上 下
23 / 68

主様、親交を深める。1

しおりを挟む


その日の夕食は部屋でとった。

一応ね、VIP専用のレストランはあるんだそうだ。一応ね。

でも利用される事はあまりないらしい。殆どはそこにオーダーして作られた料理を部屋に運ばせて食べる。
まあそりゃそれが一番気楽だわ。

でもたま~に気分を変えたいとか、仲の良い数人で集まって食べたいとか、誰かの誕生日パーティーでもする?ってイベント時とか…確かに、あるよな。うん、ある。

…今度行ってみよっかな。
どんな店か気になる。



部屋で食べた夕食はかなり美味かった。
昼食は普通に学生用の食堂で良いのかと草鹿に聞いてみたら、一般学生用の食堂の奥の特別室か、寮に戻って食べても良いとか。
そうか、戻る前はVIPの方々と接点なんか無かったし、学食使ったのも入学当初だけだったから全く知らなかった。特別室の存在なんて。
最初は食堂の隅で1人でボソボソ食べてたけど、すぐに嫌がらせが酷くなったからわざわざ寮の自室に戻ってた。
その内、授業に出るのすら億劫になって、食事をとるのすら、面倒になって。



…それにしても、上流階級の中の格差もなかなかエグいもんだよなあ…。

歯も要らないような蕩けるような肉を味わいながらそんな事を思った。



「明日からの事でございますが…。」

草鹿がグラスに水を注いでくれながら口を開く。

「うん?」

「校舎の方にもお供させていただきます故。」

「えっ?」

え、何故に?

「一般生徒の方々とは校舎のある棟が違いますので、先ずはクラスにご案内させていただきます。入学式迄には講堂に移動致しまして、その後クラスに戻りましたら私めは近くの部屋に控えておりますので何時でもお呼び下さい。」

「うへえ…」

なんと…。
高貴な方々を見る事が無かったぞと思ってたら、専用棟にいたんかい。

「…え、でもなら草鹿、ずっと仕事で大変じゃない?」

「主様にご不便をおかけする訳には参りませんので。」

「…草鹿は何時休むの?」

心配になってきた。

「ある程度までの治癒魔法と回復魔法は心得ております。」

「…いいな~。」

俺もそういう日常的に便利に使える系のが良かった…。
いくらレアな魔法が使えても、一生に1回こっきりじゃあね…。


心底羨ましい。皆が普通に使える生活魔法が、特に。






風呂から出て、明日からの事を考えていたら 部屋の入口の呼び鈴が鳴った。
来客?此処に?

草鹿が出て、少し話していたがすぐ戻ってきた。


「主様、下の階の方がご挨拶をしたいと…。」

「下…?」

「エリシア公国のアドリア第2王子様でございます。主様の1学年上でいらっしゃいます。」

「…ええ~…。」


え、ヤダな…。面倒…。これ、生意気とか虐められフラグじゃない?

クソ殿下との事も、将来的には解消か破棄狙いだからこれ以上やんごとなき方々とは無駄に関わりたくないんだが。


そんな内心の危惧が伝わったのか、草鹿は俺を安心させるように微笑んだ。

「他の高貴な方々では、滅多になされない事ではございますが、アドリア様は穏やかでおおらかな方でございます故、お心安くお会いされてよろしいかと存じます。」

「優しい方なのかな?」

「御意。」 

「…お通しして。」


そこ迄言われては会わない訳にはいかない…。草鹿、君の人を見る目に賭けるわ…。

きっと値踏みされるんだろうな~。
そりゃ国の唯一の皇子…いやもう皇太子か…、皇太子様の婚約者が男ってだけでアレだもんな。
興味津々だよな。

きっとそれらしい美少年とか想像されてるんだろうなあ~…。



俺は既にガッカリされた場合の雰囲気を受け止める覚悟でメンタルのアップを始めた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

処理中です...