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君は味方か 2
しおりを挟む「その後全く音沙汰も無く、帰る事もままならずでいましたところ、せっかくならば常駐の専属執事にならないかとのお話をいただきまして。
特例措置で留まらせていただいており、ありがたく思っております。」
「なるほど…。」
「もう王子はお戻りにはなられないかも知れません。」
呟く草鹿は、酷く寂しげに見える。
まあ…主従が長かったんだろうしな…無理も無い。
「ですが、」
ぱっ、と表情を明るくして草鹿は、
「既に此方では王子の他に、お2人の他国の王室の方などのお世話もさせていただきました。今日また新たな主様にお仕え出来ますことは、無上の喜びでございます。」
と本当に嬉しそうに言った。
おそらく、こういうお仕え体質の人って、そうなんだろうなあ。
人の世話に心を砕く事が喜びって人は、確かに存在する。
ウチだとじいちゃん執事なんかまんまそうだわ…。
でも、そっか…他国の王族ばかりに付いて世話をか。
それって、この国には何のしがらみも無いって事なのでは?
深い関係にある貴族とか、あまりいないのかもな…。
「大変だったね。王子様のご無事をお祈りしたいな。」
俺がそう労うと、草鹿は少し目を潤ませて、ありがとう存じます、と言った。
「この国に、親しい者は?」
「生憎と、この国のお方に付きますのは、主様が初めてでございまして。
この度、主様にお仕え致しますにあたり、和皇国の作法を習い覚えたつもりではございますが、至らぬ事がございましたら何なりとお叱りを…。」
「いや、作法とやらには特には拘りは無いから、仕事は好きにやってもらって構わないよ。」
言いながら、なるほど~、とほくそ笑む。
良いね。そういう人材、待ってた。
この国の様々な力関係に関与せず、興味も無さそうな者。
そんなもんに接触したって、何のメリットも感じそうにないような者。
全面的に信用出来るかと言われたら今の所NOだけど、少なくとも俺の命を狙う片棒を担ぐメリットは無さそうに思える。
それだけでも他よりはマシじゃない?
俺は冷めてしまった紅茶に口をつける。
「主様、それはもう…いれ直しますので…。」
と慌てる草鹿を手で制し、
「大丈夫。猫舌だから熱いのは直ぐには飲めない。」
と、言って1口含む。
考えてみれば、今俺が死ねば、真っ先に疑われるのは傍に置かれた草鹿だ。
その点だけでも、草鹿が毒を盛る事は考えられない。
信用して良いだろ、多分。
こくこくと紅茶を飲み干していく俺を見ながら、草鹿は何かを決意した様子。
「誠心誠意、お仕えし、お護り致します、主様。」
「…?あ、うん。よろしくね。頼りにしてる。」
後日この時の事を聞いてみたら、自分の出した飲み物や食べ物を口にしてもらえて初めて、信頼を得たと思えるんだってさ。
…ふ~ん、何処も殺伐としてるんだね~、権力のある層って。
草鹿を横目で観察すると、砂漠の国の出身の割には肌の色が白い。
髪も茶色いし、目も薄いヘーゼルで、全体的に色素が薄いように思う。
…でも流石に生まれの事迄突っ込んで聞くのは、失礼だよな…。
顔立ちはそれなりに綺麗で…まあ普通にイケメンのお兄さん。
雰囲気も温和そう。生活魔法が得意だと言うし、傍で仕えて貰うのにはおあつらえ向きの人材じゃないだろうか。
えーと…クーデターって何年前くらいだっけ…。
5…いや、6、7年くらい前かな。
て事は、その時王子様がここに在学中だった訳でしょ~、草鹿は14から王子様についてて、王子様が4歳下って事はえーと、王子様ガ。10歳か。
この学園在学中は15~18くらいとして~、、、
草鹿って…
「草鹿って、幾つ?」
早々に諦めた頭の悪い俺はズバリ聞く事にした。
「今年28でございます。」
あ~ね。
なるほどの安心感。
……。
…要らないとか思って、ごめんね…。
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