人って結構気が合うんじゃねえのか。
もうお前らで結婚したらどうだ。
「でも…俺には最後の譲れない一線だったんだよ…。」
「だよな、わかる。」
…俺にはお前らの譲れない一線の定義が分かんねーわ。
※もう少し続きます。
28
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染
海野
BL
唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。
ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話
ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。
海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。
夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。
ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。
翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる