26 / 68
入学式当日 晴れ。
しおりを挟む一夜明け…。
草鹿に起こされ重い瞼をしばしばしながら持ち上げて薄目を開ける。
「おはようございます。主様。
気持ちの良い朝でございます。」
そう言いながら寝室の窓のカーテンを引きながら開けると、雨はすっかり上がっていて綺麗な青空が見えている。
「オハヨ…ホントだね~…。」
「ご用意なされましたタイミングでご朝食をお出しできるようにしてございます。」
そう言うと草鹿は一礼をして出て行った。
草鹿が出入りしたドアの開閉が運んできた、ほわっとパンを焼いてる香りに優しく鼻と胃を刺激される。
…よし、起きるか。
ベッドを降りてスリッパを履き、俺は寝室内にあるシャワールームに向かった。
草鹿に案内されながら専用棟まで歩いている。
へえ…。只の移動用通路に、赤絨毯…。ちょっと意味がわからん。
まあ、こういう仕様なんだなと もういちいちツッコミはしない。
教室に到着すると草鹿に最前列のど真ん中の席に誘導された。
…え?ちょっと、これ…
「主様のお席は此方でと賜っております。」
と、草鹿ににっこりされる。
「…何でそこなのか、理由あるのかな?」
初っ端から席順決まってるなんてある?
困らせるかなと思いつつ、草鹿に聞いてみると、やはり困ったような顔をして、
「…大変、申し上げ難いのですが、」
と、少し躊躇った様子を見せつつ、
「クラスメートの皆様が、体格のご立派な方ばかりでいらっしゃるからとの措置のようでございます。」
「…そ…っ、かぁ…。」
流石は草鹿。
言葉を選んでくれてありがとう。
なるほどね。
俺がクラスで一番チビって事ね。
見回してみると、ポツポツ集まり始めた生徒達は確かに身長が高い。軒並み、高い。
え、でか。
王族皇族系の方々ってそんなデカいの?確かにクソ殿下はデカかったけど。よりすぐりの栄養摂取してるから?(偏見)
そして、皆様俺を見てらっしゃる…のは、気の所為では…ないな。
チラチラしながら、ボソボソ何か言ってるのを俺はちゃんと見てるぞ…。
「…あれが…コ…」
「…リア…が、」
…おおかた、昨夜アドリア殿下に聞いたあの噂の事だろ?
閨で籠絡したなんちゃらってやつだろ?
クッソ。あのクソショタの爛れたセフレ遊びのせいで俺までも…クソ。
只、不思議な事に陰口を叩かれてる割には、視線には悪意も敵意も感じない。
(…?)
その後15人程度しかいないクラス全員が集まり、教師の挨拶があり、大まかな入学式の流れを説明されて、講堂に移動となった。
その間もチラチラされているが、俺は実際はこのクラスの生徒達より2つは歳上なんだ…。
修羅場も潜り済みだしな。
年長者の余裕、見せてやるぜ…。
と、乗り切った。
その後講堂に移動。
開閉式の大きな天窓のある広く美しい講堂だ。
VIP様達はどうやらこの講堂でも専用席があった模様。
演壇前の、一般席よりも高い位置に用意された席にクラス全員がずらりと横並び…。
しかも、生徒側に向かい…。
何でこんな気不味い構図作り出すの? 意味わからん…(2回目)
高貴な方々は珍獣か何かでしょうか。
しかしクラスの皆様の様子を見てると、見られる事に流石に慣れてらっしゃるのか普通に平然としてる。鋼だな。鋼メンタルだ。
(歳上の余裕とは…。)
全く気づかなかったんですけど。
何故かと言えば、前回の入学式では俺はずっと下を向いていたからである。
原因は勿論、婚約破棄騒動の弊害だ。
ヒソヒソされてるのは現在も同じだけど、置かれた状況は180度違うから気はラクだけどな。
一般の貴族である学生達は、並居る王族皇族たちをほわ~、と眺めたりしている。
そりゃね。こんだけきらきらしい容姿の男子が勢揃いしてたら、同性と言えども気になっちゃうよね。
俺はならないけどね。
そして、何故か生徒達はVIP列のド真ん中に配置(!!)された俺に目を留め、
あれが例の…みたいにコソコソザワザワしている。
好奇心いっぱいだね。
…ま、どーでもいいけどね。
と、シレッとしてたんだが、直後
、そんなクールな俺を驚愕させるあの言葉が待ち受けていようとは…。
To Be Continued…
23
お気に入りに追加
1,930
あなたにおすすめの小説
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが
ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク
王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。
余談だが趣味で小説を書いている。
そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが?
全8話完結
悪役令息は国外追放されたい
真魚
BL
俺は明日、ギロチンか国外追放される運命にある。
ギュスターヴは前世の記憶から、自分が断罪される悪役令息であることを知っていた。
明日、俺に残酷な罰を言い渡すのは他でもない、密かに想いを寄せていた学友のリュシアン第二王子だ。
絶望と焦燥の中、ギュスターヴは最後の夜もSMプレイをしてくれる娼館に足を運んだ。
だって、この娼館の男娼、リュシアンに声がそっくりだから……
「第二王子×悪役令息」の乙女ゲーム転生ものです。
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる