ノーマルの俺を勝手に婚約者に据えた皇子の婚約破棄イベントを全力で回避する話。

Q.➽

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それは壇上で話す学長の声が途切れた時の事だった。


『あれが殿下の婚約者の、オコジョ様…』

『小さくて色白で黒い瞳がくりっとしていてお可愛いらしいな。』

『誰だ、派手で悪辣な美少年とか言ってたヤツは…』





………。



………俺か。それは俺の事か。


オコジョ…様…。

おかわいらしい…。



自慢じゃないが俺、どこに出しても恥ずかしくない地味フツメン。
ミスターアベレージなんだが。

いやもう何の謙遜でも無く、並み。

いやごめん嘘ついた。
これは自覚無かったけど、身長は低いらしいわ。
だってクラス1チビなんだもんな。
(自嘲)

それはともかく、問題は今しがた耳に入ってきたオコジョ様だよ。

ふと、昨夜のアドリア殿下との会話が脳裏を過ぎる。


…まさかな。まさかだ。

いやでもまさか。
いやしかし現に、今…。

そう思ってアドリア殿下を目で探すが、いない。
あんなに目立つ方が見つからない訳がないのにな、と不思議に思ってたら、聞き覚えのある声がマイク越しに聴こえてきた。

ザワっとしていた生徒達が、一斉に しん…と静まり返る。


「生徒会執行部副会長に就任したアドリア・アレクシオン・エリシアです。 
新入生の皆さん、おめでとう。私にも後輩が出来た事が、本当に嬉しいよ。」



…アドリア殿下…じゃん…。
マイク越しでもよく通る良い声ですね…。低過ぎず、高過ぎず…。




そういや、あったなそんなもんが。
あまりにもぼっち長くて忘れ去ってたわ生徒会。

全く記憶には無いけど、多分この入学式も出席はしてたから、目線は落としてても声や音は聴いてた筈なんだけど、全くと言って良い程 何も覚えてない。

同じようにアドリア殿下が話していたのかも、わからない。

俺の精神は本当に萎縮して摩耗していたんだろうな。

本人は俺を解放する為なんて綺麗事抜かしてたが、結果的にはクソ殿下は俺から全ての尊厳を奪う事になってたのだ。
本人はそんな事、知らないけど。



「今年は新入生に、この和皇国 只御一方の皇子にして敬愛なる我らが偉大なる先輩、ラディスラウス殿下の掌中の珠、婚約者であるオ…、岩城雪長様もお迎え出来て、まことに喜ばしい限りです。」



     オコジョって言いかけたぞ…

     だよね、今の、そうだよね。
      
     これからそれでお呼びしようぜ…


ざわ...ざわ...       ざわ...ざわ...




ふっ…

こわっぱ共ののざわめきが今となってはもう、耳に心地良いわ。
(血涙)


(………。)



…ああいうやんごとなき方々ってのは、アレか?

天然で人を奈落に突き落とすもんなの?


これ多分、俺のこの先4年間のあだ名、確定したっぽくないか。
…もういっか。
虐めよりマシか。



……いや、マシか?




そこから俺は入学式が閉会する迄の2時間をを悶々としながら耐え抜いた…。




だが、その日、街中では号外が出て、

【オコジョ様、学園に入学!!⠀!愛しの殿下の後輩に!!】

という見出しがデカデカとついていた事を、俺は夜のニュースで知り、スマホのバブーニュースでダメ押しされ、どうやらその呼称が4年間どころではなくなってしまった事に深く落胆するのであった。









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