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入学式当日 晴れ。

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一夜明け…。


草鹿に起こされ重い瞼をしばしばしながら持ち上げて薄目を開ける。



「おはようございます。主様。
気持ちの良い朝でございます。」

そう言いながら寝室の窓のカーテンを引きながら開けると、雨はすっかり上がっていて綺麗な青空が見えている。

「オハヨ…ホントだね~…。」

「ご用意なされましたタイミングでご朝食をお出しできるようにしてございます。」

そう言うと草鹿は一礼をして出て行った。
草鹿が出入りしたドアの開閉が運んできた、ほわっとパンを焼いてる香りに優しく鼻と胃を刺激される。


…よし、起きるか。


ベッドを降りてスリッパを履き、俺は寝室内にあるシャワールームに向かった。









草鹿に案内されながら専用棟まで歩いている。
へえ…。只の移動用通路に、赤絨毯…。ちょっと意味がわからん。
まあ、こういう仕様なんだなと もういちいちツッコミはしない。

教室に到着すると草鹿に最前列のど真ん中の席に誘導された。

…え?ちょっと、これ…


「主様のお席は此方でと賜っております。」

と、草鹿ににっこりされる。

「…何でそこなのか、理由あるのかな?」

初っ端から席順決まってるなんてある?

困らせるかなと思いつつ、草鹿に聞いてみると、やはり困ったような顔をして、

「…大変、申し上げ難いのですが、」

と、少し躊躇った様子を見せつつ、

「クラスメートの皆様が、体格のご立派な方ばかりでいらっしゃるからとの措置のようでございます。」

「…そ…っ、かぁ…。」


流石は草鹿。

言葉を選んでくれてありがとう。

なるほどね。


俺がクラスで一番チビって事ね。


見回してみると、ポツポツ集まり始めた生徒達は確かに身長が高い。軒並み、高い。
え、でか。


王族皇族系の方々ってそんなデカいの?確かにクソ殿下はデカかったけど。よりすぐりの栄養摂取してるから?(偏見)


そして、皆様俺を見てらっしゃる…のは、気の所為では…ないな。

チラチラしながら、ボソボソ何か言ってるのを俺はちゃんと見てるぞ…。

「…あれが…コ…」

「…リア…が、」




…おおかた、昨夜アドリア殿下に聞いたあの噂の事だろ?
閨で籠絡したなんちゃらってやつだろ?

クッソ。あのクソショタの爛れたセフレ遊びのせいで俺までも…クソ。

只、不思議な事に陰口を叩かれてる割には、視線には悪意も敵意も感じない。


(…?)


その後15人程度しかいないクラス全員が集まり、教師の挨拶があり、大まかな入学式の流れを説明されて、講堂に移動となった。

その間もチラチラされているが、俺は実際はこのクラスの生徒達より2つは歳上なんだ…。
修羅場も潜り済みだしな。

年長者の余裕、見せてやるぜ…。

と、乗り切った。



その後講堂に移動。
開閉式の大きな天窓のある広く美しい講堂だ。

VIP様達はどうやらこの講堂でも専用席があった模様。
演壇前の、一般席よりも高い位置に用意された席にクラス全員がずらりと横並び…。

しかも、生徒側に向かい…。


 何でこんな気不味い構図作り出すの? 意味わからん…(2回目)

高貴な方々は珍獣か何かでしょうか。

しかしクラスの皆様の様子を見てると、見られる事に流石に慣れてらっしゃるのか普通に平然としてる。鋼だな。鋼メンタルだ。
(歳上の余裕とは…。)


全く気づかなかったんですけど。
何故かと言えば、前回の入学式では俺はずっと下を向いていたからである。
原因は勿論、婚約破棄騒動の弊害だ。
ヒソヒソされてるのは現在も同じだけど、置かれた状況は180度違うから気はラクだけどな。


一般の貴族である学生達は、並居る王族皇族たちをほわ~、と眺めたりしている。
そりゃね。こんだけきらきらしい容姿の男子が勢揃いしてたら、同性と言えども気になっちゃうよね。
俺はならないけどね。


そして、何故か生徒達はVIP列のド真ん中に配置(!!)された俺に目を留め、
あれが例の…みたいにコソコソザワザワしている。
好奇心いっぱいだね。



 …ま、どーでもいいけどね。


と、シレッとしてたんだが、直後
、そんなクールな俺を驚愕させるあの言葉が待ち受けていようとは…。



To Be Continued…
















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