上 下
28 / 68

お疲れ様タイム

しおりを挟む


「ようオコジョ殿。初めましてだな。リリアス帝国のエンドレアスだ。よろしくな。」

「…岩城雪長でございます。お初にお目にかかれてうれしく思います。」

「あっ、オ…、雪殿~、こんな所にいらしたのか。」

「……(よくもぬけぬけと俺の前に顔を出せたな) ごきげんよう、アドリア殿下。」




入学式後にヤンキーに絡まれてたらアドリア殿下がニコニコ悪びれる様子も無く歩いて来た。


ヤンキー。

まあ実際は違うんだろうが、エンドレアス殿下の見た目の印象がヤンキー。
全身のジャラついた装飾品は貴金属であるからして、好意的に受け取れば富の象徴とも言えなくも無いが、制服をそこ迄カスタマイズして良いの?ってくらい、煌めくスカルの刺繍とか、鋲や宝石が縫い込まれたりしてて、これはもう悪趣味と厨二病のマリアージュや~、みたいな。(真顔)

権威に弱々な学園側はともかくとして、親は怒らないのか。
品位は損なわれてはいないのか。


そしてフレンドリーヤンキーと談笑し出す、(頭)ゆるふわアドリア殿下。
顔馴染みなのか。
まあ帝国のエンドレアス様と言えば確か…卒業後直ぐに帝位を継がれるご予定だと聞く。


…え、マジで?こちらの派手派手フレンドリーヤンキーが?


リリアス帝国と言えば、和皇国(ウチ)と同じく皇帝を戴く国。

クソショタ殿下といい、世界の二大皇国が跡継ぎこんなんで良いのか。

俺はいよいよ次元を越えて逃げたくなった。



異世界転生したい。








でっかい男子達に囲まれながら教室にドナドナされていくが、歩いてるその間も好奇の視線は容赦ない。

教室に帰ると入口では様々な年代の大人の男性達が待ち構えていて、俺達を見ると深々と礼をした。その中には草鹿もいる。

あ、この方々、執事やお付きの方達か。

「お疲れ様でございました。
お席にお茶をご用意してございます。」

「…えっ?」

席に?教室の席にって事?


入ってみると、確かにお席にお茶のご用意ございましたよ。

しかも各机…というか、テーブルになっとる…机、トランスフォームしとる…。色くらいしか面影ねーぞ。

しかも全席同じようになってて各々お茶の用意されてる。

今更ながら、そんな事も普通に許容されてるってとこに、改めて一般生徒達との扱いの差を目の当たりにした思い。

はっ、もしかして此方の皆様、ペットボトルやバリアカップなど、ご存知なかったりして!?(偏見)

…セレブは違うな~。


席に戻って座ると、熱い茶を飲めない俺の為に、あらかじめ注いでおいてくれたのか 丁度良い温度。
それをちみちみ飲む俺。

一口飲み度に、おおっ…と後ろから小声で歓声が上がる。

やめれ。俺は珍獣じゃねえ。

虚無の目で飲んでたらエンドレアス殿下とアドリア殿下がお茶を持って椅子で滑り寄って来て、(ダメだろ…)

「何の茶が好きなんだ?」

って 俺の持ってるカップに鼻を寄せる。行儀悪くね?


「良い香りですね…って、温っ…。」

「…猫舌なもので…。」


やんごとなき方々って、こんなフランクに他人の飲み物とか食べ物に口つけるんだっけ?

今、アドリア殿下が俺の茶を嗅いで口を付けたんだけど、俺…もうこれ飲みたくないのだが…。
(すいません殿下。)

恨めしくカップを見つめる俺。

「どれどれ…ぬるっ!!」

…毒味とか以前に、付き合いの浅い他人との間接接触に抵抗や危機感が無いのか、お伺いしたい。
心配だ。




『猫舌…』

『猫舌だ…』

『熱いもの飲めないんだ…』

『萌え…』



…後ろのざわめきは、聞こえないものとする。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

処理中です...