ノーマルの俺を勝手に婚約者に据えた皇子の婚約破棄イベントを全力で回避する話。

Q.➽

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16歳の誕生日 3 (※R18描写あり)

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あんまりにも激しく口を使われたから、唇の端が切れた。

性行為時の他の男のを見た事はないけど、クソ殿下のはかなりでかいんじゃないかと思う。

それに対して俺の口は控え目サイズなので、どう考えても無理な取り合わせなんじゃないかと思うんだが。

でも変態野郎には逆にそれが良いのかもな、と自嘲。

その間にも殿下の興奮は佳境に入ってきたらしくて、ペニスの抜き差しは速まる。

そろそろ酸欠で死ぬかも、と意識が朦朧としかけた時、


「…ウッ…」


とくぐもった声と、数秒遅れて喉奥に熱いドロッとしたものが流れ込んで来た。

「ゥエっ…」

なのに、口からペニスを抜いてくれない。なんで…

「飲め。」

「ぐっ…ふ、」

飲み下すしか無かった。
それでも尚、喉にへばりつき残っているかのような不快感。
そして、臭い。

最悪だ。

なのに。


「残りを吸い出せ。余す事無く。」


……殺意を覚えた。

仕方ないので目を閉じ眉を寄せて、ペニスの先端をちゅうっと吸うと、ピクリと反応される。

「搾り出せ。そなたの為の子種だ。」


…要らん。
もー…さいっあくだ…。



やっと口を解放されて、気持ち悪さにうがいをしたいと考えながら嘔吐いていたら、顎を掴まれて唇を重ねて来た。
うわ…自分のを咥えた口と。
ドン引きだ。

そのまま舌を差し込まれ、ぐるりと咥内を点検された。

「…全部飲んだな。」

どんだけ疑り深いのか。


そしてやっと、俺が大量に涙を流しているのを見て、

「愛い。」

と また唇を奪われる。
血の味でもしたのか、唇の端が切れた事に気づいたようだ。

「済まないな、痛かっただろう。」

と、軽いヒールをかけられる。

お陰で唇の痛みは消えたが、道具のように扱われた心の痛みは消えないぞ…。



せめてもの抗議に睨み付けてやると、何故か目元を綻ばせて微笑むクソレイパー。
そして、苦痛にいつのまにかガン萎えした俺のペニスを見て、

「後できちんと可愛がってやるからな。」

と…。



…え?

これで終わりじゃないのか?

と、殿下を見上げると、

「今夜は愛しい許嫁のもとに泊まっていく事にしよう。」


と、良い笑顔で爆弾発言が。




絶望で目の前が歪んだ。











草鹿は主が皇太子に連れて行かれた様子に違和感を感じていた。

公的に許嫁なのだから、2人きりになりたい皇太子の気持ちはわかるが、雪長のあの様子がどうにも気にかかる。

日頃、雪長が婚約者である筈の皇太子と連絡を取る姿を見た事が無く、不仲なのかと思った事はある。
だが、今日。
皇太子は雪長の誕生日に視察を名目にして駆け付けたし、2人が会った雰囲気も悪く無かった。
ところが、皇太子を伴って寮の部屋に帰り、お茶を出してから、流れが変わった。

それから寝室に2人で篭り、皇太子がシールドを張ったのを最後に数時間出て来ない。




(ユアン様との事を、誤解なされたのか…。)

恋人の悋気か。

皇太子殿下はどうやらあの小さな愛らしい主に首ったけらしい。
今頃は恋人同士、誤解を解き仲睦まじく過ごしているのだろう、と思っていたら、ふっとシールドが外れた気配がした。


見れば皇太子が、乱れた髪を掻き上げながら半裸の姿で出て来て、


「今宵は泊まっていく故、部屋着と食事の用意を頼む。」

とだけ言い置いて、グラスと氷、ブランデーを所望され、それらが揃うと自らそれをお持ちになって、また寝室へ戻って行った。

前を通り過ぎた時の、皇太子の体臭混じりのフレグランスと濃厚な性の匂いにクラッとした草鹿は、主の愛されように何故だか自分の方が恥ずかしくなった。

(それにしても、和皇の皇太子はまた、素晴らしい美青年になられたな。)


我が君には及ばぬが、と草鹿は内心皇太子の美しさに感嘆していた。

整った目鼻立ちは勿論、その眩い金髪。
この国の皇族に多く現れるという翡翠の瞳も華やかさを添えている。
細身に見えて意外にガッシリした肩、しなやかな筋肉のみっちりついた腕や胸筋、引き締まった腹筋。

我が君とは、対称的な美だ。

 
未だユアンが学園の生徒であった頃、皇宮に挨拶に行った時にも付き従っていた草鹿は、少年だった皇太子を見た事がある。

砂華国と和皇は旧くからの友好国の為、それは歓迎されたものだ。

あの時の、未だ幼かった少年が今では逞しい腕で許嫁を抱くのだな…。

草鹿は感慨深い気持ちだった。


だが、当の主は1度も顔を出さない事に、違和感を覚える。
流石に恥ずかしいのだろうか。

それに、意外だった。

雪長は性的な事に無頓着というか、何も知らないようだったから、てっきり未通男(おぼこ)だと思っていた。
しかしこの様子を見ると、やはり婚約者は別なのだろうな…。

入学から半年以上、手塩にかけてお世話してきたいたいけな主が、実はちゃっかり大人にされてしまっていた事に、どことなく寂しさも感じてしまう。


皇太子が再び入って行ったドアの奥は薄暗く、室内は伺い知れなかった。

(あのご様子だと、誤解は解けたのだろう。仲がよろしくて、何よりだ。)





草鹿はその時の自分の盛大な勘違いを、後々後悔して胸を痛める事になる。













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